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どこなら攻撃が通るんだと悩んでいる間に大蜘蛛は脚に力を込め、地面を蹴る予備動作に入っていた。
また跳躍かと身構えるブライトだったが、蜘蛛はそれを嘲笑うかの如く、別の行動を見せる。
腹部を持ち上げると、その腹の後端にある出糸突起を前方へ向けたのだ。
その動作が何を意味するのか直ぐには理解できなかった。
理解したのは、相手の攻撃を目の当たりにした瞬間だ。
射出され向かってくる白い液体。
咄嗟に回避を試みるが、かわしきれず左足に付着した。
痛みや重さは感じなかった。
ただ異様なまでに粘度があり、その所為で足が地面から離れない。
「このっ」
声を上げている間に相手は再び粘着液を射出してきた。
直撃すると思ったが、それでも諦める訳にはいかないと、受け身が取れないのを覚悟で全体重をかけて身体を投げ出し、肩から地面へ滑り込む。
この状況で敵に背は向けられないと仰向けになったところで、黒い影が上空へと舞い上がるのが見えた。
飛びかかって来た!?
直ぐに応戦しなければ。
ブライトは立ち上がろうと地面に手を着いた。
その瞬間、右の掌に痛みを感じる。
硬く角ばった何か。
「こんな時に石とか、マジ勘弁」と思いながら視線を右手に移すと、そこにあったのは石ではなかった。
これは!
ブライトは迷うことなく、その石を周りの砂ごと掴み取った。
そして飛来する巨体目掛けて拳を突き出す。
「これでも喰らいやがれ!」
ブライトが繰り出した一撃は鋏角を掻い潜り、狙い澄ましたかのように相手の口へと押し込まれた。
彼は間髪を容れずに呪文を唱える。
「風の精霊石よ、その力を示せ!」
その瞬間、蜘蛛の口から光が漏れ、次の瞬間には胴体から無数の風の刃が飛び出した。
蜘蛛は一瞬で八つ裂きとなり緑豊かな林の中で深緑色をした蜘蛛の体液が勢い良く宙を舞った。




