表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

おばあちゃん

田舎のおばあちゃんに会いに行った。


都会の生活に疲れ果て。



栗原彩葉(くりはらいろは) 。 社会人二年生。


短大を卒業後、近くの雑貨店へ就職。

主に和風小物を扱う店だ。


ちりめん財布や巾着など、洋風ではなく和風。


おばあちゃんから貰った花柄の着物を着ての接客。


小さめの店内は、喫茶スペースがあり、抹茶や和菓子が食べられる。


私は小物スペースのレイアウト、発注、棚卸し、レジ接客。

毎日届く品物ダンボールから中を出してチェックする。そして並べる。


ただぼさっと接客していれば良いわけではない。


おばあちゃんが好きな小物類がある。

私も好きだ。


そんな理由で就職したが、予想以上に重労働だ。


可愛くラッピングもするし、着物の端切れで縫い物もする。


元々小物屋と和菓子屋は別だった。

しかし、個人店営む主人同士の結婚により、店をリフォームしたと言う。


小物屋の店長さんは、中々のやり手の女主人。 和菓子屋の旦那さんは口数少ないが腕は良い。

そんな二人がくっついた。


合理的な店になった……。


しかし店は忙しい。アルバイト五人であちこち切り盛りしている。


社会人二年生。仕事は好きだが疲れてしまい、溜まった有休を使い田舎へやって来た。


店長には 「彩葉ちゃん。 お祖母様の着物、 頂いて来てね」


にっこり言われた。


私の着物は評判が良い。

おばあちゃんの着物は質が良く、昔の物にしてはきれいだ。


「分かりました。 聞いてみます……」


断れない。


店長も店も好きだ。嫌になった訳じゃない。

ただ何か疲れた。



電車とバスを乗り継ぎ、山の中のおばあちゃんの家へ到着した。


おばあちゃんは八十歳。

私の父の弟家族と暮らしている。


おじさんに駅まで迎えにと思ったが、平日である。

仕方ない。 果てし無く本数の少ないバスに乗った。



「よく来たねぇ、 彩葉。 疲れたでしょ。 早くお茶飲みな」


着物姿の小柄なおばあちゃんが出迎えてくれた。

白髪なく、いつもきちんとした身なりをしている。

流石元教師。


「頂きます」


手を合わせ、緑茶を飲む。


今は秋。田舎はやはり寒い。

緑茶が身体の疲れを癒す……。


「何でまた急にこっちへ? 何かあったの?」


おせんべいを勧めながら尋ねた。


「うん、 まあ……。 何と無く?」


「そう。 でも嬉しいよ。 来てくれて」


おじさん家族は今は留守。

二人は仕事で、私の従姉妹は学校。


年下の従姉妹二人いるが、学校やら何やらで忙しいらしい。


おばあちゃんはいつも一人。


何年か前におじいちゃんが亡くなって、寂しいのに、いつも笑顔だ。

縁側で縫い物をしたりしていると言う。


昔から良い家柄のこの家は、無駄に広い。


一階はおばあちゃんの部屋と居間、台所にトイレとお風呂。客間も二つある。


二階も同じ様な間取りだ。



庭も広く、池があり鯉が泳いでいる。


花壇や菜園もあるし、駐車スペースもある。


こんなに広いと手入れが大変だ。


うちの父は長男だが都会に出た。

母と結婚し、小さな会社を営んでいる。


他に父の妹二人。近くに住んでいる。


とは言っても。やはり寂しいよね。


私は折を見ては癒しを求めてここに来る。



「おばちゃん達呼んでご飯一緒に食べようかね」



そう言うと電話をかけた。


「うん。 そう。 じゃあ待ってるね」


「おばちゃん、 皆で来るって。 さちおばちゃんも誘うって言ってたよ」


「本当? 嬉しいな」




その晩は楽しい食事会になった。


さちおばちゃんにすみおばちゃん。おじさんにいとこ達。

多勢の食事を、おばちゃん達が作り、美味しく頂く。

お酒も入り、愉快になる。


田舎名物ほうとうやら、特製漬け物。揚げ物に甘納豆のお赤飯。


おばあちゃんとお揃いの着物を着てのおもてなし。

私は凄く嬉しかった。




その夜は、おばあちゃんと並んで眠った。

客間があるが、おばあちゃんの隣が良い。

昔話を聞けるから。



おばあちゃんの昔の話。


戦争の話だった。


仏壇の上の写真をふと見る。

薄明かりに映る写真……。


ちょっと怖い。



おばあちゃんは、昔の話を始めた。


好きな人が戦争に行ってしまい、病気で亡くなった話……。


いつもより楽しかった家族の食事。

幸せな光景なのだが、ふと見せる寂しげな顔。 戦争で亡くなった人と関係あるのかな。


初めて聞く話に耳を傾けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