表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲しい復讐者  作者: 灰猫アルタ
第1章
4/9


 緋音は、翌日 ある探偵事務所を訪れた。

美観ではないものの 腕は確かだという 噂だ。

けれど その見た目に左右されて 依頼人は、こないのかもしれない。

経済的に困っていることは、丸わかりなのだから。


「すいません………依頼をお願いしたいんですが………」


緋音は、事務所の中に入った瞬間 タバコの煙に 咳き込む。

中は、煙が充満して 電気をつけても つけていなくても 同じような状況だ。

しかも 煙のせいで 人の気配は、あるのに どこにいるのか わからない。

緋音は、呆れて そのまま 中に足を踏み入れ 窓を全開に開いた。

すると 事務所の中は、嘘のように 明るくなる。

辺りを見回してみると いきなり 依頼人の起こした行動に 呆気に取られているらしい。


「探偵さんに 依頼があって 来たんですが。

どなたが、西園寺(さいおんじ) 浩輔(こうすけ)さんでしょうか」緋音は、1つ1つ 顔を見ながら 言う。

「あ………えっと………それはですね?」

「うっわぁ………綺麗な人………」


問いかけられた 2人は、顔を真っ赤にさせて 戸惑いを隠せていない。

このままでは、埒が明かないだろう。


「おい………何だよ。眩しいじゃねぇか」


振り返ってみると ソファーに寝そべっていた 中年の男が、顔に乗せていた 新聞をのけて 上半身だけを起


こしている。


「すいません………あまりに 不健康な環境だったんで 独断で 窓を開けさせていただきました。

わたし 調査依頼に来ました 宇崎と申します。

あなたが、この探偵事務所の所長の西園寺さんでよろしいでしょうか?」

「ああ 俺が………西園寺だ。

お嬢さんが、依頼人かい?

こりゃまた 別嬪さんが、きたもんだな?」


西園寺は、欠伸をしながら 笑う。

無精ひげを生やしているから 年齢は、わかりづらい。

でも 声からして あまり 年は、取っていないだろう。


「依頼人に そういうことは、関係あるんでしょうか?

受けていただけるのか 教えていただきたいんですが」

「そうだなぁ?それは、内容によるぜ?

随分と 思いつめた顔をしているけど………犯罪は、ごめんだからな?」


その言葉に 緋音は、彼を睨みつける。

2人の空気に 調査員なのかアルバイトなのか 年若い 男女は、オロオロしているようだ。


「依頼内容は、簡単に言って 身辺調査です」緋音は、真面目な顔をして 言う。

「身辺調査?一体 誰の」

「わたしのです」

「「「はぁ~?!」」」


声を上げたのは、西園寺だけではない。

居合わせた 調査員兼アルバイトのお2人。

でも そう声を上げてしまうのも、無理はない。

まさか 自分の身辺調査を頼みに来る 依頼人は、いないだろうから。

けれど 緋音には、必要なことだった。

あの女を追い詰めるには、この方法が一番なのだ。


「自分の身辺調査を、して 自分に知らせるのか?」

「いいえ………ある方に 匿名で知らせて欲しいんです。

勿論 わたしが依頼したということは、伏せて………」


緋音の依頼の内容に 西園寺は、訝しげな顔をしている。

けれど 彼に調査を依頼することも 計画を進めるに当たって 必要な材料だ。

何が何でも 引き受けてもらわなければならないのだから。


「わかった………引き受けましょう。

一応 そこの書類に 名前と連絡先 調査内容を記入してください。

マメ芝………書類の手順を………ハチ公は、飲み物を用意しろッ!

いつまでも 放心してんじゃねぇよ」


その言葉に 2人は、ハッとしたように 動き出す。

緋音は、そんな彼らを苦笑しながら 見つめていた。

そして 西園寺は、そんな彼女を不思議そうに 見つめる。


「誰だっけ?誰かに 似ている気がするんだが………」


その呟きは、ハチ公ちゃんが お茶の入ったトレイをひっくり返してしまったことで 聞こえなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