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降臨と終結

鬱展開は最後までありませんでした。申し訳ないです。

後半にスプラッター要素が含まれてます。注意してください。

 白い霧の中で両目が潰れた(リヴァイアサン)が、こちらを向いている。俺の白いコートが保護色になっているはずなのに、どれだけ動いても感付かれる。蹴斗に簡単には近付けそうにないな。蹴斗を囲む檻を常に背の方へ隠し、氷塊を飛ばしてきて、なんとかかわして近づいても尾を繰り出してくるので檻に触れられない。この攻防も、もう4度目になり、使える建物が減っていってジリ貧だ。


『今のスタイル、ヒーローならサムライの刀も使えるはずです。何とか掻い潜って檻を切れば、檻を壊せます。刀は念じれば直前で手元に出せます。大剣で受け流しながら接近してください。』


正直、大剣は呪いの武器らしいからあまり使いたくないけれど、この際我慢する。再度迫り来る氷塊をギリギリまで引き付け、床を壊して下に降り、建物の二階の窓から建物を挟んで裏に出る。水が引いたと言っても腰まであるので動きずらい。


 通りに出たところでもう見つかってしまい、氷塊を飛ばされる。右足を軸に回転させ大剣をぶつけ、反動を利用して左へ倒れこみながら避ける。スタイルをサムライ・アサシンに変えて敵に突っ込もうとすると、足元の水が消え、辺りの霧が晴れている。


『霧や水は魔法で作られていたようですね。貴方の刀の性質なら無にできそうですね。』


『それで隠れたつもりか、神郷。私の魔力空間に穴が空いてるんだ。そこを狙えば問題はないんだよ。』

龍の無駄にでかい声が響く。


 竜が氷塊を発射した途端に加速し回避する。左から尾が近くの建物ごとなぎ払にきていたので、塀、屋根へとジャンプしていき尾をかわし、転がりながら受身を取って檻へ近付く。伸ばした刃先が檻に触れると、パリンと言う音とともに檻が砕け、蹴斗解放に成功した。


 しかし、蹴斗がその場から離れようとすると、辺りの水が姿を変えて襲い掛かっていく。棒とかした水が体を掠るか掠らないかで再度檻を形成し、粘性を持つ水が隙間を覆っていき再度捕まってしまう。俺が針や槍を形取る水から逃げ、距離を取った瞬間のことだった。蹴斗が龍の近くに移動させられていく。


 また、やり直しかと思っていると、龍がまた話してきた。

『私の蹴斗を奪うつもりか、神郷。そんなことはさせない。』

蹴斗を大量の水が覆っていき球になったが、水球は小さくなっていく。そして、そのまま消えてしまった。

『蹴斗は、別階層で待ってもらうことにしたよ。それより、お前の能力にはある程度の制限があるようだな。制限量(リミット)オーバーの魔力をぶつけても良いが…やっぱり噛み殺してやるよ。』


 どうしよう。1人になってしまった。新たなスタイルが目覚めてくれることに期待しよう。

「Style change Hero CODE seeker 」

刀を呼び出し地面に深く突き立てると、周り20m程の水と霧がなくなった。どうか、救う道が見つかるように、そう思って刀の前に立ち大剣を下段に構える。


『気合を入れて結界でも張ったのか。その程度の範囲で防げるとでも本当に思っているのか。フン』

龍は尻尾の先でなぎ払いに来た。


 尾が当る瞬間、大剣の背を押し、押し当てる。ぶつかる衝撃を感じる前に、ジャンプまでして右手をさらに押しあげる。そのまま撥ねられ転がる様に尾を移動する。刃が龍に触れるたびに、殺してと声がする。


 転がる勢いが弱まると、剣を突き立て立ち上がる。頭によぎる映像を無視し、尾を駆け登って行く。途中何度も振り落とされそうになったけれど、うまく進んでいく。

 さらに進んでいくと尾の先端が襲い掛かってきたので、剣で斬り上げ弾く。すると、足場にしていた尾が急に沈み宙を舞い、弾いた尾に薙ぎ飛ばされた。飛ばされた先に刀を呼び、突き立てる。迫り来る氷塊が、シュウウと音を立てて消える。


『小ざかしい。波に飲まれ消えろ。』

大波が迫り来るが、見えない壁に阻まれるように、水は襲い掛かってこない。苛立ったのか、龍が直接突っ込んできた。大きく開かれた口が徐々に近付いてくる。


 左にかわしながら、体を回転させる。剣を全力で歯にぶち当てるも、龍はそのまま通り過ぎていく。首もとの毛が通ると、右側の前鰭が迫って来る。剣を突き立てられるように構え、待つ。剣は容易に深く刺さると、景色が変わって教会のような場所に変わった。





