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エピローグ 亀裂  プロローグ 眩しい後輩

胸糞悪くなるかもしれません。

4月27日 午前3時 護送船ラウンジ


 他に手は無かったのだろうか。考えれば考えるほど【殺すしかなかった】に行き着いて嫌だ。キーは心配してくれてはいるが、自分の気持ちの整理だからもう少しかかると思う。鎌も銃も使いたくないな。

整理がつかない中途半端な気持ちでラウンジの扉を開ける。


 ラウンジに入ると、顔は見たことがあるけれど名前は知らない同級生に胸倉を掴まれ、壁に押し当てられた。周りを見ると、誰も止めに入らないようだ。キャプテンやメグも何か言いたそうだが、こちらをちらちら見るばかりだ。

「どうして、あんなことをしたんだ。」

胸倉を掴んだ男子生徒が、激しく前後に揺さぶりながら尋ねてくる。


 おそらく早乙女を殺したことを聞いているのだと思ってそんなつもりは無かった答えた。

「力は正しく使わなければいけないんだ。それだけの力を持ちながら、何故助けようと思わなかった。何故あそこまで酷なことをしたんだ。」

助けようと思わなかっただと。


「強きものは弱きものを助けなければいけないのだ。力に溺れ、いたぶるとはヒーローとは言えない。君にここで戦う資格などない。」

言いたい事だけを言いやがって。そんなこと自分がよく分かってる。助けられず、原因になった奴に八つ当たり。どうしようもないな。


「どうだ、何とか言ったらどうなんだ。君は早乙女さんを殺したんだ。どう責任を取るんだ。」

責任ってなんだ。家族に謝ればいいのか。どうやったら良いんだ。戻ってこない以上どうしろというんだ。誰か教えてくれないかと見回す。俺を見る目が、恐がっていたり、見たくないものを見る目だった。


「待ってくれ、神郷は私を助けてくれたんだ。早乙女の時はそれが出来なかったんじゃないのか。そうじゃないのか、神郷」

紅先輩が懇願気味に尋ねてきた。

「そうです。早乙女は剥がすことが出来ませんでした。」

紅先輩を見ず、俯いて答えた。

「それだ、紅先輩は助けたのに、何故早乙女さんは助けなかった。術があるなら、どんなに険しくても行い助けるべきだ。」

「落ち着け、東条。神郷、お前はあの時暴走…いや、制御出来てなかったんじゃないのか。」

「先輩、そんなことは理由にならない。どのような理由があれど、結果こいつは早乙女さんを殺したんだ。おい、何とか言ったらどうなんだ。」

もう一度、引き付けられる。

「俺がお前なら、早乙女は絶対助けられたよ。」

東条と呼ばれた男を突き飛ばして殴る。

「お前に、お前なんかに何が分かる。」


 それから何も話さず出口へ向かう。通り道に居たメグはひぃとか言って、道を空けた。扉に手をかけた時後ろからドアが開く音がした。

「おっ、創志サンキューな。遅れたけど戻ってこれたぜ。っておい創志ー」

最後まで聞かずに外に出た。



4月27日 午前5時 護送船ラウンジ


刺々しい声と、幼い声が誰も居ない暗いラウンジに響く。

『マヤ、どういうつもりなのですか。彼の体を強制的に使役するとは条約に違反しますよ。』

ディスプレイの右側の青い鍵のアイコンを高速回転させながらキーが話す。


「はははっ、条約とは、結ばないと効果を発揮しないんだぞ。こんな辺鄙な星と連盟は結んでないから関係ないのだ。」

反対側のデフォルメされた少女が鍵に返す。


『そうだとしても、倫理的に問題が有るのです。それに貴方は、核の早乙女さんをいたぶる所を、先に退避させたメンバーに見せ付け糾弾させるとは、何を考えているのですか。』

