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「ぼ、僕は、それでも、やっぱり…… 炭鉱に行きたいです。 ラヴァワームを封印しないと卒業できませんから」
皆がどうしたものかと頭を悩ましていると、少年のノアはゆっくりと口を開いた。
その言葉には恐怖と決意が入り混じっている。
「下手をしたら死ぬかもしれないのだぞ? それでも行きたいと言うのか?」
レイヴァンが尋ねると彼は少し考えてから「そうですね、何もできない僕は未知の悪魔に襲われて死ぬかもしれません。 ですが、ここで引き返したら妹のリノが飛び級で学校を卒業するのに対し兄である僕は点数が足りずに留年。 学歴を重んじる家系ですから留年なんかしたら親や周りから何と言われるか。 きっと生きた心地のしない、それこそ死んだような扱いをされるでしょう。 だったら、少しでも可能性が残っているうちは挑戦すべきだと思っています。 それに、いざとなったら皆さんが助けてくださると信じていますから、失格になるのはその時で良いです」と答えた。
「確かにそうだが…… 君は恐れている割には落ち着いて物事を考えているのだな。 加えて力が無いのに諦めが悪いときた」
「すみません、レイヴァンさん。 図々しいことは百も承知です」
「気にするな。 そういう性格、嫌いでは無い。 ただ、一つだけ覚えておいてくれ。 結果を得るために感情だけで挑む者は無謀で愚か者だ。 どんな状況下でも常に最善の一手を考えて挑む者が勇敢で賢き者だ」
「常に最善の一手を考えて……」
ノアが復唱するように呟いていると、レイヴァンは続ける。
「君の祖父であるクロノスの教えだ」
「……え!? お爺ちゃんの!? ……そういえばレイヴァンさんは僕のお爺ちゃんを知っているみたいでしたけど、それはお爺ちゃんが丞相だったからではないのですか? もしかして何か関係があったのですか?」
「それは今の問題が解決してから話す事にしよう」
レイヴァンがノアとの会話を打ち切ると、人垣から「道を開けろ!」と猛々しい声が聞こえてきた。




