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† 到着 †


到着したのはほんの少しだけ『コンクリート感』がある駅。


携帯のメモを開き手早く確認。そしてすぐさま電源オフ! この時まだ繋がっている携帯。邪魔はされたくないからね☆


駅目の前のホテル。方向音痴の私でも迷うことなど有り得ないほどの目の前。もう見えてます。駅から徒歩数秒ってところです。


時計を見る。予約の時間より1時間も早い。う~ん、こういう場合はどうしたらいいのかしら? なにせプライベート旅行初めて。ホテルを取ったのも初めて。悩みながらも駅周辺を見回してみた。


・・・・・・・・・パッとしない所ね~。なんにもないじゃない。ヒマそうなタクシーが数台止まっているだけ。店らしきものも寂れた居酒屋がポツリとあるだけ。


あっ、観光案内所発見! 歩いて数歩の店舗の中へ。


笑顔で出迎えていただいて恐縮ですが、どこか「ここはオススメ☆ 」的な『死に場所』ってないですか?


なんてこと聞けるはずもなく、一応『行きたい』『見てみたい』観光スポットもあったので、それを伝えパンフを適当に頂いた。


観光??? ・・・コイツ死ぬ気ゼロだろ?! と、お思いの方もおられましょうが、いえいえ! もう家財も写真も手紙等々も全て処分して来ましたから。


もちろん、帰る場所もですよ。

じゃあなぜ観光? って?


季節外れの旅行。今時珍しくはないにしろ女1人旅。台風の被害がまだあちこちに残るこの県。怪しまれても面倒じゃない! 『自殺旅行』なんてバレバレでは成功率も下がりますよ!


なので、メイクもバッチリな私☆ 行きたい所もあれば良い訳も出来るでしょう?


観光案内所を出て、時間は早すぎるけれどホテルへ行ってみました。


「本日○時に予約している仮名ですが、まだ早いですよね~? 」


「いらっしゃいませ。仮名様ですね。お待ちしてました。大丈夫ですお部屋ご用意出来ていますので、どうぞ~」


家族経営らしいアットホームな方々の笑顔に温かく出迎えてもらいました。


しかし・・・文章にしてはいないのだが、

『方言』『訛り』がキツイな・・・ほとんど聞き取れなくて、何度聞き直したか・・・。


遠慮なく早めのチェックイン。フロントで『住所、氏名、電話番号』を書く。


ふふふ・・・何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し練習してきた『偽住所、偽氏名、偽電話番号』を疑われることのないようにスラスラと書きました♪


身分詐称です。犯罪ですよね~☆


でもね私ね『身元不明の無縁仏』が理想であり希望なのですよ! 勝手で申し訳ないとは思う。


『自殺』それ自体が身勝手なことも十分に承知している。その上での理想であり希望だ。


まったく・・・本当に『自殺志願者』というものは・・・いや、私という人間は『自由気まま』『勝手気まま』過ぎる。


なんにせよ無事に身分も偽れて内心ホッとした上に実はかなり嬉しい♪


だってね、憧れの大好きな名字で呼ばれるなんて! しかもその名字で死ねるなんて! 超嬉しい~~~♪


3泊分の料金を前払いし、鍵を受け取り二階の部屋へ・・・・・って・・・もういいよ! もういい加減にしてくれよ!


階段しかありません・・・・・。


ふう~~~~~・・・。少々くたびれました。


買ってきたミネラルウォーターで喉を潤し一緒に買ってきた『バナナカステラ』なるものをモグモグ・・・うん、

パッサパサの上に体が食物を受け入れにくくなっているのも重なり、喉詰まるーーーーー! 一瞬、窒息死もありか?! と思ったが反射的に水を流し込んでいた。


さっそく観光案内所で頂いたパンフをベッドに広げた。マップを眺めるとネットで見た通りに行きたかった神社、仏閣が徒歩圏内に!


