† 練習 †
ホテルのある駅に到着したのは夕方間近だった。
滞在期間はあと1日。
もう一ヵ所行く場所を予定していたのだけど、そこは台風被害でまだ復興してなくて入れないと・・・・・・観光協会の人が言っていたなあ。
本当に私・・・・・・運悪い。
予定がなくなってもヒマにはならない。その情報を聞いて私の中ですぐに新たな予定が立った。
急ぐ旅。
しかも死に急ぐ旅。
ヒマをもて余すなんて贅沢はしない。
ヒマも有効活用しないとね♪
ホテルに戻る前にスーパーに寄り、度数の高いアルコールドリンク4缶ほどと小さなパンを買った。
「おかえりなさい」
「ただいまです」
笑顔で挨拶を交わし、少しお喋りをしたあと、部屋へ戻る。
パンを胃に収めたあと、持ってきておいた『酔い止め』と『吐き止め』を飲んだ。
シャワーを浴び、浴衣に着替える。
部屋を薄暗くし、荷物を漁る。
取り出したのはロープ。正確には大型犬用のリード。
胸を躍らせながら購入した太さの違う2本のリード。
黒と赤が交差した2本のリード。
それから、滋養強壮を掲げるラベルが貼られた薬瓶。
中身は元気ハツラツ! 疲れも吹き飛ぶ! ・・・・・・ではなく、睡眠薬だ。
3種類ほどの睡眠薬を大量に購入し、入れ替えた物。
睡眠薬と言っても導入材になるのだろうか? 市販の物だ。
髪を束ねアップにし留める。
2本のリードをそれぞれ撫で回し、どっちにしようかな~と、思案する。
16㍉に決めた。
それからゆっくりと眠剤をアルコールで少しずつ少しずつ飲み下していく。
私は『練習』をする事にしたのだ。
ネットでよく見掛けた『意識を飛ばす練習』はしておいた方がいい・・・。
しかも私は眠剤初体験★
私の体に眠剤はどれくらいで効くのか? またどのくらい効くのか?
分からないなら試してガッテン☆
ちょうどいい、時間は空いた。
どのくらいの眠剤を飲んだかなんて、もう覚えてはいないが事前に飲んでおいた『酔い止め』と『吐き止め』
のおかげか、かなりの量を飲んだ様だが吐き戻す事もなかった。
16㍉のリードを首に巻きつけ、ハイパーベンチレーション、通称『ハイベン』をこれでもかと行い、意識朦朧としたところで一気に自分自身の腕力で締め上げた。
この時の気持ちは不思議なもので覚えている。
不安は一切なくワクワクした。
鼻歌混じりにキュキュキュのキュ~♪
みたいな☆
これがマジで!
正直、これで逝けたらラッキー♪ という気持ちはもちろんあった。
ノリ的には某ロボットアニメの有名な台詞が出てきそうな・・・・・・。
「仮名! 逝きまーーーーーす! 」
みたいな♪ ・・・・・・ファンの方々並びに関係者の方々に怒られそう★
結果、私は『練習』としては大成功★
だと自画自賛したいくらいだ!
なにせ、痛みも苦しみもなく『飛べた』のだから!
が、いかんせん運の悪さ、頭の悪さ、
浅はかさだけはどうしようもなくて・・・・・・。
私は無駄に寿命が延びていくハメになる。