BADEND
宣言していた通りこれで終わりです。
5月中旬 自宅
学校で発生した異界以来、まだ新しい異界化は起きていない。そして西山コーポレーションを探ってみてもやはり何も掴めなかった。キーにハッキングでも頼もうかと思っていると、そのキーに急に話しかけられた。
『そんな、創、良いニュースと悪いニュースがあります。』
声質がいつもより硬かったので、姿勢を正して聞くことにした。
「それで、良いニュースって何。」
『それは…もう貴方が戦う必要がなくなったのです。』
「どういうこと。」
『連盟の軍がもう来ているそうで、彼らが博士の捕獲と戦闘を行い、原住民の皆さんを戦線から外すようにと通達が入ったそうです。』
今さら感がぬぐえないが、まだ悪いニュースが始まっていないのが気になる。
『それで、悪いニュースですが…この星と協定は結ばないらしく、この戦いの情報も技術も残さないようにすることが決定され、戦いに関する記憶を全て抹消するそうです。』
「待ってくれ。それって、早乙女のことやジャスティス、キーに祭さんのことも消えるのか。」
『はい、そうなります。そして、もうすぐそれが行われるのです。』
時間が無いのか。
「どうして、そんな急に決まったんだ。」
『マヤが私が反対するだろうからと、情報を直前に知らせてきたのです。すみません。』
「キーが誤る必要はないよ。それより抜け道は無いのかな、最期までやり通したいんだけど。」
『すみません、もう時間が…』
メディカルルームに繋がる扉が消える。
「キー、おい外に逃げよう。」
『Uninstall__assist program Shilkey Sta』
形態の画面がアンインストールを示している。
「キー、キーおい、返事しろ。」
『創、ありがとうございました。もう、貴方は…戦わなくて…良い…わ…し…は』
キーからの返事が途中で途絶えた。
急いで外へ逃げ出そうとすると、眠気が…ドアが遠……い。
5月26日 龍門高校 午後4時30分
最近何か大切なことがあった気がするんだけど、思い出せなくてモヤモヤする。ミーティングで使う映像を編集しながら考えていると、誰かが入ってきた。
「そんなに思いつめなくても、インターハイ県予選なら良いとこまでいきそうだよ。」
「甘く見てると足元掬われますよ。これが最期の試合になる学校もいくつかあるんですから。」
入ってきたサッカー部マネージャーの紅先輩に軽く言い返した。4月末にもう1人のマネージャーが行方不明になり、それからたびたびこき使われるようになった。
「悪いね、神郷。私、パソコン苦手でさ今まで千秋にそういうの任せてて…本当、どこ行ったんだろう。そんなんじゃ、蹴斗奪えないよ。」
珍しくしんみりしている紅先輩を見て、何故か胸が痛くなった。
「どうした神郷…あっ、私は静矢のだから惚れても駄目だぞ。それに、パソコンも持って帰っていいし、あまり根詰めるなよ。木曜までには仕上げて欲しいけどな。」
先輩に茶化されて少し楽になった。
「お言葉に甘えて今日は帰らせてもらいますよ。」
無性に考えごとがしたかったので、家で作業をすることに岐路に着いた。
考え事をしながら帰っていると、いつもと違う風景の街に入っていた。人が1人も居ない。
「なんかいつもと少し違う。色とか、罅が入ってる。いつもの町なのか。」
キョロキョロ辺りを見回して一応自分の家に向かってみる。疲れて、白昼夢でも見ているんだろうか。
後ろからコツコツと足音が聞こえ振り向くと、恰幅の良いおじさんが近付いてきた。
「神郷創志君だね。」
向こうは自分を知っているらしく怪訝に思いつつ肯定した。
「そうですけど、失礼ですが貴方は。」
「私は東道元東コンツェルンの代表だよ。君に少し用事があってね、祭出てきなさい。」
急に目の前に黒いリムジンが表れその中から、綺麗な女の人が降りてきた。
「お父様、ありがとうございます。」
女性は道元さんに礼をして、こっちに近付いてきた。こっちを見る祭さんの顔を見ると泣きそうで、口をパクパク動かしている。何か言ってるんだろうか。
「会いたかった。創君。」
そう言って表情は泣きながら、声は凛としたまま抱きしめられた。少し良いにおいがした後、腹が痛くなった。
「そして…さよなら。」
俺から離れる女性の顔には、もう涙なんて無く、さらに言えば表情も無かった。道元さんが彼女を呼んだ。
「夕奈、帰ろう。」
ゆなって誰だ、祭って名前じゃなかったのか。混乱しつつも、彼女を見ると、侮蔑の表情を一瞬だけ浮かべ、また無表情になって道元さんの下へ向かっていく。
道元さんが先に車に乗り込もうとしたとき、女性が手を横に振った。少し遅れて、べちゃっと何かが落ちる音がした。車の周りに血溜まりが広がっていく。俺も手でやられたのか。もう真っ赤に染まった制服を押さえつけながら彼女を見てると、変な割れ目みたいなものが出来てその中に入っていった。
残された車から白衣の優男が出てきた。貼り付けた笑顔が似合う男が目の前で屈み、俺を見てきた。
「君が神郷君か、始めまして。僕は博士って呼ばれてる。もう君は記憶がなくなったのかな。僕にはまだ時間があるからお話ししようよ。」
血が抜け朦朧としながらなんと答えたかは分からないが、目の前の男は話を続ける。
「連盟は負けちゃったよ。こちらにはこの星の神クラスが4体程いたからね。君たちなら阻止できたかもしれないのに。本当に馬鹿なやつらだよ。でも、僕の実験は失敗したんだ、残念だよ。知的生命体に全ての感情を与えたらどうなるか見るんだけど、全ての感情が集まらなくてね…後、道元は妻の夕奈を、その家族は妹である祭を生き返らせようとしたんだ。君が知りたかったのはこれくらいかな。じゃあ、僕は新たな実験場を探しに行くかね。」
勝手に喋って、男は歩いていく、そして前消えた女性と同じようにして消えた。
彼は…何に……て話し…いた…う。何かの…小説だろうか。そ…り血…止め…ない……
目の前に、泣いているあの女性が見えた。泣かないでと言おうとしたが、声は出ず、伸ばしかけた手は届かず地に落ちた。
いくつか準備していたバッドエンドの1つです。読んでくださってた皆様ありがとうございました。




