盟友離別
更新が遅れて本当に申し訳ないです。
同日 龍門高校内の異界
再度琴原の精神世界に入り込み、牢屋の中の琴原に話しかけながら、足を踏み入れる。
「伊狩を助けたいから、手伝ってもらえるか。」
「分かった。どうすれば良いの。」
「ちょっと下がっててもらえるか。今からこの壁を壊して伊狩に会わせてやる。少し正気を失っているから話しかけて気付かせてやってくれ。」
そう言って、壁を壊すため大剣をぶつけていく。表面は削れているが埒が明かない。
「このままじゃ時間がかかるな……Style change Death 」
黒装束に着替え腰から銃を抜き、弾を撃ち込んでいく。弾が壁に当ると数瞬遅れて周りに罅が入り、2発・3発と続けていくと壁が大きく抉れていった。壁が大分ボロボロになったところで銃を鎌に替える。本当は槌が良かったが、無いので仕方ない。禍々しい刃の付け根の太い部分で壁にさらにダメージを入れていく。思ったよりも鈍器として使えるな。
壁に穴が空き向こうが少し見えたが、すぐに緑に覆われ見えなくなってしまった。穴は塞がってないので、鎌の刃を引っ掛け力尽くで壁を切り裂いていく。切れ目を入れた壁を崩すと、茨の蔓が壁のようにこちらを遮断していた。向こうからはただごめんなさいと言う声が聞こえてくる。
「唯、唯よね。私よ、結衣よ。聞こえているの。」
静止する間も無く、茨に取り付き琴原は話しかけた。手は茨の棘で傷付き血で染まっている。それでも、懸命に伊狩に呼びかけている。
「キー、向こうはどうなっているんだ。」
『蹴斗達も誘導に成功したもよう、ジャスティスがこの2人と繋ごうとしています。カーリーは呻きながら身悶えしていて、土塊は沈黙しています。』
「向こうの核は繋いでも問題ないのか。」
『大丈夫かと思います。』
「了解、琴原下がってろ。」
茨の壁を斬り裂いてスペースを造り、部屋の中へと進んでいく。
近付き琴原が声を掛けるたびに、伊狩を包む蔦がよりしまっていくのが分かった。
「ここはどこだ。」
伊狩の牢屋の通路から声が聞こえてくると、後ろの琴原が誰かに反応して声をかけた。自分は蔓を切ることに集中し斬り続ける。
「響なの。」
「結衣ここにいたのか。さあ、帰ろう。唯も待ってる。何だこの部屋……あれ、何で唯があんな所に。」
「響も手伝って。唯を正気に戻さないと。」
草刈りも大分進んで、後少しで手が届くという所まで来ると、茨がうねり飛んできた。もちろん当る前に斬り飛ばす。後ろにも茨の蔦は有ったが、全て本体の伊狩の元へ集まっていく。
「結衣、そいつ死神じゃないのか。そこから、逃げるんだ。おい、死神2人に手を出すな。」
格好が格好だからか誤解を受けてしまっている。少々げんなりしたが、襲ってくる蔓の対処でそれどころではない。
「響、彼は味方よ。それより唯、私よ。分からないの。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい………」
琴原の叫びも届かず、ただ謝り続けている。何か後ろめたいことがあったのか。
蔦の攻撃回数も減り、単調になっていく。仕掛けてくるのかと茨の塊を注視していると、塊が太くなっていることに気付いた。もしかして、茨の中に篭るつもりなのか。
「唯、僕だ響だ。分かるか、結衣が目の前に居るんだ。唯、結衣が居るんだ。聞こえてるか。」
蔦が一瞬緩み伊狩の眼に生気が戻ったが、何かに怯えるように目を硬く閉じた。それと同時に蔦が一気に締まり始めていく。
「待って、唯。私の話を聞いて。」
出遅れた自分の横を琴原が駆け抜け、今にも伊狩の顔を覆いそうだった茨の蔓を躊躇無く掴む。痛みを顔に出さずまっすぐに語りかけた。
「ねえ、唯、聴いて。あなたは何も悪くないわ。私が死んだのはあなたのせいじゃない。悪いのは私なの。私が弱かったから。」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
話しかける琴原に蔓が襲い掛かっても対応できるように、周りの蔦を斬ろうとしたが、琴原が目で制され手は出さないでおく。琴原はさらに叫ぶように伊狩に訴え続ける。
「私は、あなた達が付き合って良かったと思ってる。あなた達に嫉妬したわけじゃないの。むしろ、弟みたいな響と妹のように思えた唯、あなたが付き合ってくれて本当に良かったと思ってる。だから、もう自分を責めるのは辞めて。」
「…結衣ちゃん…でも、司先生が…」
司先生…確か学年に居たような。
「私が自殺する原因を作ったのは…そいつなの。唯は騙されてたの。私は顧問のあいつに襲われて…」
自分は琴原の顔を見れなかった。牢屋の前で崩れ落ちる音がした。
「そんな、毒島の言われた通りにすれば良かったんじゃ…」
