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今にも抜剣し斬りかかろうとする雰囲気のメフィストフェレスと、それを受けて立つと言わんばかりのベルゼビュート。
二人の間に沈黙が生まれ、視線だけがぶつかり合って数分。
彼らの傍らで控える従者ウコバクは緊張のあまり思わず唾を飲み込んだ。
その音が静かな部屋に響いたのを合図にメフィストフェレスが再び口を開く。
「最初から僕の話を聞くつもりで、この鼻垂れを遣わせたんだね?」
「流石はメフィスト君、そういうことさ」
ベルゼビュートが不敵に微笑むと、メフィストフェレスは忌々しそうに舌打ちし「何て回りくどいことを」と言葉を吐き出す。
「回りくどいのは君だからだよ。 普通に誘ったら絶対に来てくれないだろう?」
「当然だね」
「だから、絶対にこの屋敷に来たくなるような言葉をウコバクに託したのさ」
「ベルゼさんは僕から何を聞き出したいの? もちろん、その対価は支払えるんだよね?」
「もちろんさ。 いやはや理解力があって本当に助かるよ」
「で、何?」
メフィストフェレスが剣呑さの増した紅い瞳で相手を睨みつけると、ベルゼビュートは手元にあった酒に二度目の口をつけてから質問を投げかけた。
「封印の楔を解放した後、君は何をするつもりなのかな?」




