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皆が一斉に声を上げる中、フィーネはレイヴァンに向かって問いかける。
「時間が勿体無いから、さっさと話してもらえる? あなたは何に気がついたのかしら?」
「昨夕ギルドを訪れてから妙な違和感を感じていたのだが、それが今ようやく解ったのだ。 今まで気がつかなかった自分が実に腹立たしい」
「それは何かしら?」
「訪れたギルドで仕入れた情報が、炭鉱にいるであろうトロールを討伐するためにハンターが派遣されたということだ」
「どこもおかしくないだろ?」
ブライトが言うとレイヴァンは首を振った。
「残念だが十分におかしい話なのだ。 トロールは夜行性の悪魔なのだから、力を十分に出せない日中に討伐するのが理想的だ。 それなのに夕方のギルドで聞いた情報が『派遣された』では不自然だ。 炭鉱までは半日とかからない距離なのだから夕方には結果が分かっていなければ」
「そう言われれば、そうかもしれないが…… 実際に午後から出発したのかもしれないぞ?」
「確かに、その可能性は残る。 だが本当の問題はそこではない。 一番の問題はトロールが早朝に炭鉱から離れたところで目撃されたことだ」
「……つまり?」
「つまり派遣されたハンターたちがトロールの討伐に失敗したか、或いはトロールたちが根城である炭鉱に戻ることが出来ないことを意味している」
「後半の炭鉱に戻れないってのがよく解らないんだが」
「トロールたちは住処を追われたと言うことだ」
「誰に?」
「トロールより強い悪魔だろうな」
「何だ、そう言うことか。 やっと分かったぜ。 難しい話なんかしないで最初からそう言ってくれれば良いんだよ」
ようやく納得した表情を浮かべたブライトだったが、一呼吸おくと驚きの声を上げた。
「ちょ、ちょっと待てよ! お前、今何て言った? トロールより強い悪魔がいるって言わなかったか!?」
「そう言ったが?」
「トロールってオークよりデカくて強いんだろう? そんな奴を住処から追い出すとか、どんだけだよ!」
「正体は解らないがノアが封印を目指すラヴァワームではないだろうな。 ワームがトロールの脅威になるとは思えない」
「それじゃあ、お前が心配しているって言ったのは……」
「炭鉱に巣食っているであろうトロールより凶悪な悪魔の事さ。 討伐に向かったハンターがその日のうちに報告に戻ってきていないことを考えると、彼らはトロールではなく、その悪魔と鉢合わせてやられた可能性がある。 そんな場所へ戦闘慣れしていない者が向かうのは無謀としか言えない」
レイヴァンの話を聞いて誰もが沈黙した。




