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魔天創記 (五)  作者: ちゃすけ丸
第3章
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~ 9 ~

 レイヴァン様か、ご主人様か。



 二つを合わせたレイヴァンご主人様は思いの外長くて言い難いし……



 腕を組み唸りながら洞穴へと戻っていったリル。



 それを見届けたレイヴァンが一息つこうとすると、近くで新たな声が聞こえた。



「あんな小娘があなたにとって特別な存在だなんて嫉妬しちゃうわ」



 視線を向ければ小さく波打つ黒髪の女性フィーネが木の傍らに立っている。



「私もこれからはあなたのことをご主人様と呼ぼうかしら。 ……もちろん、その際は毎晩たっぷりとご奉仕をしてあげる」



 悪戯っぽく笑う彼女にレイヴァンは「従者が主導権を取ってしまっては、どちらが主人か解ったものではない」と溜め息を漏らした。



「何の用だ?」



「私もあなたと話したいことがあってね」



「その口振りだと、かなり前から話を聞いていたようだな」



「最初から小娘と一緒に居たわよ? もっとも、私は『気配は消した上で草木に隠れて』だけど」



「だとすると、いよいよ見張り失格だな」



「そうね。 だけど気にすることはないわ。 今のあなたより私が一枚上手なだけだから」



「妙な言い回しだな」



「そうかしら?」



 言い終わるや否やフィーネは一瞬にして距離を詰めると、そのままレイヴァンの胸に飛び込んだ。



 そして言葉を失った相手に向かって不適な笑みを浮かべる。



「私は事実を伝えているだけよ」



 両腕を相手の背中へと回し強く抱きしめるその仕草は、久しく会うことが出来なかった恋人との再会を彷彿とさせたが、左手には不釣り合いな短剣が握られていた。

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