針酷
何とか年内に前半が終わりました。
それでは良いお年を。
5月2日 異界
反応があったところに近付いていく程、何かが燃えたような変な臭いが強くなっていくいく。誰かが倒れているのが見え、警戒しながら接近していくと、英雄君を庇い背中を黒こげにして倒れているヒーローが居た。敵の姿は見当たらず、反応もない。キーに索敵を頼み、二人に近付く。
「大丈夫か。2人とも。」
英雄君に外傷は見当たらないが、ジャスティスは酷い。
「守って…る。私は…」
さらに意識もはっきりしていない。キーに頼んで部屋に転送してもらった。
同日 自宅内
自室の中にキーが作った異界のメディカルルームでジャスティスを回復させる。英雄君は布団に寝せていたが、程なく目を覚ました。
「うっ、あいつは。」
きょろきょろと辺りを見渡し、俺と目が合った。
「師匠の兄ちゃん、ここは、ジャスティスホワイトは。」
「落ち着け、ここは俺の家でジャスティスも無事だよ。ヒーローは忙しいから他の人を助けに行ったよ。」
ほっとしたように見えたので、何があったのか聞いてみた。
「お使いをしていたら、おじさんが声をかけてきたんだ。地図を見せながら東条コーポレーションに行くにはどうしたらいいかって。道を教えてあげようとしたら、捕まって。そしたら、急に白いところに連れて行かれたんだ。」
思い出して恐がってるのか、手が布団の端を強く握って震えている。どうしよう、家に連れ帰ったほうが良いのか、ここで守ったほうが良いのかな。
「そうか、分かったよ。それよりどうする、お使いの途中みたいだけど。手伝ってあげようか。」
「うん。お願い。着いてきてください。」
英雄君は頭をちょこんと下げて答えてくれた。
キーにジャスティスを頼み、二人で家を出る。家を出て歩いていると、続きを話してくれた。
「それでね、助けを呼んだらジャスティスホワイトが来てくれたんだ。僕を捕まえた男は、カエルとトラの顔のクモ男に渡した後どこかに行っちゃったんだけど、クモの糸で捕まって逃げられなくて。最初はジャスティスホワイトが勝ってたんだけど、クモ男が僕を助けたかったら、攻撃するなって言って。ジャスティスホワイトは何度も倒されても立って、僕を助けてくれたんだ。でも、助けた後、トラの顔に変わって火を出してきて、そこからは分からないや。」
頑張ったなと言って英雄君の頭をポンポンと撫でた。
途中スーパーに寄り、お使いの品を購入して帰っていると英雄君が、船を漕ぎだした。
「英雄君、もしかして眠いのかい。」
「ちょっと…だけ」
フラフラし始めたので、英雄君の前でしゃがむ。
「ほら、乗りな。後、正義は英雄君の家を知ってるかい。」
「うん。」
そう言って英雄君が背中に乗ってきた。しばらく歩いていると後ろから寝息が聞こえてきた。家で匿って居た方が良かったかなと思いつつ、正義に電話をかけ英雄君の家の場所を聞きそこへ向かう。
言われたところへ向かっていると、二人の男女が右往左往していた。英雄君の家の方向だったので、近付いていくと英雄君の両親を名乗った。
「ありがとうございます。もしかして、貴方が義くんですか。」
正義の友達で創志と言いますと答えて、英雄君を起こす。英雄君がお父さんと言ったのを聞いて英雄君とお使いの荷物を渡した。
「すみません。変なおじさんに声をかけられたそうだったんで、試すような真似をして申し訳ありませんでした。」
「本当なの、英ちゃん。怪我はない。」
母親の方が心配そうに顔を覗き込むと、
「怪我なんて無いよ、それより恥かしいよ。」
と英雄君が呟いた。
その後、英雄一家と別れて家に帰ることにした。御礼をさせて欲しいと何度も言われたが、家のジャスティスが気になったので、約束があるのでと言って断った。そしたら、後で向こうがお菓子を持ってくることで話は納まった。あったかい家族だったなと思いつつキーに連絡を取る。
「狙われる可能性がまだあるかもしれないから、マークしておいてくれ。」
『もうやっていますよ。それより、ジャスティスが回復し、外に出たいといっています。私が話を聞いておきましょうか。』
頼むと言って電話を切った。
5月5日 午前9時半前 駅前
ここ2日は学校の課題を済ませていた。たいした内容ではないが、量が半端じゃなかった。まあ昨日の昼には終わらせたけれど。
