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第33話 襲われちゃった

デススト2PC版が出たのでしばらく更新が滞るかも知れません。

 突如として目の前に現れた双剣使いの女性は声高々に俺の保護を申し出てきた。


「その子を離せ!先程から聞こえていた泣き声はその子の物なのだろう!」


「あー⋯、まぁそうだけど」


「やはりな。多少魔法が使える子供をダンジョンに無理矢理連れてきて魔物の群れに放り込むなど⋯許さん!」


「いや、ちが」


「何が違うというのだ!そんなに愛らしい子を危険な目に合わせおって、成敗してくれるわ!」


 この人盛大に勘違いしていらっしゃる。そもそも俺が行きたいって言ってるんだし、むしろ俺が連れてきた側なんだよなぁ。道中は全部お任せだから囮にすらなりゃしねえし。


「あの人魅了にかかってるみたいだね」


「ああ⋯明らかの正気の目つきじゃないなあれは。私もあんなのだったってのか」


「アンタの場合はもっと酷いけどね」


 姉がガックリ肩を落としていらっしゃる。気落ちするのは分かるけど、もう目の前に女剣士が武器振りかぶってきてますよ?


「ハァ⋯ったく、おらよ!」


 姉はミスリル刀と鉄剣で相手の二刀流を受け止め、そのままの流れで思いっきり頭突きをかました。うわーすっごい痛そう。っていうか音が痛い。結構デカ目でゴヅンって音が響いたんだけど骨逝ってない?


「うぐっ!⋯むう、君達はなんだ?」


「どうやら治ったみたいね~」


「たんこぶが⋯ぶふっ」


 笑ってスマン。相手方の額に割と大きめの突起物が出来てしまって若干ツボに入ってしまいました。姉の方は別に問題なさそうだから身体強化の差なのかもしれない。


「あなたは魅了にかかってたみたいだから、戻すのにちょっと衝撃を与えたわ。具合はどう?」


「なんだと?この階層にはそんな魔物は居ないはずだが⋯」


「実際にかかってたんだから誰かにやられたんじゃねえの?」


 嘘は言っていない。その誰かを話していないだけだ⋯。うちの妹がギャン泣きしたら遠くのあなたまで被害に遭いました、なんて説明出来るわけがない。だってこいつ鎧がやたらピカピカだし武器も新品みたいに輝いてて明らかにカタギの雰囲気じゃない。


 俺が知ってる冒険者って大体がヘコみやサビが多い鎧を着て、武器もそろそろ整備に出したらどうなんだってくらい傷が多いのが普通なんだ。それなのに目の前の女性の装備は明らかに整いすぎている。その辺りの一般冒険者が普段遣いするものではない。


「まぁ、そうかもしれないな。ありがとう、礼を言う。私の名はエレノア。ただのエレノアだ」


 エレノア、その名前は聞いたことがある。受付嬢のニナさんがお熱の冒険者だったか?っていうかただのエレノアってなんだよ。まるで別のエレノアがあるみたいじゃねーか。偽名にしか思えん。あやしい。それでも名乗られればこちらも名乗り返さねばならぬのが世の情け。某等三人はそれぞれ自己紹介をした。


「なるほど?最近魔力が使えるようになった妹を連れて体験させていたのか」


 そういうことである。そういうことにした。泣いたのは純粋にクリーナーに驚いたということにもした。だってあんな大群で来るとは思わないじゃないか⋯一匹二匹ならまだしも数十匹だぜ。しかもネズミから子犬サイズまでよりどりみどりだ!よりどりたくねぇ!帰れ!


