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相手の一振りを横たわったまま必死に回避するブライト。
地面を転がると少年はブライトの身体に圧迫され、苦しそうな悲鳴を漏らす。
「悪いが今は耐えてくれ」
ブライトは何とか立ち上がろうとするのだが、相手はそれをさせまいと休むことなく鋭い足を突き刺してくる。
「くそっ、隙が無い!」
地面を転がりながら回避を続けていたが、ついに均衡は崩された。
僅かな差で回避が間に合わず蜘蛛の足がブライトの左腿をかすめたのだ。
痛みはなかった。
ただ不運にも相手の爪が厚手のズボンを裂くことなく生地に食い込み、結果として動きを封じられることとなった。
「やばっ!」
「そんな!」
二人が同時に叫ぶと、巨大蜘蛛は勝ち誇ったかの様に身体を反らせ鋭い鋏角を広げる。
「蜘蛛に喰われて終わる最期なんて虚し過ぎたろ!」
「嫌だ、まだ死にたくない!」
「俺だって!」
「だ、誰か! 誰か、助けて!」
「そんなに都合良く何度も助けが来るかっての!」
「あら、意外と都合良く来たりすることもあるみたいよ?」
「……へ?」
突然聞こえた覚えのある女性の声。
その声の持ち主が誰なのかを考え始めた矢先、ブライトは続けて驚愕の事実を目の当たりにした。




