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地上から遥か上空。
赤い満月の光に照らされた雲海に蛇行を繰り返しながら、ゆっくりと飛行する影が一つ。
雲の起伏に併せて絶えず変化するそれは双翼を象っているものの渡り鳥のものと比べると何倍も大きい。
それならば猛禽の類と考えるべきだが、影は翼とは別に縦方向にも伸びている。
影を作り出すのは黒い髪に黒い服を纏い、黒い鞘の剣を携える青年だった。
だが人間に黒い羽根の翼は無い。
夜空を駆ける者は人ならざる存在。
メフィストフェレス。
それが全身を黒に染めた悪魔に与えられた名前だった。




