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東の空が刻々と明るくなっていく中、たくましい腕を組み、どっしりと地面に座り込む大柄な男。
彼は指示されたとおり洞穴の上にある崖を真剣な表情で見つめ警戒していたのだが、脳内ではレイヴァンに「何か問題があったのか?」と尋ねるのを忘れていたことを悔いていた。
折角の機会だったのに別の話題で盛り上がってしまった。
レイヴァンの様子がおかしい理由を突き止めれば、フィーネから素敵なご褒美を貰えるのだ。
是が非でも解決しなければならない。
当初は如何なる問題を彼が抱えているのかを考えていたブライトだったが、次第に考えは褒美に向けられていた。
「肉体的に気持ちが良いご褒美といったら、やはり……」
声に出すと邪な妄想は一気に膨らみ、凛々しかった表情は無様に崩れ去った。
フィーネは自立した大人だ。
冗談は言うまい。
大人のご褒美と言えば、もうアレしかない。
彼女と初めて会った時、記憶には無いがそれなりに親密な関係になったはずなのだ。
旅仲間となった今なら、より親密な褒美を期待できる。
鼻息荒く意気込んだブライトだったが、突如として目前に一つの人影が写った。
余所事を考えていて、この距離になるまで襲撃に気がつかなかったと血の気が引いた彼だったが、少しでも抵抗を試みようと素早く身体を起こした。
続けて何時でも殴りかかれるように拳を握りしめ腕を引いて身構える。
そして最後に「誰だ!」と声を荒げると、意外にも柔らかな声で答えが返ってきた。