「それで貴公等はこれからどうするのだ?これも何かの縁だ、構わなければ同行させて頂きたいのが」


「私達も魅了にかかっちゃってね~、対策のために一旦戻るつもりなのよ~」


「それもそうか⋯では私も戻ることにしよう」


 俺達は来た道を引き返して街に帰ってきた。魔法具屋で使い捨ての精神耐性の護符をいくつか購入して、ギルドに成果を報告してから今日は帰ろうと思ったのだが⋯。なんかいつまでもくっついてきてるのがいる。


「オイ、お前どこまで着いてくる気だ。ここは私達の宿だぞ」


「ぐ、偶然だな!私の取っている宿もここなのだ!」


 嘘つけ。さっきカウンターで金払ってるの見たぞ。なんなんだこいつは⋯もしや俺が魅了の発生元だとバレたか?このまま異端審問にでもかけるつもりかもしれん、いつでも逃げられるように警戒だけはしておこう。なんか懐かしいな?


「ここは私達の部屋なんだが⋯」


「今日は客が多いようでな!相部屋にしてくれと店主から言われたのだ!」


 マジで怪しすぎる。まぁこっちは本来四人部屋なのを人数が半端だから、丸々借り切って三人で使ってるので店から言われたらしょうがないんだが。それにしたってこいつの挙動はおかしい。やたらと俺をチラチラ見てくるし、前を歩いてると背後に謎の気配を感じることが多い。


「女同士だから別にいいんだけどねー、妙な動きをしたら分かるわよね?」


「そんな事は絶対にしない!女神に誓って!」


 その晩、やりやがった。飯を食って体も拭いてスヤスヤ寝こけてる俺に急に抱きついてきやがった。「キャー!」なんて可愛らしい悲鳴を上げてしまってちょっぴり恥ずい。見た目は幼女でも頭脳はオスなのだよ。今のところはな。


「テメェ、うちの妹に何してくれやがる!覚悟はできてんだろうな!?」


 姉がマジ切れである。ミスリルの刀まで抜いて魔力も限界まで放出して臨戦態勢を取っている。ソウルイーターの時は吸われてたのと魔法付与に回していたから分からなかったけど、全力全開の状態のクリスはマジですごい。窓がガタガタして部屋の全体がギシギシと家鳴りを連続で鳴らすほどの圧がある。


「すっ、すまない⋯だが、君達はよく平気で居られるな」


「何を言っているのあなた?」


「ここまで素晴らしい少女は見たことがない⋯⋯小さくて、抱けば潰れてしまいそうで、声までも美しい儚げな幼子など、襲わないほうがどうかしている」


 どうかしてるのはお前だ。やけに見てくると思ったらただの変態(ペドフィリア)だったか。スキンシップ多めだけどあくまで保護者の視点で接してくれるティナの方が全然マシだなこれ。うん、有罪。古今東西子供に手を出した犯罪者の末路はリンチと相場が決まっているのだよ。


「そうか。覚悟は決まったと見える」


 姉がスチャッと刀を振り上げて冷たい目をした。


「ままま待ってくれ!私が悪かった!謝る!許してくれ!いや、許してください!」


「ダメだ、許さん。お前は妹に手を出そうとした」


「こう見えても私は貴族の出だ!多少のコネならある!もし許してくれるならば可能な限りの便宜を図ろう、どうだ!?」


 やっぱ貴族だったかこいつ。うわー、関わりたくねぇ⋯。この世界でお近づきになりたくない生物ナンバーワンじゃねえか。ナンバーツーはクリーナー。さっき決まった。


「クソッ、貴族か⋯ここで殺すと私達がお尋ね者になっちまうな」


「それも黒髪だなんて王族の直系よね、かなり面倒だわ」


 どうするか。下手にしばけなくなったな。不用意に近づくと拐われて、施設送りにされると噂の厄介な連中のトップ層の一人がこいつなのか⋯。負い目があるだろうから多少言いくるめて放置してもいい気がするが。


「とりあえず眠いし、寝ようよ⋯」


「そうだな。お前は床で寝ろよ。次はないからな」


 そうして色々あった一日もようやく終わりを告げた。俺は襲われないように姉二人に挟まれるようにして眠りについた。これ、ほんとどうすんだろな⋯明日の俺にぶん投げるか、おやすみ。

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