鬼塊
同日 龍門高校 グランド
血が滴る地面が膨らみ人に形成していく、あっという間に20体程の雌型の何かに囲まれた。
「ジャスティス、どうする。」
ちらとジャスティスの方を見ると何か思案しているようだった。
「創志、君は土塊を相手にしてくれないか。本体についてもう少しで何か掴めそうなのだ。」
「分かった。ただ、全部は抑えられないぞ。最善は尽くすが。」
そう言い、2人とも己の敵へと駆け出していく。
近くで土塊を見ると、凄く不気味だった。人の死体が腐ったらこんな感じになるであろうといった姿をしている。さっきの生徒をゾンビの様だと言ったが、こっちの方が紛れもなくゾンビだ。動きが緩慢で連携も取れてない、簡単に全て倒してジャスティスの援護に行けそうだ。既に動いている土塊は後1体、狙いを定め死角から飛び込み切り上げる。大剣は簡単に土塊の首を跳ね飛ばし、宙を舞わせた。
切り上げた時に違和感を感じたので、地に落ちた首を注視すると、首には真っ白であるが眼が付いていた。他の土塊には付いていなかったので、特別な1体だったのだろうか。離れた首は動く気配も無く、じっとしていた。ジャスティスの方を見ると、カーリーの攻撃をほとんど捌いている。援護のために廻り込み、下段を切り払う。
しかし、空いている手で剣の腹を押し飛び越え、さらに蹴りまで放ってきた。重い、勿論ガードしたが不意打ちに対応しあの威力の攻撃を出せるとは予想外だ。
「不意打ちとはあまり褒められたことじゃないぞ。」
少し傷付いたジャスティスが、軽く言ってきた。
「何か分かったのか。」
無視して聞きたいことだけを聞く。
「2つの魂が思いあうように葛藤していることが分かったが、決定的な壁があるようで想いが伝わらず、自分を傷付けている様だ。」
「便利な能力だよな。」
「そうでもない。攻撃を受けないといけないからな。次が来るぞ。」
カーリーは再度首を掲げ出す。弱いが土塊は面倒なので、阻止しに行く。
掲げられる途中で首の眼が光った。一瞬時間が止まったような気がしたが、体が動いているので気のせいだと思う。
『いけない。離れてください。』
キーの声に従わず、防御を考えず全力で剣を振り下ろす。敵は2刀で防ぐも、圧力に負け額を割られ血を噴出した。
剣が額に触れた瞬間に見えたのは厳重な檻が並ぶ二つの部屋だった。左側の見えるほうでは学校の制服を着た女生徒が、自分に巻きついた茨の鞭を口で引き絞っている。アイマスクのためかこちらには気付いていない。身体に食い込む棘から血が滴っていた。感じたのは、自分を罰したいという感情だった。話しかけようとした瞬間、現実に戻された。
目の前を敵を見ると明らかに噴き出す血の量が多い。返り血を浴びたくなかったので急いで離れ、血が付くことは回避出来た。
『今2人の状態異常恐慌を回復させました。創、敵は血を媒体にゾンビを作り出すのです。無闇に切りかかるのは得策ではありません。ここはジャスティスが何か掴むまで耐えましょう。』
「すまない。私としたことが何故か全力で守りに入ってしまった。このジャスティスホワイト一生の不覚。」
『ゾンビが復活しました。数に変化はありませんが強化された個体が10体程います。気を付けて下さい。』
再度俺は土塊に、ジャスティスはカーリーに挑む。
動きが遅い個体を優先的に切り崩し数を減らしていく。強化個体の攻撃はキレは増したが、単調でまだ余裕でかわせる。かわすと敵は体勢を崩しているので容易に一太刀入れるが、倒しても倒してもカーリーの術で復活して襲い掛かってくる。
「キー、ジャスティスはまだ糸口を掴めないのか。」
いい加減じれったくなりキーに問うと、返答は芳しくない。
「あの掲げてる頭を切り離しては駄目なのか。」
せめて土塊の復活を邪魔しようと提案し、キーがジャスティスに伝えると言い戦闘に戻る。
ジャスティスがカーリーの首を持つ手を蹴り上げると、首は手から離れ宙を飛んだ。首が落ちる先には土塊の残骸が散乱している。頭の中で警鐘が鳴り響き、走り出そうとした時には気付いてしまった。残骸が落ちる首の下へ移動していることに。もう切り付けるのは間に合わないと思ったので、剣を首に向かって投げつける。剣は、首が落ち身体を形成する土塊に突き刺さった。
するとまた牢獄の前に立っていた、土塊の方にも魂があったのだろうか。今度は右側が見えて、左側は牢屋の裏側と言った感じだ。薄暗い右側に眼を凝らすと、暗闇から急に人が鉄格子に飛び掛ってきた。
「唯、唯なの。」
うちの制服を着ていて、学年章を見ると去年の1年のものだ。
「あなたは、誰。」
鉄格子越しの少女はこっちを怪訝な顔で見てきている。