 十字架の前に女の人が立っている。近付いていくと、包帯が腕や顔を覆っていることが分かった。

「神郷君、待っていました。さあ、私を殺してください。」

両手を広げて、貫いてくれと言わんばかりに胸を突き出してくる。

「早乙女なのか。」

自分の声が震えているのが分かる。

「はい、私は早乙女瑠璃です。嫉妬の炎に焼かれてこんな姿になってしまいましたが。」

彼女は感情を殺したように、淡々と話していく。

「私の魂は、リリスいえ、今はリヴァイアサンでしたね。それにどんどん削られ、残り少なくなってます。どうか、私が私で居られるうちに殺してもらえませんか。我儘だとは分かっています。それでも私は自殺は出来ないのです。」


 立ち上がり燭台のほうへ向かい蝋燭を外し、首に突き刺そうとすると鎖が出現し、彼女の腕を止める。

「私は死ぬことも出来ず、私のエゴで蹴斗君達を傷付いていくのを見ていくしかありませんでした。私の魂も後少し、もうどうにもならないことは自分でも分かっています。私から生まれたあの悪魔(リヴァイアサン)が完成する前に、どうか終止符を打ってください。」

表情は読み取れないが、とても悲痛だと感じた。自分を捨ててまで蹴斗を助けようとしている。こんな人を殺したくない。

「本当に…本当に、手はないのか。」


『人として生きることは、無理でしょう。』

キーの声が無常にも響く。


『…ただ、一部のプログラムとして魂を焼き付ければ私のように活動は可能です。貴方が望めば可能性は0ではありませんが、どうしますか。』


「誰か分からないけれど、提案ありがとうございます。それでも、私はそれを選びません。」

早乙女ははっきりと拒絶した。

「どうして、助かるかもしれないのに。」

「壊れかけの私の魂で、器を変えるのは難しいだろうし、私は人として終わりたい。お願い神郷君、私を…私を…どうか…止めてくれませんか。」

声が途切れるようになって、声がだんだん湿っぽくなっていくと、顔を見れなくなって俯いた。剣を掴む右手の手首を無意味に、左手で力いっぱい握り締める。無力な、無力な自分が嫌だ。どうか、どうか救う手立てを俺に下さい。彼女は死ぬべきじゃない。



『新たなスタイルが発現しました。しかし、これは……』


キーの声が聞こえるとともに、確認する。希望が、首の皮一枚で繋がった。助けられるかもしれない。そう思って、スタイルの確認画面を開く。





「なんだ……これ。なんだよ……Deathって、死って…ははっ」

乾いた笑いしかでない。最後の最後でこれかよ。殺すしかないって事か。俺じゃあ、救世主なんかにはなれないのか。

「…ぉ君、神郷創志君。死とは再生への始まりなんですよ。私がこの苦しみから解放され、生まれ変わるには、魂が必要なんです。だから、どうか私を魂がなくなる前に死へと導いてくれませんか。」

早乙女に手を取られ、目を見つめられ告げられる。目を背けたかったが、強い視線から逃げられなかった。


 導くか…ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ楽になったよ。分かった。早乙女さんが望むようにする。スタイルを替えようとすると、足元が裂け早乙女さんと分断された。向こうで早乙女さんが叫んでいる。

「もう長く持ちません。もう一度ここへ、早く戻ってきてください。」

俺は強く頷いて、龍の元へ戻った。


 竜が上体を起こした勢いで、剣が鰭から離れ、上空へ投げ出されたようだ。下を見ると龍が顎を広げて待っている。咬まれないように注意し、体を捻りながら口内へと侵入する。咽の中でも剣を振り回せる位広い。入って3秒ほどした所で剣を突きたてる。龍の絶叫で体がビリビリ震えるのを知覚しながら、早乙女の元へ行く。


 十字架の前で早乙女は待っていた。

「Style change Death CODE lead 」

覚悟を決めてスタイルを先制する。

黒い靄が足元から沸き、身を包まれていく。足が地面から浮きフワフワする。それになんかあったかい。漆黒のローブが完成し、靄は手元に集まり大鎌を創り出した。鎌からは異様な気配を感じたが、ローブの安心感で躊躇無く鎌を掴む。掴んだ瞬間震えが走ったが、やはりすぐ気にならなくなり早乙女に近付く。


