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第3話 ナンパされちゃった(女に)

主人公のイメージはENDER LILIESのリリィちゃんの目を赤くした感じです

「なんて?」


 俺ってこんなに感情のコントロールが出来なかったかなー。まぁ痛い物は痛いし我慢するのもしんどいから、とりあえず泣き喚いておくか。そんなことを思いつつ流れに身を任せていた。


 そこへ急に現れて薬と思しき液体を譲ってくれた、赤い髪をショートボブみたいに短く切り揃えた細マッチョな女性に、せめてものお礼にと笑顔を見せると、次のように宣った。


「君、本当にかわいいね!赤い色のパッチリお目々に癖っ毛の白くて長い髪!お人形さんみたいだねぇ。この辺の娘?私、依頼で近くの村に来てるんだけどさぁ、よかったらお昼でも一緒にどうかな?」


 何この人こわっ 傷の手当してくれたのは助かったし、薬?の性能もまぁまぁおかしくて驚いたけどテンションヤバいだろ。鼻息がフンスフンス荒いし目がぐるぐるしてる。この世界の住人ってのは皆こうなのか?


「まだ足が痛むかな?おんぶしてあげるからさぁ、行こうよ!ホラホラ遠慮なんてしなくていいから。お姉さんが美味しいご飯食べさせてあげる。それから買い物でもしよう!」


 少々戸惑っていたがやたら親切にしてくれるこの人に、敵意はなさそうだし付いていってもいいかな?なんて思っておぶさってしまった。気遣ってくれたことに対してもっとお礼が言いたいし、近くに村があるというならありがたいが、何か聞かれた時に説明がめんどうだな。どうしたものか。


「そう言えば君、名前は?私はクリスって言うんだ。相棒と一緒にすぐそこのレダ村に護衛で来ててさぁ、休みは貰えたんだけど辺鄙な所だからちょうど暇してたんだよねー」


「あたしの名前ですか?あたしは、う"うっ」


 あれ?そういえば俺ってなんて名前だっけ?思い出せない。名前どころか住んでいる所も家族すらも記憶にない。俺は何をしていたんだ?地球のことや日本の常識や文化、雑学などは覚えているが自分の事となると霧がかかったように朧気になり、頭痛がしてくる。


「頭が⋯⋯思い出せない⋯⋯あたしは、誰?名前も家も分からない」


 やべぇどうしよう。めっちゃ不安になってきてまた涙が出てきた。


「思い出せない!?そりゃ大変だ!あれだけ傷だらけだったんだ。頭も打っているのかもしれないな!早く宿屋に行って横になろう。そこでお湯をもらって体を拭いてあげるからさぁ!」


 滅茶苦茶グイグイ来るなこの人。こっちが弱ってるからって取って食う気じゃないだろうな?今更ながら付いて行って良いものか不安になってしまった。しかしこの人体格良いな、女性にしては広めの肩幅に、実用的な少し硬めだけどしなやかな筋肉が体にフィットして気持ちいい。心地よい揺れも相まってなんだか眠気が⋯⋯


「スゥ⋯スゥ⋯」


「寝ちゃったか。こんな森の中で傷だらけで泣いて疲れたんだろうなぁ。着ている物もボロボロだし早く帰って村の人からこの子の服を譲ってもらわなきゃ。金はティナに借りればいいか、アイツもこんなかわいい子が困ってたら嫌とは言わないでしょ」


 ブツブツと訳のわからない妄想をひとりごちながらクリスは森の出口へ歩いていくのであった。



 ~~~~~



 私の幼馴染は帰ってくるなり、門番の人や集まってきた人を尻目に、真っ先に宿屋の二階に借りている自分達の部屋へ駆け込んだので急いで追いかけてきた。背負っていた見知らぬ女の子が私達のベッドに寝かされている。どこから連れてきたのか。


「で?アンタは戻って早々宿屋に女の子連れ込んでどうしたっていうのよ」


「いやぁ例の何かが降ってきた所に倒れててさぁ、めっちゃかわいいだろ?なんつーか守りたくなるっていうかさぁ。そうだ、この子は妹にしよう!都合よく何も覚えてないみたいだしティナもそれでいいだろ?」


 何言ってんだコイツ!普段から残念な部分が多いと思っていたが、ついに本能まで抑えきれなくなったのだろうか?それにしては言動が怪しい気がする。


「覚えてないですって?どこまで忘れてるか知らないけど、まぁその子の身元については後から村の人に聞くとしてさ。とりあえずあの光が落ちてきた場所に行ったんでしょ?その報告からしなさいよ」


「この子の手当が先だって!足を捻挫してるみたいだし、体中に傷があったんだ。ポーションは使っといたからある程度は治ってるけど、泥だらけだし服も駄目になってるから脱がそう」


 無抵抗の女の子の服を脱がそうとするんじゃない!介抱するならまだしも荒い鼻息のせいで下心が隠しきれてないわよ!?


「ちょっあれを使ったの!?この辺じゃ薬は高いからいざという時のとっておきだったのに!私のヒールもそんなに効果良くないんだから、どっちかが死にかけた時にって買ったんでしょ!?」


「こんなかわいい子が助かるならそれでいいじゃん。さぁヌギヌギしましょうね~。ティナは包帯と新しい服を買って来てくれよ。金はないからそっちで何とかしてくれないか?早く綺麗な服を着せてあげないとかわいそうだよ」


 あれ?なんかおかしいな。元々頭が良いとは言えなかった相棒だけど、ここまで来ると関係を解消したくなってくる。森で何かがあったのか、普段からは考えられない行動をしているような。


「ちょっと目を見せてみなさい。っ⋯やっぱりね。アンタ魅了くらってるわよ」


「え?冗談言うなよ、それより早く新しい服を」


 バチーーーン!!


 とてもいい音で私の平手打ちが炸裂した。精神汚染の対処はこれが一番なのだ。その音と一緒に目がぐるぐるしていた相棒(笑)の瞳に正気の光が戻る。


「あ、れ?ティナじゃない。ここは?森じゃなかったっけ?」


「多分その子になにかされたのよ。目が覚めるまで交代で監視するわよ」


「どゆこと?」


 とりあえず村長を連れてきて身元確認をしておくか⋯⋯ついでに余ってる服と包帯も貰おう。あと体を拭くお湯もか。たった小一時間でなんだかどっと疲れたわ。



