第36話 判明しちゃった
「そう言えば襲撃者の目星はついてるのか?」
「ああ、爆発物か何かを使ってくる。寝込みを襲ってくる辺り、暗殺者か類だと思うのだが」
模擬戦から数日、俺達はダンジョンに籠もって少しずつ歩を進めて行っている。クリーナー対策は俺の傍にエレノアを待機させておいて守ってもらうことで一応心の平穏は保たれることとなった。護衛対象に護衛される幼女とは⋯。
そして今。護衛依頼を受けたものの、相手の情報も何も無いのは危険なので改めてエレノアに詳しく話を聞くことにした。毒とか使ってくるなら事前に用意しておかないと危険だしね。それにしても爆発物か、宿屋で使われたらそのまま建物ごと潰されてヤバそう。
「それはどういう代物だったの?王女の寝室でそんなものを使ったら大事件になってそうだけど、何も聞いてないわ」
「うむ⋯音は派手だが威力は然程でもなかった。同時に何か飛び出して来たが確実性を増すための呪物だった恐れもあるな。だが追撃を振り切って窓から脱出は出来た。生誕祭に襲撃を仕掛けてくるとは緩んでいた所を突かれたぞ」
「なるほど、しかし念には念を入れておいたほうがいいな。外套を羽織って破片に当たらないようにするか」
そう言って各人マントを取り出して装備した。俺?子供用のマントなんかあるわけないじゃんか。そういう時はローブの裾を切って長さを調整するらしいけど、基本的にクリスかティナと手を繋いでる事が多いので別に要らないんじゃないかって話になった。
そもそも子供用の装備って全然置いてないんだよね。まぁそこらの工房に依頼すれば作ってくれるんだろうけど、売ってるのは全て成人男性を想定した規格の丈と長さだ。稀にビキニアーマーとか見かけるけど誰が買うんだこんなの。鎖帷子を着たほうがいくらかマシなのでは?
雑談しながら敵を倒していくのを見ていると、ドロップの光が見えた。ここはまだ浅い階層なので本格的な武器はそこまで出ずに消耗品や雑貨もちらほら出ることがある。今回出たのは⋯なんだコレ?円錐に紐がついた形状で、カラフルな見た目をしている。なんでこんな物が出てくるんだ?
「お、レアっぽい見た目してるなこれ。法則はいまいちわからないけど見栄えが良い物は強いんだよなぁ」
「でも武具じゃなさそうよね⋯どう使うのかしら」
姉二人は使い方がわからずに困惑しているようだ。だが俺はこれの用途も使用方もバッチリ分かっている。なぜならば。
「これはねー、こうやって上に向けて紐を引くといいんだよ」
パァン!っと炸裂音がして色とりどりの紙が飛び出した。そう、クラッカーである。誰だこんなのドロップ枠に入れたのは。使い道が限定的すぎる⋯そもそも武器や防具ですらない。
「うおっ!なんだこりゃ!?」
辺りに乾いた音が響いて全員が警戒態勢に入った。だが特段それ以外の効果がないと分かって少しずつ落ち着きを取り戻していった。先に説明しておけばよかったね。でも久々に見た前世のアイテムなんだ、ちょっとテンション上がった。
「これだ!この音に間違いない!あの夜聞いた物と同じだ!」
クラッカーの破裂音に聞き覚えがあったようで、エレノアは突然興奮したように俺がクラッカーを使えたことを根掘り葉掘り聞いて来たけど、そんな大層なものではないのです。いいですか、落ち着いて聞いて下さい。
「えーっとこれはお祝いする時に使う物で、盛り上がります」
「それだけ?」
「え?うん」
それだけ。実際クラッカーって祝い事のパーティ以外では全く見ないよなぁ。作ってる人達はあれで稼いで食っていけてるのだろうかと心配になることがあった。だがよく考えると人口だけはアホほど多かった世界だ。毎日が誰かの誕生日なのでそれなりに需要があったのだろう。自分が使った覚えがあるのは友人(詳細は忘却)を祝うために数回使った程度だけどね。
「確認するけどよ、お前が襲われた日って誕生日だったんだよな?」
「そうだ」
「で、これと同じ音が鳴ってビックリしてそのまま逃げ出してきたと⋯」
「人聞きが悪いな。明かりを落とした寝室で爆発が起きれば誰でも避難するだろう」
「ただのドッキリで祝われただけなんじゃないの?」
俺がそう言うとエレノアが固まった。だってなぁ、殺されかけた~とか大層な事言って、ここ何日か警戒してるけど何も起きないんだもの。そもそもこんなちょっと残念な王女様、殺さなくても別に問題はなさそうに見えるしな。今も目の前でプルプルしながら顔真っ赤にしてるし。
「そ、それでは、その⋯私が逃げ回っていたこの数カ月は⋯」
「全くの無駄だったわね」
ティナが切って捨てると耐えられなくなったのか、遂に膝から崩れ落ちた。要約すると、誕生日にサプライズでクラッカーを使われた所、寝起きで正常な判断ができずに逃亡。そのまま家出状態ってことか。うーんこの王女様⋯。
「ともかく原因は分かったんだ。一旦城に戻ってみたらどうだ?私達も一緒に行ってやるからさ」
「ほ、本当か!?それは助かる!」
「まだ護衛任務が終わったとは言えないしねぇ、そこで安全が保証されればいいのだけど」
報酬の相談もしなきゃね~とティナは軽く言ってるけど王城に行くのかぁ⋯なんか権力者の巣窟って感じがして嫌だな。城に招かれてノコノコ謁見の間まで行くと、他の貴族連中とかからやっかみを受けるんだろ?そして正論パンチで言い負かすと逆恨みされて様々な妨害工作を受ける。俺は詳しいんだ。
姉達はなにか手土産があったほうが良いのだろうかと話し合ってるけど、王女様が土産で良いんじゃないですかね⋯扱い的には保護って感じにしとけばなんとかなるだろ。逆に俺達が誘拐犯だとか誤解されたらマジでヤバいから口裏を合わせておく必要があるな。
そんな事を考えつつ一行は再び地上を目指すのであった。いつになったらこのダンジョン制覇できんの?もうGは見たくないんだけど、進もうとすると何かしら起きるから女神の思惑を感じるな。




