~ 21 ~
女性を泣かせる原因を作ったレイヴァンを制裁しようと鼻息荒く力強い足取りで洞穴へと向かうブライト。
それを止めさせようと説得を試みるマリアン。
平行線をたどり続ける二人を同時に止めたのは思いがけない声だった。
彼らが振り返ると、林の奥で鳥たちが一斉に飛び立つのが見えた。
助けを求める悲鳴。
二人は互いの顔を見合わせ、今聞いた叫び声が空耳ではないと確信を得た。
近くで何か良くないことが起きている。
「ブライトさん!」
不安そうに声を上げるマリアンに向かってブライトは真剣な表情で頷いた。
「マリアンちゃんは皆を起こして来て。 俺は先に声が聞こえてきた方へ行ってみる」
「一人で向かうのは危険です!」
「助けを求めているんだ。 少しでも早く駆けつけてやるべきだろう?」
「ですが……」
「今回はちゃんと攻撃の精霊石も補助の精霊石も持っているから大丈夫だって! さあ、早く! これ以上、考えている場合じゃないって!」
ブライトは言い終わるや否や山林に向かって駆け出した。
***
林道を進む彼の耳には何度も叫び声が飛び込んでくる。
山賊か悪魔に襲われているのは間違いない。
救いなのはその悲鳴が、ずっと続いているということだ。
重傷を負えば大きな声を上げることは難しくなるし、死んでしまえば小声で呟くことすら出来なくなる。
悲鳴が続いているのは無事な証拠だ。
「絶対に助けてやるから俺が到着するまで殺されるなよ!」
ブライトは決意を声に出すと悪路にも関わらず更に速度を上げた。




