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第37話 潜り込んじゃった

 真面目な話、エレノアを城に戻すために内部の人間に連絡を取りたいのだが彼女の【第二王女】という高すぎる身分が邪魔をしている。これが末端の兵士なら城門を守っている門番に伝えてもらったり、その辺りで警邏している兵士を捕まえて事情を話したりすれば良いのだが⋯。


 それでは、その一部始終をご覧いただこう。



 ~CASE1 正面から堂々と~



「ホントに大丈夫かコレ」


「本人がイケるって言うんだし私達は従うしか無いんじゃない?」


「何だ何だ二人共、私の顔の広さを知らんな?小さい頃から兵に混ざって訓練に明け暮れ、慣れ親しんだ仲の者が多いのだ。そう心配するな」


 エレノアは謎の自信でどんどん進んでいく。普通に考えて王族を名乗る不審者が正門に来たら追い返されるんじゃないか?一人を除いて訝しんでいれば馬車数台が入れそうな大きめの門が見えてきて、お仕事中の兵士さんに槍を向けられた。


「そこで止まれ!何だお前達は。此処から先は一般人は入れんぞ」


「失礼!私はエレオノーラ・グランディールだ。第二王女が帰ってきた故、門を開けよ」


「はぁ?頭大丈夫かお前?王女様がこんな所に護衛の騎士も連れずに歩いて来るわけないだろうが。帰れ帰れ!」


「いや、これには事情があってだな」


「知るか!そんな通達は受けておらん!帰らないなら人を呼ぶぞ!」


 シッシッと野良犬を散らすような態度で追い払われてしまった⋯。


「なんだあいつは!返り咲いた暁には真っ先に吊し上げてくれるわ!」


「普通はこうなるわよ⋯⋯」



 ~CASE2 裏口から~



 日頃お忍びで出かける時に使っていたという、主に使用人が使う出入り口から中に伝えてもらうことにした。正門とは違い正規の兵ではなく周囲に見習いメイドがよくいるので話も通しやすかろう、ということらしい。


「ここならば入れるはずだ」


「さっきみたいに話も聞かない人じゃなければいいけどね~」


「っていうか私達に見せてよかったのかよ、こんな場所」


「何、構わんさ。ここから入るには一定期間で変わる符丁を中に伝えねばならんからな」


 こいつが家出してから半年なら余裕で変わってんじゃねえのか⋯。城をぐるっと回って厩舎の牛馬の臭いやら厨房の料理の匂いやらを嗅ぎつつ奥に進むと、一箇所だけ不自然に作られた扉が見えてきた。エレノアはそれに近寄ると、コココン、コココン、コココン、コンと叩いてから「ハッ!」と声を上げた。レベル上がりそうだな?


「⋯⋯⋯どなたですか?」


「エレオノーラだ。しばらく留守にしていたが帰還した。開けてくれ」


「それは成りません。この扉は正確に符丁を伝えられる方のみ通って良いとされているのです」


「今やっただろう、いいから開けるんだ」


「先程のでしたら間違っています。現在は使われておりません。お引き取りください」


「クッ、ならば力付くで⋯⋯」


 そう言いかけると鐘がガランガランと鳴らされて中から「誰か!誰か!」と人を呼ぶ声を出されてしまった。これ捕まったら間違いなく犯罪者扱いやんけ。何してくれてんのこの王女?とりあえず逃げよう。下手すると人相書きが出回るから急いで人混みに紛れないと!



 ~CASE3 こっそり忍び込む~



 つまるところ末端の人間に任せるのが悪い。何食わぬ顔で自分の部屋に戻っていつも通り過ごしていれば、周囲も帰ってきてたんだなと納得するだろう。そういうことらしいけど本当に大丈夫か⋯?そもそも王城って最高クラスの警備敷かれてんじゃね?その中の王女殿下の部屋に忍び込むって、まだ銀行強盗の方が簡単そうに思えるんだが。


