第2話
「青春って言ってもなにするんだよ?」
ショウが先日映画でみたドラムのリズムを指で叩きながらたずねた。
「んー…」
その時、不意に沈黙を切り裂くようにチャイムが鳴った。
眠っていた僕の頭の中にそれは痛いほど鳴り響いた。
休み時間に入っても僕らは青春について語り合った。
「やっぱ共学に入っとけば良かったかな」
「確かに。女の子が居たらなにかかわってたかもな」「でもこの学校以上に自由なとこなんてないだろ」
「そうだよなあ、けど…こんなに時間があるのにやりたいことがないなんて皮肉だな」
その時1人の男が話に入ってきた。
「んー、青春かぁ…そうだ!旅行なんてどう?」
クラスで親父と呼ばれている鉄道研究会のシュンスケが発した[旅行]という言葉に僕らは食いついた。
「旅行? なんか良い感じじゃん、けどいつ行くんだよ?」「そうだな、それに金はどうするんだよ?」
「それは君らで考えなよ!!僕は鉄道研究に青春かけてるんだから!」
そう言うとシュンスケは教室の外に出て行ってしまった。
あらぬタイミングで大声を出され腑に落ちない僕らだったが、そんなことより[旅行]についての話がしたかった。
僕は目を輝かせていた。
「なんか良くね!?みんなどう?」
「俺は良いけど、まじで行くなら、どこ行くんだよ?」
ノートを取り終わったマナブが尋ねた。
「やっぱ青春と言えば海だろ」
ショウが頷きながら言った。が、その直後ナオキが
「バカ!お前、今海はクラゲとかエイとかが大量発生してて危ないんだぞ!行くなら山だろ。マナブは?」
「俺は、どこでも良いよ。それより一番乗り気なお前は?」
マナブが僕に話をふった。
「んー…海も山も微妙じゃない? なんか見渡す限り自然とか畑が広がる田舎に行ってみたくない?」
…
「それだ!!!」 ショウとナオキとマナブが同時に答えた。
比較的都会で育った僕らにとってそれは、ドラマや映画でしか見ることの出来ない憧れだった。
なにかに憧れるというのがなぜかとても懐かしく思えた。