 早乙女はこちらに背を向け、頭を前に突き出している。

「神郷君、お願いします。」

鎌をセットし告げる。

「準備は出来た。いつでも良い。」

「私も、いつでも良いよ。」

俺は鎌を振り下ろす。自分の体とは思えないほど綺麗な弧を描き鎌が迫って首に触れる。



「私、死ぬのね。」「蹴斗君頑張って」「G.W.は合宿ですよ。」「紅先輩、キャプテンとはうまく行きそうですか。」「良いな。天地さん。」 「夏休みには帰ってくるよ。」「また、読み終わってないのに続き買っちゃった。」「蹴斗君達が、最後の選手権で勝てるように頑張っていこう。」「恐い。」


すまない、力が無かったばっかりに。早く気付かなくて。すまない。


「隣じゃなくても良いの。蹴斗君が幸せなら。」 「私はこんなこと望んでない。」

「私が望んだのは、蹴斗君との幸せ。」「こんなのは私じゃない。」「私が私じゃなくなっていく。」

「的井君、避けて。」


ああ、ああ、ごめんなさい。無力で……


「死なないと駄目だって言うの、あれ、動けない。どうして。」「天地さん、避けて。ああ、ごめんなさい。ごめんなさい、天地さん。」「殺してください。神郷君。」「神郷君、恐がってる。」

「私が我慢しなきゃ。」「安心して、神郷君……でも、恐いな。」「騙してごめんね。…もっと、もっと一緒に居たかったな。蹴斗君。」


鎌が通り過ぎる。



 何が再生だよ。殺されるための方便かよ。どうして、それを選べたんだよ。

早乙女をみると、光りに包まれて消えていく。

「どうなっているんだ。」

『魂の解放…核に囚われた魂が、核の呪縛から解き放たれているのです。』

早乙女が消えると、片手で隠せそうな緑に,淡く光る球が浮いてきた。

『小さいですね。これでは、焼付けに耐えられなかったでしょう。おや…』

球から光りが強くなり、早乙女が現れた。

「ありがとう、神郷君。私を、人のままで居させてくれて。」

「生きたかったんだろ、何で、どうして…」

彼女は何も言わずに首を振った。

「最後に、お願いしていいかな。」

君の願いを聞かないなんて、俺には出来ない。

「まずは、蹴斗君と天地さんにごめんなさいとお幸せにって伝えてくれないかな。」

「ああ。」

「最後に、私から生まれたあの龍を消し去ってください。これは、神郷君にしか頼めないんです。どうか、よろしくお願いします。」

そう、頭を下げて頼み込んできた早乙女の願いを了承する。

すると、早乙女の姿がブレ始めた。

「神郷君、私のせいですみません。これは、形を変えた自殺です。気にする必要はありませんよ。本当にありが……」

伸ばしたては空を切り、球が崩れ去っていく。

『限界をとっくに迎えていたのですね。さあ、約束を守りに行きましょう。』

「リヴァイアサンを倒すよ。手加減する必要はもう無いんだろう。」


 教会から現実に戻ると、水が足元から迫って来ていた。水と共に吐き出すつもりなんだろう。剣と刀を交互に突き刺しダメージを与えていく。水に追いつかれてからは小太刀で迫り上がりつつ傷つける。水の色が赤く濁っていると分かると、外に出された。


『ふはははは、貴様。瑠璃を殺したな。これで、この体は私のものだ。蹴斗だけでない、全てが私の物。要らない物を壊して、私だけの世界を作れる。約束も無くなった、天地、殺してやるよ。まあ、まずはお前だ、神郷』

耳障りな声が、俺を刺激する。落下していきながら、スタイルを替える。


「Style change Death CODE …」

コードは要らない。変な付加をしなくてもいい。黒い靄が身を包み落下が止まると、すぐに眼前に取って返し、睨みつける。


『神郷、死神気取りか。まあいい。死ね。』

大波に街が飲み込まれ、雷が何本も落ちていく。風も強くなり、ローブがバタバタと音を立てて震える。風雨、波が来ようとその場に留まり、睨み続けている。


 焦れた龍が飛ばしてた尾を避けようとしたが、体はその場を動こうとしなかった。それでも、尾は当る寸前で止まっていた。

「早乙女は、魂を焼かれ削られると言った。見過ごした罰を受けようと思ったけど、お前じゃ、罰せ無いようだな。約束の為に消えてもらうぞ、駄龍。」

俺の声で、誰かが喋っている。


 そのまま、何かが武器を展開する。禍々しい大鎌4本の刃の部分が羽を見立てたように背に出現し、刀と剣が2本ずつがさらに広げたように現れた。両腰に銃が1丁づつ。槍が2本周りを回っている。その中から、大口径の黒い銃を選んで左手1本で構えたようだ。銃を握る触感は繋がっている。


