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第35話 戦っちゃった

 エレノアの依頼を受けることになった俺達は一応戦力の確認という体でギルドに行って模擬戦を行うことになった。俺もAランク冒険者の実力は気になるし、実際に人が戦ってるところは姉達しか見たこと無いからなー。


「ルールは致命傷は避けること、以上だ。では参られよ」


「いくぞッラァァァー!」


 自信満々のエレノア氏であったが、次の瞬間にはクリスの一撃をモロに受け宙に舞って地面と激突する結果となった。嘘、私の姉、強すぎ⋯!?


「あれぇー?っかしいな、最近じいとしか打ち合ってなかったから鈍ったかな⋯」


 何やらブツブツ言っているがまずは体の埃を払って、どうぞ。


「うーん、次はティナさんに頼むとしよう」


「え?私?いいけど近接戦は苦手だからこういうのしか持ってないわよ」


 そう言うと姉二号は杖の先端を取り外して細身の刃物になったそれを手に持った。仕込み杖か⋯中々やるじゃないか。武器にギミックを仕込ませるのは全男の子の夢であるし、もう一つの夢である巨乳おっぱいも備えているとか全く勝てる気がしない。やはり逆らってはいけないのだ。(震え)


「うむ構わん!それではいざ尋常に!」


 そう言って構えたエレノアは再び宙に舞った。これはこいつが弱いのか姉達が強すぎるのかどっちだ?今までゴブリンとかギルドの暇人しか相手にしてなかったから判断がつかないな。


「エレノアさん、この人達は当ギルドの希望の星ですからね!ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできませんよ!」


 見に来ていた受付嬢のニナさんが俺を抱っこしながら野次を飛ばしていた。お仕事はどうしたの?俺がいると結構な確率で抱き上げてくるんだけどサボってない?そう聞くと「お昼は暇だからいいんです」とのこと。じゃあ溜まってる事務仕事しなさいよ⋯奥で死にそうな顔してる人がいるの知ってんだからな。


「私が世間知らずだったか⋯ギルドの利用はダンジョンでの撃破報告と換金のみだったので不明であったな」


「私達は自分で言うのもなんだが結構な魔力してっからな。なんなら魔法抜きでやるかい?」


 確かに実力が拮抗している方が良い訓練になるとは思う。今のままじゃ瞬殺してるだけで確認もクソもないしな。でも姉一号は素の状態でも相当強いけど大丈夫だろうか


「そうだな、正直言うと今のままでは君達に叶いそうもない。技術だけならなんとかなるかも知れないが、それでもいいのなら頼む」


 そうしてラウンド3が始まった。まずクリスが牽制の一太刀を上から振り下ろし、左で受け止めたエレノアはそのまま右手で掬い上げるように剣を振る。しかしそれを読んでいたのか、クリスはショートソードと軽装の身軽さを活かして剣が届く前に素早く左手側に回り込み、そのまま足払いを仕掛けるが、軽く足を浮かせて回避された。


 その瞬間を見逃さずにクリスは肩を押し付けそのまま超接近戦になった。エレノアは苦し紛れに剣を振るったりするが、出鼻で手首を抑えられたり、勢いが乗る前に手甲で逸らされたりと良いようにいなされている。


 この間合いではどうしても手が塞がっているエレノアの方が不利だ。折角のロングソードの長さもここまで接近を許してしまえばただの重しでしか無い。二刀流を上手く活かせない状況を打開しようかと思ったのか、大きくバックステップをして一息つこうと思ったのだろうが、クリスはそれを許さない。


 下がった分だけ踏み込んで間合いを離さず更に接近したクリスは、相手の軸足である左足を踏んで逃げられないようにし、首筋に刀身を押し付けて勝負は終わった。


「⋯⋯降参だ。いやぁ、姉君は強いな!近距離での立ち回りが秀逸だ!」


 いつの間にか集まっていたギャラリー達も湧き上がって各々模擬戦を始めている。今の一戦が刺激になったのか、同じような状況を作り出したり、ああでもないこうでもないと対策をしようとする人達もいる。しかし魔力抜きでもAランクを圧倒する姉かぁ⋯エレノアが本当に実力だけで上がったのかはわからないけどやっぱ異常な強さしてんぜ。異世界(で出会った姉の)チート(に頼ってヒモ)生活始めました。


