~ 14 ~
少しの沈黙の後、ブライトは再び口を開く。
「最近は賑やかになった」
「五月蝿い程にな」
「正確に言えば華やかになっただな。 特にフィーネが仲間になってくれたお陰で俺は最近の旅が楽しくて仕方がない」
「旅の目的はメフィストフェレスを討つことだ。 行楽をしている訳ではない」
「解ってるっての! ……だから急に睨まないでくれよ」
「そんな締まりのない顔で言われてもな。 本当に理解しているのか甚だ疑問だ」
「大丈夫だって、理解している! お前がメフィストフェレスをぶっ倒す! 俺はそれを一番近くで見届ける! ……ただ、その道のりは長く困難を極めるのは間違いない。 だからこそ、その過程には一縷の華が、ささやかな癒やしが必要なんだ。 それぐらい解るだろ?」
「お前は熱意の矛先が常に曲がっている」
「レイヴァン! お前はフィーネを見て何も思わないのか? 悪魔と互角に渡り合える強さはもちろん、その戦闘中に惜しげもなく披露されるあの魅力的な身体! あれに反応しないなんて男じゃねぇ!」
「お前が話すと結局はその手の話題に辿り着く」
「男が考えることなんて大概そんなもんだろ。 ……で、どうなんだよ。 堅物のお前でも流石に彼女には思うところがあるだろう? 今は久しぶりに野郎二人なんだ。 遠慮なんかせずに思ったことを素直に口に出そうぜ」
「お前は俺にどんな答えを期待しているのか」
「そりゃ、お前が惹かれているのは彼女の胸なのか、それとも脚なのかってことさ」
「実に下らない」
嘆息を漏らしたレイヴァンは身体を起こすと洞穴へと足を向ける。
「何だよ、実は尻が好みなのか? ちなみに俺は全部好きだぞ」
「たまには思慮深い発言を聞いてみたいものだ」
歩き始めたレイヴァンだったが数歩進んだところで立ち止まった。
そして振り返ることなく「日が昇るまで休むから、気を緩めずに見張っていろ」とブライトに伝えた。
すると彼は「大丈夫だ、最低限のことはするから安心して休んでくれ」と返した。
その答えを聞きレイヴァンは再度息を吐き出す。
「四人の命を預かるんだ、普通なら最大限の努力をすると答えるべきだろう?」
「……悪い、思いつかなかった」
真面目に答えるブライトの口調にレイヴァンは不覚にも小さく吹き出した。
「お前に過度な期待は酷かもしれないな。 寝ている間に悪魔に襲われてしまっては元も子もないから、一つだけ明確な指示を出しておこう。 崖の上からの奇襲に備えること。 良いな?」
「了解!」
ブライトが威勢良く、そして若干調子良く返事をするとレイヴァンは洞穴に向かって歩き出した。