そういえば、ジャスティスを襲ったやつの目的は分からなかった。ただ、英雄君を人質に取った時に何かを埋め込まれたらしいけど、キーの検査では何も反応が見つからなかったらしい。止めを刺せるのに刺さなかったから、倒すことが目的じゃないと思うが何だったんだろう。
腕時計を確認すると37分を指していたので、改札を見るとちょうど改札口から人が溢れてきた。人ごみから奏が出てきて、探している様だったのでこちらから声をかける。
「待った。」
「いや、ちょうど来たとこだ。」
「そこは、奏のために少し早くから待ってたって言わないと。」
「そんな冗談はどうでも良いから、どこに行きたいんだ。」
笑顔で斬り捨て、目的を聞く。
「はぁ、もっと服に似合ってるねとか、今日の髪型いつもより良いねとかないの。」
ちょっとふくれて噛み付かれたが、苦笑いで誤魔化す。
「ふくれてたらせっかくの雰囲気が台無しだぞ。」
「もう。」
そう言って二人で駅内のショッピングモールに繰り出した。
服を見に行くと思いきや、連れて行かれたのはモール内の映画館だった。朝早いからかまだ余裕がありそうだが、何をみるんだろうか。上映されているのは、少年探偵のアニメ・恋愛物が洋画2本、邦画1本・アクションも邦画洋画どちらも1本か、コメディも1本ある。
「奏、何見たいの。」
恐らく恋愛物だと思いつつ聞いてみる。
「これだよ。」
指差された先を見ると、案の定恋愛物だった。題名は、『近くて遠いあなたへ』……洋画のカーアクションが凄く気になるが、今これが見たいとは言えない。
後で見に行こうと決め、奏にお金を渡しチケットを頼み、そのままポップコーンとチュロス、ジュースを2人分購入し合流する。
「ありがとう、創志…兄さん。」
「ジュースはオレンジで良かったよな。」
いつも通りのオレンジで良かったようなので、そのまま席まで持っていく。後ろの隅の方の席に座り、トレーを渡す。
「それで、どんな映画なの。」
「見てのお楽しみだから、絶対寝ちゃ駄目だからね。」
正直眠ってしまいそうだ。釘を刺されたし、少しは頑張ろうと決め、後少しの上映時間を待った。
映画を見終わって、モヤモヤしながら映画館から出た。所詮フィクションだからだろうか、何でああまで綺麗に終えれることが出来るんだろう。好意に気付かず鈍感にしてればいいのだろうか。
「創志…兄さん、面白くなかった。」
「いや、うらやましいなと思って。」
「君塚君が。」
「主人公じゃないよ、ほらライバルにしろ幼馴染にしろ皆納得してただろ。ああいう風になるのが羨ましいなって、現実じゃ簡単には割り切れないし、スパッと諦めたり出来ないだろ。」
「変に考えすぎだよ。それよりお昼にしよ。」
それもそうだ、何で変に深く考えてたんだろ。横からかすかに聞こえた腹の音を聞こえなかった振りをしてフードコートに向かった。
フードコートで、全国チェーンのハンバーガーを食べて服を見に行く。
「ねぇ、似合うかな。」
ご飯を食べて早1時間、ファッションショーとはいかないが、それっぽいことを続けられている。おざなりに返事をすると後が面倒になるのは分かっているので、律儀にコメントを返す。候補を絞ったのなら、レジに持っていってくれ、全部買うから。ここで、迷い続けるくらいなら家でやってほしい。
正直飽きているので、別の所に行きたい。体を動かしたいと思っていたら、見透かされたのかつまらないのかと尋ねられた。
「いや、そんなことはない。それより、候補は選んだんだろ。2着でも3着でも良いからさっさと買おう。」
「絶対飽きてるでしょ。無駄遣いはいけないし、それに、1着に絞るのも楽しいんだよ。」
「そうかならはやく決めてくれ。一応、俺はそっちの水色の方が良いと思うよ。」
「どこが。」
「…何となくだ。」
服にそう詳しくないし、本当に何となく似合うと思っただけだから何も言えないので、言い切ってそっぽを向く。これ以上聞かないでくれオーラが通じたのだろうか、奏は水色の落ち着いた感じのワンピース?をレジに持っていった。服代は自分のお小遣いから払ってくれた。
「次どこ行くんだ。」
勿論荷物を持って聞く。
「次は小物を見に行こう。」
また長くなりそうな所だな。小物のショップに行く途中で携帯に着信があった。