時間は昼過ぎ。天気もいい。そして私に残っている生存日数はあまりない。


さっそくGo! Go! です♪


ビックリです! 自分にです! 私を知っている友人知人がこんなにフットワークの軽いアクティブな私を見たら何らかの病気ではないのか?! と疑うであろう。


「おウチ大好きーーーーー! ゲーム超最高だゼ!!! マンガ超楽しいゼ!!! おウチ、マジで超! 良いぃぃぃぃぃぃ!!! 」


というオタク人生を謳歌しておりましたから。


いざ出発! の前にフロントに鍵を預けしばし閑談。


「珍しい時期にご旅行なんですね? 」


笑顔で話し掛けてきたホテルの奥さん。そのすぐ隣に同じく笑顔の旦那さん。フロントすぐ横の小じんまりとした喫茶室を掃除しながら会釈をする笑顔の(たぶん)娘さん。


おっと・・・疑いの色が隠せていないぜご家族さん♪ やっぱり警戒はするのね~、1人旅だもんね~、女の~、しかも時期外れ~、そして知らなかったが尋常じゃない台風被害。まだ復興していない場所も多々あるらしい・・・そんな感じ。


そりゃ、警戒もされるわ~。


でもね「警戒されるかも・・・」なんて予想済み♪ それなりのシミュレーションもして来ましたから!


慌てず焦らずゆっくりと笑顔で返しますよ☆


「そうなんですよ~。仕事が忙しくてなかなか休みも取れなくて・・・やっと取れたので、今のうちにと思いまして」


「そうなんですか~。ゆっくりして行って下さいね。なにかありましたら何でも聞いて下さいね! 」


「それは助かります! 実は○県は初めてで、○大社に行くにはどう行くのが早いですか? 一応そこの観光案内所でパンフレットも頂いてきたのですが」


私はパンフを取り出した。すると分かりやすくあからさまにご家族の警戒が緩んだ。


志願者達よ! 明確な目的地(観光用)!

パンフ! これマジ大事! これだけでも『ああ、この人は本当に観光で来たんだな』と相手を油断 & 安心させられるようだ。


そう! 決して悟られてはならないのだよ! 警察に通報だなんて・・・そんなマヌケなことはあってはならないのだよ!!


よっしゃ騙せた! と、内心ガッツポーズ♪ の私は親切な説明を聞きホテルを出た。


パンフ片手に歩く。


気持ちがいい。


心は驚くほど穏やかだ。


大通りに出ても人通りはなく、車の通りも僅か。


さほど遠くない向こうには山々がほぼ360°広がっている。自然がいっぱいだ。


私は生まれも育ちも『コンクリート』に囲まれているのが当たり前の生活を送ってきた。だからだろうか、こうも思う。


こんな何もない所じゃ私は生活出来ないわ~。不便極まりないわ~。


自殺志願者が何を失礼な事を・・・ねぇ、わたくし本当にひねくれ者でイヤになります!!


○大社に行く途中『城跡』なる場所が・・・ほう、帰りにでも寄ってみるか。


○大社は20分ほどで到着。鳥居の中央を避け端をくぐる。


いいねえ。・・・・・良い! 空気が清い!


すみません・・・汚れに汚れきった私が通ります。お手水を頭からかぶって浄めたいのはやまやまですが、そこは目を瞑っていただきたい!


ひときわ大きな鳥居をくぐると玉砂利を敷き詰めた静かで荘厳な敷地。朱塗りの美しい境内が広がる。


ああ・・・来て良かった・・・・・。


本当にそう思った。


美しい・・・・・珍しくただ素直にそう思った。


参拝客は私以外1人もいない。


時期外れの平日の午後。


ゆっくりと歩み参拝する。お賽銭を入れ、二礼二拍手一礼し願い詣でる。


(どうか! 上手く逝けますように!!! )


神も仏もビックリだ。そんなことを願われるとは思ってなかっただろう。


が、もう本当に私はこれ以上ないほど真剣に大真面目に必死にただひたすらに乞い願った。


願い終えお守りなどを見てみた。


どんなのがあるのかな~? 祈願成就なんてのがあったら買っちゃおうかな~♪


私は決してバカにしているわけではない。どちらかというと、私自身がバカなのだ。


私がこの県に決めたのは最期に『とある神使』を参って見たかったからでもある。


有名なこの『神使』前から好きで・・・とは言っても詳しくはない。


やはりこの地方の神使。お守りにもその他の物にも画かれている。


可愛いな~~~~~♪


うっとりと眺める私の目に飛び込んできた文字は『健康祈願』いやいや・・・勘弁して下さい。


『交通安全』いらんいらん!


『家内安全』興味なし!


『長寿祈願』おいっっっ!!! ふざけるのも大概にしろ!!! と怒鳴りたくなるラインナップが立ちはだかった。


で・す・よ・ね~~~☆


『短命祈願』なんてあるわけないですよね~~~。


失礼しました。深く一礼して退散いたしました★


まだ明るい。きた道をテクテク歩いてチェックしておいた城跡へ向かった。


・・・・・キ・・・キツイ! ゼエ! ハア!


