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シンディの自己紹介が終わると、皆の視線は自然と一人の少年に注がれた。
その事に気がついた少年が「も、もしかして、僕もするんですか?」と尋ねると、彼の妹であるリノが「当たり前じゃない!」と即答する。
少年は戸惑った様子を見せていたが、近くにいたブライトが「よく考えたら俺も名前を聞いてなかったぞ」と続けた事で、流石に恩人に対して名を告げないのは失礼だと感じたのだろう「僕はノアって言います。 ノア・マテリアル。 十五歳です」と名乗り、続けて「先程は妹のリノが大変失礼なことをしました。代わってお詫び申し上げます」と謝罪した。
ブライトは相変わらず礼儀正しく頭を下げたノアに声をかけようとしたが、それよりも早く妹が声を荒げる。
「ちょっと、お兄ちゃん! あたかも私の対応が悪いように言わないでよね! 私はお兄ちゃんを助けようとしただけなんだから!」
「襲われているかどうかなんて一目で解るだろう? 僕がブライトさんたちに襲われているように見えたとでも言うのかい?」
「見えたわよ!」
「そんな訳ない。 リノ、君は猪突猛進なところがある。 それに直ぐにムキになるところも。 良くないことだぞ」
「そう言うお兄ちゃんだってムキになってるじゃない!」
折角二人の口論を止めようとレイヴァンが話題を変えたのに、ここで元に戻ってしまっては意味がない。
どうしたものかと頭髪を掻くブライトの横で、話を切り出してくれた本人は一つ息を吐いてから「兄妹喧嘩は帰宅してから存分にしてもらうとして、今は質問に答えてくれないだろうか?」と二人に呼び掛けた。