ポケットから出し相手を確認すると、正義からだった。
「奏、悪いな。ちょっと、電話する。もしもし、どうした。」
「創志さん、今どこにいますか。」
「駅近くのショッピングモールだけど、何かあったのか。」
「ヒーローが黒くなって、英雄を攫って行ったんです。そして、俺に創志さんを呼べって。お願いします。英雄を…助けてください。」
「マジか、分かった。何とかしてやる。安心しろ。」
そう言って切り、キーを呼び出す。
「キー、ジャスティスに変化があったのか。」
『反応はありませ…そんな、汚染度0とC級を行き来しています。異界もジャスティスのゾーンとずれています。こんな反応今まで無かったのに。』
どうなってるんだ。
「奏、急用が入った。埋め合わせは必ずするから、今日はここまでだ。本当にすまない。」
持っていた荷物を急いで渡し、出口に向かう。後ろから急に何なのと聞こえてきたが、答える余裕なく走り抜ける。モールから出ると、人が少ない方へ少ない方へと駆け、路地に入る。
「キー、転送頼む。」
同日 異界
飛ばされて来た異界は、針山地獄の緩衝地帯の様な場所で、その真ん中にジャスティスが立っていた。奥の針に英雄君が括り付けられている。近付いていくと、ジャスティスの白タイツに斑点が出来ていて、大きくなったり小さくなったりを繰り返していて、生き物のようだった。ジャスティスもこちらに気付いたようだ。バイザー越しの青い目が弱弱しく光り、点滅が消え倒れた。
「ジャスティス、大丈夫か。」
急いで近付こうとすると、ジャスティスに止められた。
「恥ずかしながら、敵の手に落ちたようだ。私を斬りあの少年を助けてくれ。もう…意識が…保て…ウウッ」
ジャスティスを覆う斑点が大きくなり繋がっていく、白が灰に染められていく。
「ガアッ、ガガッ、グルルルルルッ」
マントが裂け、蝙蝠の羽が生えていく。バイザーが割れ、顎を形成していく。
「ガアアアアアアアアアアアアアッ」
体が二回り大きくなった。
協力できると思ったら、これか。たぶん、襲われた時に何かをされたんだと思う。敵は他に居るようだが、ジャスティス、今は君を倒そう。
「Style change Hero CODE seeker 」
「ガアアアッ」
羽をはばたかせ、赤い目を爛爛と光らせ迫って来るが、それに合わせて大剣を掬い上げる。敵は紙一重で上昇しかわし、踵を落としてきた。俺は振り抜きそのまま回転して避け、逆袈裟に振り下ろし切る。大剣は何の映像も見せず、灰竜を浅く切り裂いた。剣が地面に触れる前に、小太刀に替え肉薄し連続で斬り付ける。小太刀は何本も召喚できるので、途中羽に投げ傷付けていく。
敵の攻撃は散漫で、大振りの攻撃しか来ない。敵が1度攻撃してくると、こっちは3回程攻撃を入れることが出来る。敵はもうボロボロなのだがそれでも倒れない。敵の攻撃はさらに粗くなっていく。大振りの右ストレートを掻い潜り懐に入り刀を召喚する。刀を抜きながら、相手の体に当て自分の体重を乗せながら振り切る。
灰竜は、ふらつき後退して倒れた。体を覆う灰色が退いていき、いつもの白タイツに戻っていく。
「キー、作戦は成功か。」
『はい、やはり刀で攻撃すると、汚染度が減退していきました。ジャスティスの汚染度は0になりましたが、どうしますか。』
「戻ったなら、良いよ。これからも手伝って欲しいし。それより、英雄君を助けよう。」
縄を解きに英雄君の下へ行くと、警告音が鳴った。
『ジャスティスが。』
後ろのジャスティスを確認すると、太い針が腹を貫通している。
「今度はそう簡単にはいかないぞ、神郷創志。」
針山の上の方から声を掛けられ、相手の方を向いたが顔は確認できなかった。
「お前は、誰だ。」
「答えても良いが、今そんな場合じゃないだろ。」
指差された方を見ると、黒タイツになったジャスティスが、衝撃波付きの拳を振るおうとしていた。
「さあ、第2ラウンド開始だ。」
半身になり、英雄君を奥に隠すように身構えて耐える。一撃を耐え、小太刀を投げ牽制し、英雄君を転送させようとするが、転送させることが出来なかった。仕方なく、怪我しないように寝かせ、戦闘区域を移す。キーには転送できるようになった瞬間に飛ばすよう常に準備させておく。
「ワレワセイギノシシャジャスティスホワイト…セイギノタメマイル」
