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悲しい復讐者  作者: 灰猫アルタ
第1章
5/9



 後半は、緋音の復讐相手の視点です。


 数日経って 城之内から 予定が決まったという 知らせが入った。

緋音は、早速 準備にとりかかる。

1つは、純粋に 子供達にイラストを教える為。

もう1つは、新たな一歩を進める為だ。


「初めまして、みんな。

わたしは、宇崎 緋音です。

今日から みんなと一緒に 絵本のイラストを書いていきましょう」緋音は、放課後 残ってくれた生徒の前に立


って 言った。


子供達は、緋音を前にして どこか ソワソワしているようだ。

顔を赤らめている子達も、数人いる。

そんな様子に 緋音は、苦笑してしまう。


「では、グループに分かれてください」城之内は、手を叩いて 声を張り上げる。


担任の合図に 子供達は、各自 事前に決めたらしい製作グループに移動していった。

その様子に 緋音は、感心する。

彼らの切り替えの早さに。


「さすがと言うべきでしょうか………みんな テキパキしています。

先生の指導の賜物でしょうか?」


緋音の問いかけに 城之内は、苦笑した。


「これらは、理事長先生の教えなんですよ。

無駄なことは、しない――それは、うちの学校のモットーなんです。

そうすることで 子供達も、混乱せずに 行動に移すことができますから。

我々も助かっているんです」


緋音は、その話を聞いて 冷たい目になる。

それと同時に 廊下から 声も聞こえてきた。

緋音は、その声に 血が逆流するような思いに捕らわれる。

この感情を、抑えるように 自分の決めた エピローグを思い浮かべ ほくそ笑む。

そんな彼女に 城之内は、子供達に視線を向けている為 気づかない。

ただ 1人の女子生徒を除いて………。


































※~※~※~※~


 下校風景の廊下を 理事長の槙村 明澄は、校長と一緒に 歩いていた。

子供達は、彼らを見つけると 深く頭を下げ 挨拶していく。

それに対し 明澄は、笑みを浮かべて 挨拶する。


「みんな………元気にやっているようですね?」

「はい………理事長の取り組みも、順調に進んでおりますよ」

「そう。ならば 問題は、ないわね?」


明澄は、校長の言葉に 満足そうに微笑む。

全ては、未来ある 次世代の為に………。

それが、彼女の取り組みの目的だった。


「ところで 今日からだったかしら?

絵本のイラストの指導は………」明澄は、思い出したように 呟く。

「ええ………先日 イラストレーターの宇崎さんが、お越しになられて 城之内先生と予定について話し合ったそ


うです。

とても 熱心にしてくださっているそうですよ?」

「彼女のイラスト………わたしも、嫌いじゃないわ?

心が温まるんですもの」

「確か………理事長のご家族は………」


校長は、ハッとしたように 息を呑んだ。


「両親は、早くに亡くなって 兄も………。

兄の事件は、随分と報道されたから あなたも知っているようね」


明澄は、そう言いながら 小さく溜息をつく。

あの事件を未だに掘り返されることは、よろしくないのだ。

しかも 今は、自分にとっても 他の家族にとっても 大事な時期なのだから。


「ええ………お恥ずかしながら わたしも、理事長のファンの1人で………今もその気持ちは変わっておりません


当時は、本当に許せませんでした………犯人のことが」

「あら………ありがとう。

引退して こんなおばさんになってしまったのに 今でも、ファンでいてくれるだなんて」


明澄の言葉に 校長は、照れ隠しのように 汗の噴き出る 額をハンカチでふき取っていく。


「あら………あの教室だったわね?

絵本製作をしているクラスは………」明澄は、楽しそうな笑い声の聞こえてくる 教室を見つめながら 言う。

「はい………声をおかけになられますか?」

「そうね………今日は、控えておくわ。

機会は、いつでもあるのだから………」


明澄は、子供達の笑顔を窓ガラス越しから見つめながら 微笑んだ。


そして 明澄は、後に後悔する。

この時 彼女との邂逅(かいこう)しなかったことを。

廊下の気配に気づき 緋音が、ほくそ笑んでいたことを 明澄は、知らなかった。

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