「そうでもないさ。私はしばらく妖精なしで過ごしてたからね、こういうことばっかしてただけだよ」


「ほう、やはり強さを支えるのは地道な修練のみということだな。いや、いい勉強になった」


「クリスさんはやっぱりお強いですねぇ、対人が重視されてる世の中なら引く手数多ですよ!」


 この世界は対人戦はあんまり人気があるコンテンツではない。聞いた話ではここ数百年戦争というものが起こっていないらしい(そもそも戦争という言葉自体死語みたいだった)。そして、盗賊等がいないのだ。


 それなりに戦う手段があればダンジョンに潜って稼いだほうがリスクがないし、食うに困れば兵士として軍に志願すれば危険はあれど腹は膨れるのだ。そしてすぐに死の森へ送られて、激戦地で一定期間生き延びられれば正規兵として雇用されるか、褒章を貰って戻りそれなりの生活が送られる。


 戦地帰りは歴戦の兵として貴族の庶子の師として迎えられたり、養成所の教官として雇用先が用意されていたりで平民から抜け出す出世コースという側面もある。まぁ問題は生存率が結構低めで現役を引退するまでに生きていられる確率は一割にも満たないそうなんだが⋯。


そんなわけでクリスの父親はそんな茨の道を若くして踏破した結構なツワモノだったのだ。ちなみに捕らえられた犯罪者や孤児達はそのまま奴隷にされ死ぬか戦闘不能になるまで現地で雇用(強制)される。こわ。


 誰もがそんな恐ろしい場所に行きたくないのでこの世界は結構犯罪率が低い。低いだけで無くはないんだけど、衛兵さんたちは兵士不足で自分が森に行かないために日夜真面目にお仕事をしているらしい。その甲斐あってか表向きは現代日本並の治安の良さである。しかし裏ではこっそり子供を誘拐して貴人に売り払う商売をしている輩もいるので気が抜けない。





 結局今日一日模擬戦漬けで気付けば夕方になっていた。帰り道で買ってもらったいつもの肉串焼きを頬張っているとエレノアが話しかけてきた。


「しかし君の姉君達は強いな!私でも太刀打ち出来ないとは思いもしなかったぞ!」


「へっへーん、でしょー?」


「斯様な強者に守られていると安心だな!ところでアリス嬢は何が出来るのだ?」


「え?」


 お、俺⋯⋯何出来るんだろ?えーっと、肉食べれます!違う、好みの話じゃない。最近キャッチボールがうまくなりました!子供か。子供だった。


 俺がうんうん唸って考えているとティナが助け舟を出してくれた。


「アリスちゃんは経済担当なのよ。この子のおかげでお金に困らなくなったんだから~」


 俺が焼き肉のタレの考案者であると説明して主な収入源は主にこっちであると教えると、エレノアは大層驚いたようで顔を近づけてきた。そういや俺の金で生活してるみたいなもんだった。ヒモじゃなかったわ⋯。


「あのソースを作った御仁だったのか!?あれは素晴らしい!瓶一本持ち込むだけでダンジョン内の食事が素晴らしい馳走になるのだ!」


 ここにもタレのファンがいたらしい。俺の手を握ってブンブン握手してきてるけど、この触り方ならいやらしい感じがしないし、まぁいいか。今ではどこに行っても焼肉のタレ置いてあるし、最近じゃ肉以外に野菜やパンにつけて食うのも流行りだした。あの味は何にでも合うのだよ。俺も前世で金が無い時は米に焼肉のタレかけただけの物を食ってた頃があった。朧気だが。


「やはり子は宝だな、何があっても守らねばならぬ。それを再認識したよ」


 マトモなこと言ってる時は結構良い統治しそうなんだけどなぁこの人。周りに子供を近寄らせなければ大丈夫か。そう言えばタレの話をしながら肉を食っていて前から気になっていた事を思い出したのだが、これ何の肉なんだ?屋台のおっちゃんも肉としか言わないし、出処も分からん。


 皆にそう聞いてみると「ダンジョンの低階層でドロップする肉」ということが分かった。その辺りの野犬や猪は臭みがあって、そのまま料理に出すのは難しいから干し肉にして冒険者達や商人などの旅人が買っていくらしい。


 しかし俺の記憶の中にこんな味の肉は存在しない。あっさりしているわけでもなければ牛のこってり感や豚特有の脂感もない。蛇とか兎は食ったこと無いけど鶏肉に近いらしいからなぁ。そもそもどの部位かも想像がつかない。結局何の肉なんだ?


 再びクリスに聞いてみると「肉は肉だろ」という大雑把な答えしか帰ってこなかった。栄養豊富らしく食いすぎると太るらしい。それは身を持って分かっているけど、そんな物を毎日買い与えるのはどういうことなのか。謎肉の謎は深まっていくばかりであった。

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