牢屋の目で響が崩れ落ちている。
「司先生が、そんな。」
「薬使われて、溺れていく自分が嫌だった。弱い自分を見せたくなかったの。楽になれると思ったの。でも、今度は…あいつは唯を狙ってた。あいつは危険なの。だからもう…後は私に任せて。」
蔦が拘束を解き、一気に萎れていく。
檻にしがみついて響が琴原に呼びかけ始めた。
「結衣、一緒に帰ろう。唯と僕と結衣でまた遊ぼうよ。結衣を取り戻すために僕は…」
「響、分かってる。でも…出来ないの…お願い響、唯を頼むね」
響の体が光に包まれていく、浄化が始まったようだ。
「死神さんどうにか出来ないのか。」
縋るような顔をされても、自分にはどうにも出来ず、ただ、首を振ることでしか答えられなかった。
「会えたのに、せっかく会えたのに…どうして、くそっ」
琴原は牢屋越しに、響の頭を撫でながら優しく話しかけた。
「もう、私は居ないから、唯のこと頼んだよ。もし唯を泣かしたら分かってるね。頼んだよ、私の大切な幼馴染」
「うっ、わ、分かったよ。」
響は返事を返した後泣きながら消えていった。
琴原は次に泣き崩れている伊狩の方へ近付いていった。
「唯、もう泣かないの。響のこと…頼むね。」
「結衣ちゃん、もう…会えないの。」
伊狩の体もまた光り始めた。
「時間みたいだね。唯、私が居なくなっても2人なら幸せになれるよ。」
「結衣ちゃん、私まだ話したいことがいっぱいあるの。結衣ちゃんもっと一緒に居たいよ。お願い死神さん。結衣ちゃんを連れて行かないで…」
伊狩の縋るような視線にも答えられず、じっと消えるまで待つしか出来ない。
何故か、琴原を呼ぶ声だけが響く牢獄が、軋んだ。
『創、外に敵が。虎男も来ています。このままでは…創は伊狩さんを守って下さい。』
壁に穴が空いて黒い紐のようなものが漂っている。穴の向こうは見えず、ただただ暗い。
「どうなってる。虎男が毒島司なのか。まあ今はそんなことどうでも良い2人とも俺の後ろに付け。」
琴原と伊狩に伸びてくる黒い紐を切り続けているが、穴の中から延々と出てきて終わりが見えない。
「もしかしてこれは毛。」
「結衣ちゃん、そんなの触らない方が…あっ、死神さん足元の紐がくっ付いてる。」
落ちていた紐が復活して足に絡みつき、締め付けられる。紐はさらに体をつたって登ってくる。迎撃しながら、剥がそうとするも、剥がす隙をつかれて壁に払い飛ばされてしまった。剣と刀を2人の方へ蹴飛ばし、これで時間を稼げるか。
琴原はこっちの意図を察したようで、刀を取り紐を迎撃しつつ下がって行く。急いで自分に巻きついた紐を外しにかかる。確かにこれは毛のようだ。小太刀でまとめて斬り、剣を拾い加勢する。2人牢屋の端まで後退して後がないようだ。
「結衣ちゃんもう下がれないよ。」
「唯、何。きゃっ。」
バランスを崩し、斬り損ねた毛が2人を絡め取る。無理矢理割って入り斬り離すも、足に絡まっていたものが合ったようで、2人が引き摺られていく。
「くそっ、間に合え。」
毛を何本が斬ったが、向こうが絡みつく方が速い。
「唯、あなただけでも。」
琴原は伊狩に巻きつく毛を斬り捨て始めた。
「結衣ちゃん…結衣ちゃんはどうするの。」
毛は伊狩を諦めたのか、琴原だけに巻きついていく。銃を抜いて穴に撃ち込んで行くが何の効果も出ない。伊狩が琴原の腕を掴んで、踏ん張り耐えている。自分は回りこんで斬りかかるが、刃が通らない。
「唯、あなたに会えて良かった。響と元気でね。」
「そんなこと言わないでよ。結衣ちゃん」
「唯、あなたはあなたの帰るところに帰って。お願い。」
「嫌だ。結衣ちゃんと一緒に帰るの。」
伊狩の体が透けていく。
「待って、待って、待って。このままじゃ結衣ちゃんが…お願い、神様。結衣ちゃんを助けて」
くそっ、この毛固すぎるびくともしない。じりじりと穴のほうへ琴原達が引き込まれていく。
「ああっ、あっ」
伊狩の足が消えて行く。
「さよなら、唯。私と友達になってくれてありがとう。」
「結衣ちゃ…」
伊狩が消え、一気に引っ張られていく。掴もうと琴原に手を伸ばす。捕らえたと思った瞬間、空間が壊れていく。
『この空間の核が失われたため、空間が消失していきます。早く脱出してください。』
琴原が穴に引き込まれていく所を、無様に見せ付けられながら、キーの声が部屋に響いた。
引き込まれていく琴原は、俺に向かってありがとうと強がって見せた。
異界のグランドに戻ってくると、ジャスティスは幾つもの針に串刺しになっていて、蹴斗達が虎男と男根の城みたいなものと戦っていた。
「何が起きたんだ。」
「大丈夫、しっかりして」
ジャスティスを励ます恵美の元へ急いで近付くと、ジャスティスが気付いたのか手を伸ばしてきた。