「で、今回はどうなんだ」


「どうも何も直球よね~。これ、失敗したら間違いなく重犯罪奴隷コースよ」


「問題ない。自室に帰るのにここまでする必要があるのかは甚だ疑問だが⋯⋯」


「あたしはいつも通りおぶさってるだけでいいんだよね?」


「こいつの問題もあるからなぁ、出来るなら穏便に済ませたいんだが」


「では私だけで行ってこよう。そのまま戻れたなら後日謝礼を用意するのでな」


 俺達は城から程遠い暗がりで待機することになった。しかしすぐに騒ぎが起きてエレノアは走ってこっちに帰ってきた。今度は何やらかしたんだお前⋯。


「大臣が居たので駆け寄って事情を話そうとしたら、衛兵を呼ばれたのだ!」


 そりゃそうなるでしょうよ。そもそも自分の部屋に忍び込むって目的から外れてんじゃん。この人マジで駄目だ。結局何の成果も得られないまま再び戻ることになった。



 ~CASE4 長い物に巻かれる~



 よく考えるとティナは司祭というそれなりの地位がある。それを利用すれば城に入ることくらいは簡単なのでは?そう提案すると思ったより好感触でそのままトントン拍子に話が進んでいき、兵士の治療という名目で内部に潜入することが出来た。最初からこうしてりゃよかったよ。


 エレノアが身分の証明が出来りゃ一番だったんだが「着の身着のままで飛び出して、ようやく装備が揃えれたのだ!」と胸を張って言う辺りマジで寝間着で出てきたんだろう。こういう時は紋章が刻まれた小物とか持ち出して来てて、この紋所が目に入らぬか!ってやれば済むと思うんだが、マジで手ぶらだったみたい。その状態でそれなりの装備を揃えれるとか割とすごいな?


「後は知り合いを探して話をつけるだけなのだが⋯⋯部隊長や騎士団長はどこに居るのだろうか」


「どうせ後から偉い人に完了報告しに行くし、それまでは大人しくしといてよね」


 若干呆れ顔でティナが言う。さっきから廊下を歩きながら落ち着き無く辺りを見回して、顔見知りを探して挙動不審になってるのでかなり怪しい。


「あれは!いかん皆、私を隠してくれ!」


 エレノアは何かを見つけたのだろうが、急に身を寄せるように俺達に言うとその影に隠れて顔が見えないように縮こまってしまった。さっきまで見ていた場所には、それなりに着飾っているいかにも貴族って感じの金髪の青年が歩いていた。


「どうしたんだ急に」


「あいつはデクタス公爵だ。私の出した案に反対していてな、政務で登城していたんだろう。ここで見られるのは不味い」


「なるほどな。政敵なら騒ぎを起こして始末出来れば万々歳ってとこか⋯⋯政治にまで関わり合いになりたくなかったなぁ」


「そうね~、身の振り方を考えないと私達まで巻き込まれちゃ堪んないわよ」


 あんまり深く関わって命まで狙われちゃ面倒くさいしなー、話がややこしくなってくる前に早めにこの王女様を送り届ければそれで済む話なんだが、どうしたものか。


「ねぇ、公爵の隣りにいるの⋯エレノアじゃない?」


 ティナがそう言いながら顎で指した方向を見ると、なんとそこにはエレノアと瓜二つな人物が居た。


「なっ!?どういうことだ、あれは私の影じゃないか!」


「あー、なんとなくわかったかも」


 多分あそこに着飾ったニセモノが居るってことは、表向きエレノアは行方不明になんかなって無くて、代わりに影武者が収まってるってことだよなぁ。その目的は不明だけど、政敵の隣りにいるっていうのなら複雑なことになってそうだ⋯。これだから貴族に関わるのなんか嫌だったんだよ。その事を伝えるとエレノアは明らかに動揺して、またもや膝から崩れ落ちた。


「そんな⋯⋯私が今まで捜索もされなかったというのは、替え玉に取って代わられたからだというのか⋯⋯⋯」


「ま、そうなるわね。どうする?今日はここだけ済ませて帰る?」


 呆然としているエレノアをほっといて相談を始める俺達だっだが、そこへデクタス公爵が近づいてきた。これはマズイな、バレたら姉達と離れ離れの上で好き物にいい値段で売られてしまう!


「おや、その御婦人はどうしたのだ。体調が優れない様に見えるが⋯!?君は⋯⋯エレオノーラかい?」





 バレた。

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