† 熟女苛め †
もう出る。もう出る。
病院から出たい私。
あの~死にたいのですが。
もちろん出してはもらえません・・・・・・。
体の自由は利かないけど、用もないのにこんな所に居るほど暇人じゃないのですけど!
「こんばんは。保健所の者ですが・・・・・・少しだけお話しいいですか?」
「は? いや、話すことなんて何もないので・・・・・・」
そうは言っても無理矢理にでも話すことに・・・・・・って『保健所』? わたくし衛生的に何か問題でもあるのかしら? なぜここで『保健所』の方々が登場したのかさっぱり理解出来ないままの私をよそに、話は進む。
「あなたをここから一人で出せません」
「いやいや、私大人ですから。そもそも私、一人旅ですし」
「でもあなた、また・・・その・・・・・・する・・・でしょう? ・・・・・・その・・・自殺」
「まあ、するでしょうね~。・・・・・・私まだ何もしてませんから。だいたいコレ、ただの練習ですから、テヘ☆」
「じゃあ尚更、一人でなんか・・・・・・」
「ですから。私、一人旅なので・・・大丈夫ですよ! 子供じゃないですから!」
「いえ・・・そうではなくて。あなたを死なせる訳にはいかないんです・・・・・・」
「??? ・・・・・・どうしてですか? あなた達私の何ですか? 偽善は結構です!」
「違っ! 偽善とかじゃなくて・・・・・・」
「ああ、お仕事ですものね☆ ご苦労様です♪」
「違っ・・・・・・そうでもなく・・・・・・」
「では何ですか? どうしてですか?」
「何って・・・・・・とにかく、あなたをここから一人では出せません」
私の口から、ひねくれた底意地の悪さマックスの言葉が遠慮なく飛び出す。でも・・・・・・核心は突いていると思うんだよね~。
私の質問に的確な返答はせず、逃げた感じですよ~?
もうね、言っちゃえばいいのにね!
「お仕事なので上部だけでも口先だけでもあなたを止めなきゃいけないんです」
って。言っちゃえば楽になれますよ♪
こうしてまたしても無駄な押し問答祭が開催される。
今度の祭は『出る』『出さない』祭です。
負けないぞ~~~~~~!!!
が・・・・・・『保健所』の方々は刑事以上のしつこさで・・・・・・。粘る粘る粘る粘る粘る粘る粘る粘る粘る・・・・・・。
熟女ぐったりです。げんなりです。
しーかーもー、追い討ちを掛けるかのごとく刑事も参戦! 看護師も参戦! 医師も参戦! って・・・・・・Wao!!! 敵しかいないじゃん!!!
『生きろ教』『死ぬな教』に囲まれた!!!!!!!!!
・・・・・・・・結論から言っちゃうと折れるしかなかったんです。頑張ったんだけどね・・・・・・熟女の体力、精神力共に残り僅かなんです・・・・・・。
熟女は疲れやすい生き物ですっ!
多勢に無勢。酷い・・・・・・苛めです! いい大人達が寄ってたかって熟女苛めです! うわーーーーーーーーん!!!
「は? ・・・・・・措置入院?」
初めて聞く言葉だった。保健所の方が言った『措置入院』勿論意味なんて知らなくて。
「入院? ・・・・・・いいです。死にたいので。それに私、お金ないですので遠慮しておきます」
「大丈夫ですよ。措置入院というのはお金が掛からないんですよ」
「はあ、でも、いいです。私ここから出たいだけですから。本当に遠慮しておきます」
私には色々と理解が出来なかった。
初めてだらけの自殺旅行。思考が全く追いつかないのは大量に飲んだ眠剤のせい? それとも首絞めのせい? 元来の頭の悪さも輪を掛けているのだろう。
「では・・・・・・縛ってでも措置入院とさせていただきますが、宜しいですか?」
医師が言った。
はぁ?! バカか?! アホか?! 宜しいわけないじゃないですか~~~?!
えっっっっっ??? なに??? その本当の強制・・・・・・的な・・・・・・???!
マジで?! マジですか?!?!
・・・・・・どうやらマジみたいです。
もう折れるしかないんだ・・・・・・。暴れたくても上手く身体動かないんだよ~~~~~!
敵達は勿論、まさか自分の身体も言うこと聞いてくれないなんて・・・・・・。
トイレに行くのも、車椅子に乗せられるほど足腰ほとんど力入らず・・・・・・。
あっ・・・・・・車椅子に乗ったの初めて♪
救急車にも乗せられたらしい。わ~い♪ 救急車も初めてだ~♪ ・・・・・・覚えてないのが悔やまれるけど。
着ていたホテルの浴衣から私服に着替える。荷物はいつの間にか全部ホテルからここに移されていた。
脱いだ浴衣にはあちこちに血が・・・・・。
なるほど。首の絞め方によるのかどうなのかは分からないが、結構出血するものなのだな。鼻血は勿論、口内からも首からも。鬱血が酷いのなら眼球からもかな? しかも私は生理中でした。
病院を出る時言われたのは、
「では、点滴等の治療費として \ 2万円 \ いただきま~~~す♪」
って・・・・・・お金ないって言ってんじゃん! こっちが頼んだ訳でもなく、勝手に治療しておきながら酷いよ~! 横暴だよ~!
財布を見た。2万払って残金は・・・・・・うん、大丈夫。あと死ぬだけなので全く問題なしです♪
足腰ガックガクの私を左右と後ろから3人に支えられながらタクシーの後部座席真ん中に乗せられ、両脇をがっちりと保健所の女性達に固められたまま夜の暗闇を走り出した。
「ちょっと・・・・・・かなり距離があるので時間もかかりますから、寝てていいですよ」
「・・・・・・・・・・・・」
上手く返事が出来ない。
頭がボーッとしているのもあるし、これから何処に連れて行かれるのかもよく分からない。説明はしてくれたのだけど、地名を言われても知らない土地だから理解出来ない。
かと言って、不安も何もない。ただ、もうすぐ死ぬのだからどうでもいい。なんでもいいや~・・・・・・。と思った。
やけくそとは明らかに違う。