早々と息を荒げ始める35歳。


城跡・・・舐めてました! すいません! これはあとどれ位登れば頂上にたどり着きますでしょうか?!


階段っていうか大きな石っていうか岩っていうか・・・。


三十路舐めんな! キツイんだよ! 体力そんなにないんだよ! 本当!! マジで!!


ごめんなさい・・・そろそろ許して下さいませんか?!


登りに登ってやっとこさたどり着いた頂上。もと天守閣があった場所?


ウッヒャッホ~~~~~イ!!!


すっっっげーーーーーーー!!!


景色超! 良いーーーーーー♪♪♪


山! そして海? 湖? ・・・・・・まあどっちでもいっか! 綺麗~~~~~~~~!


誰もいない。


いいね・・・ココ。候補として挙げておこう。


Wao! 吊るのに良い感じの簡素な東屋らしきものもあるじゃ~~~ん♪ いいよ! いいよ! 初日でこんな素敵な場所が見つかるなんて! 運が悪い私だったけれど、最期に? 最期だから? 運が向いて来たのかな? だったらいいな。


この時はあまりの景色の良さにテンション上がり過ぎていて『誰にも見つからない所でひっそり逝きたい』と思っていたのに忘れてしまい今思えばあんな超目立つ所でなんて・・・・・・更年期障害かしら?


石のベンチに座る。持っているミネラルウォーターを飲むといかに自分が渇いていたかを知った。


静かな場所。ここも誰もいない。来ない。


平日最高!


夕日に変わるまで何も考えずボーーーっとしていた。


さてホテルに戻ろう。


東屋を振り返った。ちょっと東屋の天井の梁が高いな~~~・・・どうやってロープを結ぶか考えておかないと。


低い自分の身長。『チビ』このコンプレックスに最後まで悩まされるのか・・・


いやいや、前向きに考えてみよう! そう! この低身長ともあと僅かでおさらばではないか!


イエス! レッツポジティブ・シンキング~~~♪


よし! とりあえず戻ろう!


来た道を・・・・・ああ、下りは下りでかなり大変・・・いや、下りの方が倍くらいは大変じゃないか?!


頑張れ三十路! 負けるな三十路! あと少しでそれも終わりだMiSoJi☆


自分を励ましながら下る。


なんだかクラクラと目眩が・・・ああそうだ、バナナなんたらしか胃に入れてないからか。帰りにコンビニでも寄って何か胃に入れとくか。


そんなことを考えながら城跡を出た。


で、コンビニは? ・・・・・・コンビニを見つけられないまま駅まで戻って来ちゃいましたが? 駅付近ならいくつかあるだろう・・・とか思っていますが何か? ええ、そんな事が当たり前の都会っ子ですが何か?


・・・・・・・・・・・・・・ウッソだぁ~~~☆ 駅 ですよ? すぐそこに! なんでコンビニがないの?! マジで?! あっ、地元の女子高生発見! 聞いてみよう! そうしよう♪


「コンビニですか? ・・・ここから一番近い所だとこの道を真っ直ぐ行けばありますよ」


「ありがとうございます。歩いてどのくらいですか? 」


「歩いてですか? そうですね、20分ちょっと・・・くらいです」


は? 20分? 今この子20分って言った? 2分の間違いじゃ・・・いや、2分だったら見えていてもいいはず、高いビルとかがあるわけでもないし・・・。


ああ往復ね? 往復20分ちょいね? とすると片道10分くらいか。ま、いいか。


「この道を真っ直ぐですね? ありがとうございました」


女子高生にお礼を言い、教えてもらった道を歩く。


歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く・・・ってマジか?! マジで片道20分以上なのか?! ウソだ! たかがコンビニに行くだけで20分?!

・・・・・ウソだ!!!


・・・はい。本当でした。コンビニへ片道20分以上・・・往復40分以上です。


あり得な~~~い!!!


・・・・・・凄い所です。


「お帰りなさい」


笑顔で迎えるホテルのご夫婦。


○大社とコンビニの話をすると、聞いたこともないローカルスーパーの名前を教えていただいた。コンビニよりも断然近いそうで・・・一応場所も聞いておいた。


初めての旅行。しかも『自殺旅行』


正直、疲れました。予定外に予想外に歩きましたから。坂が多いのもまた・・・・・・。


買ってきたパンを新しく買ってきたミネラルウォーターで呑み込み、シャワーを浴びてベッドの中に。


あの城跡は良かった・・・・・・なんてことを思いながら就寝。


おやすみなさ~~~い☆


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