『口だけのようだな。魔力が我と比べると、雀の涙ほどではないか。』

「剣旋乱舞」


そう呟くと、剣と刀が舞い、幾度も龍を斬りつけていく。

『傷が回復しないだと、何が起こっている。』

良く見ると斬ったところからは、血が出ていない。これが影響しているのだろうか。それに、俺が俺じゃない感覚はまだ続いている。


「穿て。そして喰らい無に帰せ。」

放たれた銃弾が、当ったところから大穴を開け龍を分断していく。4本の鎌のうち2本の大振りの鎌が動き出す。漆黒(くろ)く禍々しい刃が生物のように開き、分断されたところを、喰っていく。そして、落ちた首の元へ舞い降りる。


 無言で残りの2本から1本、鎌を取り出し首に向ける。そのまま、鎌を振り切る。先ほどとは違い、綺麗に切れず、鼻先に引っかかるも力付くで引き斬った。すると、龍が霧散し、少女が残った。


 体が勝手に動いて、槍を掴み少女に投擲する。槍は簡単に縫いとめてしまった。 

「リリス、お前には早乙女が受けたような痛みを体感させて消してやる。焼かれ切り刻まれると良い。」

剣を1本リリスに突き立てるとそこから、発火し火に包まれた。次に刀がゆっくり回転しながら手に近付いていく。中指から少しずつ削られていく。俺はそのおぞましい光景をただ見ているだけだった。


 これは、何か違う気がする。早乙女は消してくれと頼んだだけで、いたぶってくれとは頼まれていない。それに、頼まれたのは俺だ。こんな得体の知れない奴じゃない。約束を守るために、腰の銃に何とか手を伸ばす。

「ああ、消えたくない……死にだぐな、ああああ。」

喉が焼けたのか、リリスはもう呻き声しかげない。腕は指が全て消えていた。銃を掴み引き抜いた。


『嫌な事を、請け負ってやってたのに。それでいいんだな。』

頭の中に声が響く。

「ここまでする必要は無かっただろ。」

聞こえてくる声に、そう返す。

『何言ってるんだ。これは、俺がこうしてやりたいと思ったから、俺がやってやったんだ。』

声がそう返してくる。

「それなら、ここで辞めろ。もう望んでない。」

『そうか、なら俺はまた戻るとしよう。“俺自身”の中に。逃げたくなったら使えば良い。』


 リリスを包む業火と、切り刻む刀は消えて、リリスは這いつくばっていた。

「……うぅぅ…がぁあ……」

何を言っているのか分からないが言いたいことを、リリスに伝える。


「お前を消すのは、約束だからというのもあるが、俺の八つ当たりもある。そして、お前を消すのには、何の躊躇もないし、後悔もないよ。人じゃないんだから。ただ、お前は、早乙女から生まれたんだ。もしかすると、消えた早乙女にお前なら会えるかもしれない。だから、もし会えたら伝えろ。他でもない俺に消されたことを。」

銃口を頭に突きつける。

「……震え…る…神ざとぉ。ず…二度…れるのは…だ。」

リリスは、震えた手で銃を掴み額に固定する。

「…前は、これから…私の…存在…消して…だ……何…人死ぬん…ぁ。」

言い切るのを最後まで待っていると、キーが急かしてきた。

『早く止めを刺してください。』

キーの忠告を無視して待つ。

「呪って…る…妬…し…後に…教えて…る。人は…きない…我…は…戻って…殺…やる…郷」

「お前は塵1つ残さず消すから、安心しろ。」

「西山コー…ポ…ョンに、気を…付け…我が…えを…殺…ら」

リリスが目をつぶり言い終えたところで、引き金を引く。

轟音と共にリリスは掻き消えた。


 世界に罅が入っていく。

『核の消滅を確認。異界が消失していきます。』




間に合った。

ただ、鬱展開が続くといっていたのに入らなくてすみません。

そして、1章もあとエピローグだけかな。(多分)

2章からはまた週1更新に戻ります。何曜日に更新しよう。

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