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悲しい復讐者  作者: 灰猫アルタ
第1章
6/9

閑話 少女の嘆き



 今回は、主人公とは違う登場人物の視点です。


 「ちょっと,ママ?!

早く 起きてよ………ッ!」少女は、呆れたように 言う。


その声に 布団の中に眠る存在は、身動き1つしない。

乱れのない 寝息が、聞こえてきている。

これは、いつもの光景。

母を起こす役割は、娘の朝の仕事の1つになりつつある。

幼い頃から その光景は、変わっていなかった。

母が、籍を入れて 父と一緒に暮らすようになってからも。


朝に弱い母を起こせるのは、母とより長く一緒にいた 娘の彼女だけ。

少女は、手に持つ 濡れタオルを耳に持っていく。

すると 次の瞬間 母は、悲鳴を上げて 飛び起きた。


「あっれ~………蛍 オハヨ。

もう そんな時間?

さっき 寝たばっかりのはずなんだけど」


母の寝ぼけの声に 少女ー蛍は、溜息をつく。

娘の様子に 母は、気にする様子もなく 欠伸をしている。


「もう 朝だよ。

あたし………そろそろ 家を出ないといけないの。

よっちゃんは、もう 起きてるよ?

今………シャワーを浴びているもん」

「あの男………もう 起きてるんだ。

昨日は、あんなに疲れている風だったくせに」母は、頬を膨らませながら 呟く。


何が2人にあったのかは、想像できるだけに 蛍は、肩をすくめる。

母は、三面鏡の前に座って 唇を噛んでいるみたいだ。


「はいはい………とにかく 早く朝食を食べようよ。

あたし………学校に行かないといけないんだから」

「でも 今日は、日曜日よ?

何で 学校に行かないといけないのよ」


母は、振り返って 首をかしげる。

その仕草は、母の魅力を引き立てているだろう。

現に 本人は、全く 気が付いていないけれど 見惚れている人を何人も見たことがあるのだから。

まぁ よっちゃんに みんな 排除されてしまっているけれど。

勿論 母本人は、そういう影の動きがあること事態 知らない。


「この前 絵本コンクールが、あったでしょう?」

「ああ………蛍が、入賞したあれね?

そういえば クラスの総出で 絵本を出版することになったんだっけ?」母は、思い出したように 言う。

「うん…それでね?

イラストの方は、みんな………何にもわかんない。だから プロの人を呼ぶことになったんだって

「プロ………それって 誰よ?」


母の問いかけに 蛍は、目を細める。

どこか冷めた瞳で………。


「新生のイラストレーターの『宇崎 緋音』」

「それって………あんたが、大ファンの?

………の割には、嬉しそうじゃないじゃない」母は、不思議そうに 言う。


その質問に 蛍は、答えなかった。


「だって………全然 知らない人のようにするんだもん。それに 名前も違うし…」


蛍の小さな呟きは、母の耳に届かなかった。

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