~ 17 ~
途切れることのない静寂。
辺りからは目覚めの早い鳥たちの囀りが聞こえ始める。
身体を僅かに動かすことにも引け目を感じる雰囲気にブライトは耐えきれなくなり突然短髪の頭を掻きむしった。
それからポケットの中を弄り干し肉を取り出すと口に運んで噛み千切る。
その様子を見ていたマリアンは沈痛な面持ちで謝罪の言葉を口にすると、続けて「やはり解ってしまいますよね……」と呟いた。
何が解ってしまうのか、まったく理解できていないブライトは率直に意味を聞き返し、話の続きを促すと思い詰めた様子のマリアンは続けて吐露し始めた。
「私、駄目な修道女なんです」
「急に何を言い出すんだ?」
「きっと女神様もお怒りに違いありません」
「まったく意味が解らないんだけど」
「私は教えに背くことをしておきながら懺悔せず、女神様に隠し事をしてしまったのです」
「女神に隠し事?」
存在しない者に対して隠し事とは意味が分からない。
「それに教えに背くことって何なんだ?」
「そ、それは…… その……」
再び顔を伏せ言葉が途切れてしまったマリアン。
幾分落ち着きもなくなった様子を訝しんでいると、彼女は思いも寄らぬことを口にした。
「初めて成人男性とキスをしてしまいました」
「どういうこと?」
「で、ですから…… キスを」
「誰と?」
「レイヴァンとです」
「……え?」
視線を向けて本当かと尋ねるとマリアンは顔を赤らめながら小さく頷く。
早朝の山林にブライトの驚愕の絶叫が響き渡った。