完全に棒読みでジャスティスはブツブツと言っている。灰竜の時よりは柔らかいが、まだ直線的で読みやすい。針山の謎の男を気にしながらもまだ戦える。
刀で傷つけるたび白さを取り戻していくが、じきにまた黒く染まっていく。
「ジャスティス、あんたの正義はこんなに脆かったのか。自分の言ったことくらい守り通して見せてくれよ。」
「ウウッ…」
「キー、染めるための核みたいなものは見つからないのか。」
『探していますが、反応が……ありました。反応は…あの者です。あの者が核を操っているようです。』
「了解。」
刀を槍に替え大振り振り回す。ジャスティスは後退してかわすが、そのまま謎の男の方を向き槍を投げる。
「なっ。」
しかし、急いで槍を消す。どうしてこんな所に、あいつが攫ってきたのか。迫って来る槍に気付いて伏せた奏に男が近付いていく。見えなかった男の顔が見えてきた。虎だ、虎の顔をしている。横に蛙か蛇の顔と人の顔を持っていて、腰から下が蜘蛛の様になっていた。
「はあ、正義の味方では倒せないか。でも、神郷、こうなったら分かるだろう。刀を捨て、変身を解け。」糸で奏を拘束しながら語りかけてきた。
「えっ、創君。」
変身を解いて、睨みつける。
「おー恐い。そんな生意気な眼で睨まれたら間違って絞めるかもしれねぇ。」
「やった瞬間お前の命はないと思え。」
飛び足したい気持ちをどうにか抑え、声を震わせながら宣言する。
「冗談が通じないな、全く。とにかく、こっちには2人人質が居る。そこに転がってる小学生と、君の妹、どちらも助けたいんだろ。正直俺はお前を殺したいんだが、そうするとあいつの目的が果たせないし、俺が消されるから出来ないんだよ。正直言うと、この妹さんを堕として駒にしたほうが面白そうだったんだけど、それやると俺が死ぬらしいからな。でも、事故ならしょうがないよな。死ねよ、神郷創志。」
スタイルを死神に替えれば、一撃でやれるだろうか。他にも隠れてたりはしないか。それにやつは何か知っているようなのでどうしようかと考えていると、横を暴風が通り過ぎていった。
「悪ヲセンメツスル。」
今さっき横を通り過ぎて行ったジャスティスがいつの間にか戻ってきていて、後ろを取られた。ジャスティスの大振り右フックを、左に転がって避ける。遠距離攻撃に移らないように距離に気を付けながら回避を続ける。
「神郷、元気がなくなったねぇ。」
「創君、私の事は良いから戦って。」
虎蜘蛛男はこっちに攻撃する気は今のところ無さそうだが、
「てめぇは黙ってろ。」
奏を足蹴にしているところが視界に入った。
殺してやろうと思って、虎蜘蛛男に向かおうとしてしまった。背中に衝撃を受けたと思ったら、地面を転がされていた。受身を綺麗に取れず強打した左肩が痛い。ふらふらしながらよろよろ立ち上がると、構えているジャスティスと視線があった気がする。
禍々しい形に変わったヘルムから、無慈悲な赤い光が漏れる。
「センドトゥサン!」
赤い線を棚引かせながら黒いヒーローがやって来たと思いガードを固めると、消えた。
が、
腹に突き刺さるような感覚があった。まさかと覗くと、かなり低い体勢から左アッパー気味のパンチを繰り出している。さらに、突き刺さった左が捻られて、指が見えたと思うと第2波が来た。アバラに引っかけられるように跳ね上げられると、腹・顔と痛みが走り、自分の体は簡単に宙を舞った。
ねじられる拳を掴む間もなく打ち上げられると、「ジャスティススクリュー」と近付く声が聞こえた。顔を横から打たれ、荒地と曇天が交互に見て、針山を壊しつつ地に落ちた。
「創君、逃げて。」
奏の声がかすかに聞こえてくる。立とうとするも体が、言うことを聞いてくれない。それでも、敵になったヒーローが近付いてくるのは、分かる。ジャスティスが構え、もう駄目だと思ったとき、間に小さな影が割り込んできた。
「師匠の兄ちゃんは悪い人じゃない。ジャスティスホワイトは正義のヒーローなんでしょ。どうしてこんなことをするのさ。」
英雄君が両手を精一杯広げて、訴えていた。駄目だ、今のジャスティスは正常じゃない、逃げろ。声が出ず、伝えられない。それでもどかしい思いをしていると、そんな俺達をあざ笑うかのように、虎蜘蛛男がしゃしゃり出で来た。
