笑いの絶えない家
価格の割りにずいぶん新しくてきれいな家だった。
以前から物件探しを依頼しておいた不動産屋から、「いい中古の一戸建てがありますよ。ご覧になりませんか」との連絡があったので、さっそく案内してもらったのだ。
なぜこんな新しい物件が売りに出ているのだろう。しかも相場よりもずっと安いみたいだし。
「この家に住んでいた人は、どういった理由でこんな新しい家を手放したんですか」
私は気になっていたことを不動産屋に質問してみた。すると彼は青白くて細い顔を意味ありげに歪めて言った。
「笑いの絶えない家がお気に召さなかったようですよ」
さっぱりワケがわからない。私は首を傾げて問いただした。
「えっ、なんで? にぎやかで楽しい暮らしがいやだったと言うのですか!」
「いえいえ、実はですね。家族が寝静まったり、誰もいない時でも、どこからともなく聞こえてくるんだそうですよ。笑い声が」
「……」