~ 2 ~
飛行を続けていたメフィストフェレスは突然ぴたりと静止した。
誰かに名を呼ばれた気がしたのだ。
周囲を見渡すと、自分の憶測が間違っていないことがすぐに解った。
こちらに向かって一直線に飛来する存在がいる。
近づくにつれ魔力を感じるが、大したものではない。
雑魚悪魔が僕に何の用だろうか?
彼は面倒臭そうな表情を浮かべながら相手の到着を待った。
……
数分後、再び名前を呼ばれたので振り返ると、そこには小さい身体に膜状の翼を生やし大きな鼻が特徴的な悪魔が居た。
年齢は初老ぐらいだろうか。
「君、誰だっけ?」
屈託のない笑顔で問いただすと、相手は「冗談はお止め下さい。 私はウコバク。 ベルゼビュート様にお仕えするウコバクです」と恭しく名乗った。
「そうだ、君はウコバク、鼻垂れのウコバクだ。 興味が無いから、すっかり忘れていたよ」
「それは余りにも酷いお言葉」
「ベルゼさんは元気にしてる?」
「それはもう。 最近は封印の影響が無くなり非常に機嫌良くされております。 お世話をさせて頂く私と致しましても大変に喜ばしいことでございます」
「ベルゼさんは妙な所に拘るからなぁ…… ところで僕に何の用なの? 僕は今忙しいんだ。 遠くから呼び止めておいて詰まらないこと言ったら、その鼻引き千切るからね」
「それもまた酷いお言葉」
「良いから早く言って」
真紅の瞳で睨むとウコバクは冷や汗を浮かべた。