強い口調でキーはマヤに問う。


「この戦いを続けるとこうなる、と教えておきたかっただけだぞ。糾弾は東条が勝手にやってしまったのだ。マヤのせいではないぞ。」


『簡単に予期出来たはずです。何故彼を追い詰める真似をするのですか。』


「分からないのか。分からないだろうな。シルキー、お前には。」

声の温度が一気に下がった。

「お前は、先の戦いで早々にやられたからな。終盤まで最前線で戦い、戦いの終結まで見届けたのはこのマヤを含めて、5人だ。本当の地獄を見ずに、のほほんと後方で、負傷兵のサポートとして復活したプログラムに言われたくないぞ。」


『それでも、この星の生命には関係ないはずです。』


「何を言うのか。このポンコツは。最後の戦いで幾つの星が消えたと思っている。あの悪夢が蘇ろうとしているのだ。どんな手を使っても止めなければいけないだろう。それに、連盟からの返答がこないのだ。我々が手持ちの駒で何とかするしかないのだぞ。」


『彼らは協力者であって、駒ではありません。マヤ、あの優しかった貴方は何処へ行ったのですか。』

悲痛な声が虚しく聞こえる。


「奇麗事では救えないのだ。それに奴は、Last(ラスト)シリーズだけでなく、魔離無(まりむ)のような効果を持つ片刃の剣、そして、核を唯一傷つけることが出来るEnd(エンド)の能力を持つスタイルを自力で発現させたのだぞ。ここではあの博士(テロリスト)しかいないと思っていたのに。3つとも使用可能とは、使わない手はないだろう。」

興奮気味にキーに語る。


『なら何故、協力を頼まないのですか。』


「シルキー、知らないとは言わせないぞ。LastやEndの使い手がどうなったか。だから、早々に壊して我々の完全な駒にする必要があるのだ。まだまだ、布石だ。あいつに、この力は身に余るものと知覚させ、我々がやつの体を動かし連盟を、いや、この世界を救うのだ。」


『マヤ、貴方の考えには賛同できません。彼は協力者です。私は彼と協力してこの件をブレイクします。』


「シルキー、お前…あいつの面影でも見てるのか。そんなことじゃ誰も救えないぞ。」


『もう貴方と話すことは無さそうですね。』

中央のディスプレイの片側に、接続完全解除の文字が現れた。


「あいつが守った世界なんだ。任された世界を守るためにはマヤは何だってするぞ。」

誰も居ないラウンジに重々しくその宣言がなされた。






同日 ???


「嫉妬のデータは取れたけれど、回収は出来なかったか。」

髪の毛ぼさぼさの男が苦笑いしながら告げると、身なりがきっちりした男が答える。


「さほど問題にはならん。第一嫉妬なぞ彼女にはふさわしくないからな。それよりデータは送っておけよ。」

そう言い残し男は部屋から出て行った。





同日 午前4時30分 神郷自宅前


 キーは寝たのかな。反応がなくなったし、1人になりたくて携帯を家において外に出た。

「あれ、創志さんじゃないっすか。俺です。正義(まさよし)です。ここが創志さんのいえなんですね。」

自転車に乗った新聞配達員が声をかけてきた。

「分かりませんか。ほら、二年前にお世話になった金髪の中坊が俺ですよ。」


中3の一時期一緒にいた1つ年下のまっすぐな奴だ。

「そうだ、創志さん、あの相談があるんです。昔みたいに聞いて貰って良いですか。平日の午後5時位に虎西公園にいつも居るので、時間があるときで良いんでお願いします。」

深々と礼をされて、人から見られたら恥かしいな。


「相談ってどんなことなの。」

疑問に思って聞いてみた。

「昔創志さんに、俺がしてもらったことを、今度は俺がする立場になったので…出来てるか見て欲しいんです。」

「…普通にジムに言ってもらったほうが良いと思うぞ。」

「あいつらは、そんなとこいけないんです。創志さん、いじめられてるあいつらを助けたいんです。時間があったら良いんで、どうかよろしくお願いします。あっ、時間が、すみません。配達の続きがあるんで。」

そういうと、自転車に乗り正義は残りの配達を始めた。遠ざかっていく後姿が、格好良く、眩しく見えた。朝日が作った俺の影は他のものより酷く濁って見えた。

一章が一応終了しました。ありがとうございます。

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