「そういうお前は誰なんだ。隣に居たやつとは知り合いなのか。」
「唯、唯も居るの。唯は無事なの。」
格子が揺れるくらい興奮しながら尋ねられたが、唯が誰か分からない。
「落ち着け、俺は唯が誰か分からないから見当つかないんだよ。とりあえず話を聞かせてくれないか。」
「ごめんなさい。とりあえず、何を話せばいいの。」
「お前が誰で、何故ここに居るのか分かるか。」
「…私は琴原結衣。元龍門高校の生徒で、生きていれば今2年よ。」
俯いてかぼそい声で答えてきた。
「待て、去年自殺や、事故で死んだ生徒は居ないぞ。」
「あなたも龍門生だったの。まあ、そうね。自主退学してから事故にあったから…。」
噂でも聞いたこと無いんだが。
「ついでに唯って誰だ。お前も唯らしいが。」
「私の親友よ。私は結ぶ衣で結衣、あの子はただ1つの唯で伊狩唯。私は死んでいるからあの子を助けて欲しいの。」
そろそろ時間のようだ。
「出来るだけやってやる。ただ、その唯を救う時はあんたの力も借りるぞ。」
牢獄から帰ってくると、女ゾンビが剣を引き抜き地面に突き立てていた。あの話が本当かどうか分からないが、ジャスティスに一応伝えてつつ、女ゾンビの様子を見る。女ゾンビはゆっくりとこちらに踏み出して来る。
『マヤ達から連絡が来てます。繋ぎますか。』
「構わない、繋いでくれ。」
剣を呼び寄せ構えながら答える。
『創志か、俺、蹴斗だ。こっちの援護に来るのにどれ位かかりそうだ。1度浄化したんだが、敵がパワーアップして、音で攻撃してきて近づけないんだ。』
映像まで送られてきていて、だいたいこちらと同じ様な状況だった。
「悪いがこっちも同じ様な状況だ。そうだ、そっちに琴原結衣か伊狩唯を知っているやつはいるか。そいつらがカーリーに関係するよう、またか。」
地面が再び盛り上がり、和剣を持ったゾンビが召喚されていく。しかし今度のゾンビは呻かず首の付いたあの女ゾンビを守るように集まっていく。
「こっちも本気ってか。分かったことがあったらそっちも伝えてえくれ。終わり次第そっちに行く。キー映像と音声繋ぎっぱなしで頼む。」
ジャスティスの方を見ると、武器を持たない土塊が邪魔するようになっていた。指揮系統が違うのか。とりあえず土塊のほうから処理しに行く。土塊を壊していると、剣を持つゾンビも襲い掛かってきた。2体で連携し攻撃してくるが、牽制だけに徹している。奥の方で壊した土塊を回収して、女ゾンビの元へ連れて行っている。増やさせても困るので阻止しに出る。
振り下ろされる古の和剣をかわしつつ剣で受け流し、そのまま敵の足を切り飛ばし、肘で弾き飛ばす。間髪入れずに残る1体の腹に剣を突きたてて、力に任せて振り切ると、そのまま振り切った先に飛んでいった。そして女ゾンビの元へ突っ込んで行こうとすると、やはり守ろうと何体か前に出てきた。
隊列の奥のほうで女ゾンビが手を上げたあと振り下ろすのが見えると、敵の眼窩に光が灯った。木の様な肌も人に近づいてきている。
「面倒になりそうだな。ジャスティスすまないが援護は難しくなった。まだ分からないか。」
「向こうのチームからの連絡で、迷える魂が3つになった。そしてこの3つは全て関係しているのは分かったが、3つの魂が会えないようになっているようなのだ。精神世界に行って壁か鎖を断ってくれないか。」
「了か、蹴斗達からか。」
「創志か、静矢だ。2人のユイについて分かったぞ。2人は小学生からの親友だったが、高校に入って伊狩の方が琴原響と言う、琴原結衣の従兄弟と付き合うようになってから距離が出来たそうだ。そして琴原結衣は3月で自主退学後事故死しているそうだ。伊狩と響は吹奏楽、琴原は剣道部だったそうだ。それと琴原の方は2人が付き合った後援交してる噂があったそうだ。」
「キャプテンありがとうございました。後、そっちは今どこで戦っているんですか。」
「すまん。今俺達は保護した生徒達を守ってて別行動中なんだ。用件があるなら伝えるぞ。」
「敵をグランドに連れてきてほしいんです。」
「分かった、伝えておこう。」
敵の隊列を見ると、遠距離範囲攻撃が無いのが惜しく思える。しかし無いものは無いので、突っ込んでかきまわすしかない。速攻で壊しにいくか、まずは雑魚を片付けるか、どちらに…いやどちらも同時にやれる。
「Style change Death 」
無数の武器を展開させる死神に変身する。足から地面の感覚がなくなり敵を見下ろす形になる。そこで、腕を振り武器が先行させ、敵を切り裂き道を作らせる。敵の数を十数体減らした所で、敵に上から肉薄すし、
「Style change Hero CODE seeker 」
着地と同時に大剣で女ゾンビを切り裂いた。




