拾われた。
私は雨がたくさん降る時期に私が嫌いな場所から逃げ出した。
気づいたら見たことのない場所にいた。
...ここはどこだろう?
一応これでもじいちゃんといろんな所に旅したことがあるのだが、ここは見覚えがない。
ガサガサ!
ビクッ!
しまった!追いつかれたか!
焦ってかまえたが出てきたのは何の変哲もないウサギだった。
ホットして脱力した。考えてみれば、私ですら分からない土地なのに、あのボンボン騎士達が来られる筈がない。
…この油断がいけなかった。
私は後ろにある崖に気づかずに足を滑らせてしまった。
「!?ひゃあ!?」
「うぅ・・・」
「!目がさめた?」
気づくと今度は見知らぬ女の子が人の目の前にいて、見知らぬ部屋にいた。
「?」
「あっ!ごめんなさい。いきなり知らない人がいたらびっくりするよね。え~っと、あなた道に倒れてたの。そこは憶えてる?」
あぁ、そっか。
崖から落ちた後、必死に助けを探そうとして力尽きたんだった。
ということは、この人が助けてくれた人なのかな?
「それで、ここは私と兄さんでやってる料理屋なんだけど、お客さんの一人があなたを見つけてここに運んだの。」
りょ、料理屋?よりによって料理屋に助けられちゃった!?さ、最悪だ...。
そう思うのには理由があるのだが、とりあえず先にお礼をすべきだ。
「助けていただいてありがとうございました。」
「いいえ、気にしなくていいわよ。それに私だけが助けた訳じゃないしね。・・・それよりも、どうして倒れてたの?」
「それは・・・旅の途中で崖から足を滑らせてしまって、何とか助けを探そうとしたんですが途中で力尽きてしまったんです。」
「そうだったの?大変だったね・・・」
...嘘は言ってない。旅っちゃ旅だ。...旅の前に”逃亡の”と付くものだけど。
不意に扉が開くと、青い髪に青い目をした男の人が入ってきた。
目の色がさっきからいるこの女の子と同じだから、きっと『兄さん』の方だろう。
「ちょっと!兄さん!ノックも無しに入って来ないでよ!」
「あ~、悪ぃ、悪ぃ。お!そいつ起きたのか。」
断言できる。全然反省してない。自分本意な行動に少しイラッとしたがこの人も私を助けてくれた人の一人だろう。
「助けていただいてありがとうございました。お陰で助かりました。」
「あ?別に気にしなくていいんだよ。それよりお前の足のことだが、医者の話だとしばらくは日常生活がギリギリ出来る程度らしいぞ。」
「!?」
怪我してたのか私。確かに足が痛い。
「お前旅人だろ?暫く旅出来ねぇけどこれから行くあてでもあんのか?」
「・・・。」
そんなものない。
とりあえず、あいつらから逃げきってから考えようと思っていたんだから。
黙っていると、女の子の方が提案を出してくれた。
「ねぇねぇ、だったらうちの店で足の怪我が治るまででもいいから働いてみない?接客も仕事なんだけどね。」
「え・・・。」
「はぁ?」
「嫌?」
「嫌ではないですけど、いいんですか?」
「いいのよ♪」
「おいタイナ。何で人雇う必要あんだよ!いらねぇだろ!」
女の子の意見にお兄さんは反対みたいだ。
「いいじゃない別に。というか兄さんは接客しないんだから黙ってて!」
「うっ・・・。」
どうやら兄さんの方が調理担当で女の子の方が接客担当をしているみたい。でも女の子一人じゃ回しきれないらしい。
「話戻すけど、やってくれる?」
「・・・私で良ければ。」
あぁ、言ってしまった...つい、女の子が大変そうでOKを出してしまった。
私は別にこの二人を嫌っている訳ではないのだが...料理屋に居たくない。だって私は...料理が嫌いなのだから。