~ 13 ~
林の木々の合間から見える東の空がようやく暁を覚えた頃、洞穴から体格の良いブライトが姿を表した。
彼は欠伸をしながら全身を伸ばすと、前方で見張りをしているレイヴァンに歩み寄る。
すると「お前が自発的に起きてくるとは。 何か良くないことが起きなければ良いが」と声をかけられたので「先日の一件があるから流石に寝坊だとか睡眠不足だなんて言えないだろ?」と答えを返した。
木に寄りかかる彼の横に腰を下ろしたブライトは徐にポケットから干し肉を取り出すと口に運ぶ。
それから同じ物をもう一つ取り出すと隣人に勧めたが、彼は見向きもせずに断ってきた。
推薦人は「美味いのに」と残念がりつつ二つの干し肉をまとめて噛み千切る。
それから二人は口を開かぬまま同じ方角を見つめ続けた。
一時の沈黙の後ブライトが「二人きりって久しぶりだな」と切り出した。
その言葉にレイヴァンは視線を落として相手を見る。
「俺は男と二人で居て喜ぶ人間ではない」
「……そんなことは百も承知だっての。 俺だって野郎二人で居て何が楽しいもんか。 もう五年が経つから言うけど、国を飛び出して直ぐの頃は本気で最悪だったぞ! お前と二人で野郎しか居ないのは当然ながら、お前完全に俺のこと無視してただろ!」
「頼みもしないのに勝手についてきて文句ばかり言うからな」
「いいや、あれは腐っていたお前が悪い。 むしろ完全に狂ってた。 お前が無茶ばかりするから俺はそれを必死に助けてやったんだ」
「流石にそれは言い過ぎだろう」
「言い過ぎなもんか! 悪魔を石に封じれば金になるのに、お前は封印を嫌い容赦なく始末し続けた。 結果、お前は常に無一文だ。 俺が稼いだ金で何とか食いつないで、ここまで来たってこと最近まるっと忘れてるだろ」
「悪魔を討てるなら食事など必要ない」
「そんな訳あるかよ。 人間は腹が減ったら力が出ない生き物なの!」
至極当然とばかりに答えたレイヴァンに向かってブライトは盛大にため息をついた。