「ジャスティス、悪を助けるものは悪だ。悪は殲滅しないとな。」
「殲滅、悪ハタオサナケレバ…ナラナイ」
「違う、正義の味方は弱い者を助けるのが仕事なんだ。どうしても倒さないといけない時にしか、倒しちゃいけないんだ。」
「正義ト…ハ、正義とは…」
ジャスティスの動きが一旦止まる。その隙に這って英雄君に近付く。
「ジャスティス、何を戸惑っている。正義の鉄槌を下せ。」
「グウゥッ、うああああああああぁっ。」
ジャスティスの拳に黒い光が収束していく。英雄君を後ろへ引っ張り自分の懐に隠し、スタイル:ヒーローを起動した。轟音が鳴り響いたが、痛みは襲ってこなかった。ただ、砂埃の中小さな破片が飛んでくるぐらいだった。
「キー何が起こった。」
『ジャスティスが意図的に攻撃を外したようです。今彼の汚染度は0で、チャンスです。』
「Style change Death 」
英雄君を抱いたまま、虎蜘蛛男の下へ向かい、体当たりで針山に突き飛ばす。男は山を壊しながら飛んで行き、二つ目の山で止まったようだ。急いで奏を縛っている糸を切る。そのまま2人を担いで離れたかったが、足が思うように動かず倒れてしまった。
「すまないが、2人ともこのまま走って離れろ。」
「創君を置いていくなんて出来ないよ。」「そうだよ。師匠の兄ちゃん。」
「良いから、ジャスティスが来てるんだ、早く行け。」
黒いジャスティスが、近付いてくる。
動け、動け、動け、動け、動け、動いてくれ。敵が来ているんだ。守る力を俺に…
「少年達、後はこの私、ジャスティスホワイトに任せてくれ。君達の想いが、私を戻してくれた。そして、私の主たる根源、英雄君。君の守り、救う正義を私が一部体現しよう。創志君、君の剣を貸してくれないか。」
膝を突き英雄君に合わせて話すジャスティスは、理性が戻っていて、眼の所の光も穏やかな青に戻っていた。
『汚染度0になっています。創、どうしますか。』
スタイルをサムライに戻し、刀を呼び出す。
ジャスティスは礼を言って刀を取ると、自分の腹に突き立てると、眩い光が辺りを覆った。そして、光が収まるとそこには、純白の鎧に金と白金の肩当をし、薄い白桃色のマントをなびかせるジャスティスが立っていた。
「パワーアップってか、それでもこの狂化針の前じゃそんなもの関係ねぇ。早く後ろのやつらをやれ。」
虎蜘蛛男が、がなりたてながら戻ってきた。
「救いを求める者を照らす光の戦士ジャスティスホワイト・セイバーモード見参」
「何、作動しないだと。ちっ、ならまとめて焼き尽くしてやるよ。」
虎蜘蛛男の虎の面が大口を開けた。
「3人に傷など付けさせん。悪しき者よ、どうか退いてくれないか。そうでなくては、君は怪我をすることになる。」
サムズアップしながら、虎蜘蛛男に語りかける。
「死ね。」男はジャスティスに向かって火を噴いたが、火はジャスティスを避けるように分かれていくが、向こうは気付いているのだろうか。
ジャスティスが手を広げると、少し大きい十手が現れた。しっかりと握り、悠然と進んでいく。そして、高く掲げて、振り下ろすと神鳴りが虎蜘蛛男を襲った。
「ガ八ッ、雷だと…」
所々焦げた部分をさすりながら、男がよろよろと出てきた。ジャスティスは十手を向けて警戒している。
「時間だと、これからだというのに。神郷、次に会った時はこう上手く行くと思うなよ。」
どこからか聞こえた電子音に反応し、男は去っていった。
「悪の道から救うことは出来なかったか。」
ジャスティスが寂しそうに呟く声が聞こえた。
「「ありがとうございます」」
ジャスティスに奏と英雄君がお礼を言っていた。
「師匠の兄ちゃんもありがとうね。」
「ああ。」
2人が無事で本当に良かった。
そして事が終わったからか、緊張の糸が切れたのか凄く眠い。
『転送が出来るようになっています。送りますね。』
キーの声がして英雄君は自宅、残りは俺の家に転送された。
「奏、後で説明するから、正義、このアドレスに英雄は助かったとメール送っといてくれ。」
そう言って、キーが作った異界のメディカルルームの扉を開けると、驚いた声が聞こえた気がしたが今はただ眠りたいので、気にせず部屋に入った。
「キー、説明は頼んだ。」
携帯が着信を知らせていたが、無視してそのまま休むことにした。