 ~~~~~



「ん⋯⋯」


「目が覚めたか」


 気がつくと知らない木造の部屋のベッドの上に寝かされていた。目の前の人が連れてきてくれたのかな、クリスさんだっけ?それとその後ろにもう一人、青い髪をツインテールみたいにした人が腕を組んでこっちを見てきている。二人とも歳の頃は十五歳くらいだろうか?外人さんみたいな出で立ちなのでよく分からないけど二十歳(ハタチ)はないだろう。


「お、おはようございます」


「おはよう。早速だが聞きたいことがある」


「アッハイ」


「お前はあの森で何をしていた?」


 やっべー!さっきのナンパな雰囲気と違ってかなりトゲトゲしいぞ!?っていうか危惧していた質疑応答タイムじゃんかどうしようどうする俺。そういや記憶喪失だったな、それで行こう。(この間0.5秒)


「わ、わかりません」


「わからない?知らないとか言えないじゃなく、わからないか。じゃあ質問を変えよう。お前はなんだ?」


 マジでヤバイ。目つきが変わって腰の剣に手をかけてる。返答によっては斬るってやつだこれ。神様関連の事は流石に黙っておいた方がいいだろうな、絶対に頭がおかしいと思われる。


「それもわかりません。覚えてないんです。自分が何をしてたのか、何者かも。気付いたら空の上で、落ちて来てから痛くて泣いてたら、あなたに助けてもらいました」


「ふぅん⋯⋯空の上ねぇ。嘘はついていないようだけど、ティナはどう思う?」


「わかんないけど縄で繋いで教会に引っ張って行けばいいんじゃない?あそこなら水晶で名前が分かるし、犯罪に関わってるならそれも出るから」


 教会!?そこへ行けって自称女神に言われたばかりなのに、これは渡りに船だ!とりあえず乗っかっておこう。


「教会に行けば分かるんですか!?なら行きたいです!あと犯罪ってどういうことですか?」


「あぁ、教会に置いてある水晶にさわると神様が教えてくれるんだよ。犯罪歴もな。犯罪者はそこで裁かれて、そのまま奴隷になる」


「ど、奴隷?」


「そ、奴隷。もし何かやってたら赤く光るの。お前は整ってる顔で珍しい見た目だし、小さくて労働は無理だろうからそっち方面の需要で高く売れるだろうなぁ」


 これ詰んだか?もし前世の俺が犯罪的行為に手を染めるアウトローな人生を送っていたらバレてしまうかもしれない。いや、地球の神様のお墨付きで転生したんだし流石にノーカンだよな!?新しい人生なのに0歳で変態向けの奴隷落ちなんて勘弁してくれ!


「無駄に怖がらせるんじゃないわよ、ブルブル震えてるじゃない。罪を犯してなくてもこの国の孤児院はマトモだから、そこに入れるまでは面倒見てあげるわ。とりあえずいつまでも名前が無いんじゃ不便だし、教会に連れて行くまでの仮の名前でも決めましょうか」


「じゃあポチでどうだ?」


「却下、犬じゃないのよ」


 こっちでも犬はポチなのか(困惑) しかし名前か、自分の名前なんて決めようと思ってもなんだか思いつかないな。ゲームのキャラなんてずっと同じ名前を使い回してたし。ってこんなどうでもいいことは覚えてるのか。


「見た目で思いつきませんか?あたしは鏡で見てないからわからないんですけど」


「そう言えば記憶喪失だったわね。これでどうかしら?水壁(アクアウォール)


 おお、水が薄い壁みたいに目の前に広がって行く。魔法ってやつか!?すげぇ初めて見た!当たり前だけど!ぼんやりだけど俺の姿が確認出来る。しかもここに来た時の襤褸切れじゃなくて、白いワンピースみたいな服を着てるじゃないか。


 体中に傷があったはずなのに見る限りは白い肌しか無いし、足首には包帯も巻かれている。着替えを用意して手厚く治療までしてくれたってことか。ありがてぇ、ありがてぇ⋯⋯。


「これがあたしですか?瞳が赤いし、なんかちっちゃくて、かわいい」


「自分で言うなよ。で、どうだ?自分で決められないならポチにするぞ」


「えっちょっと待ってください」


 どうすっか、自分の名前かー。見てる限りフワフワで可愛らしい女の子だしせめてポチは回避せねば。そういやウサギでこんな見た目のキャラがアニメに居たな。じゃあそこから取るか。


「⋯⋯アリス。私はアリスでどうです?」


「いいじゃないの。アリスちゃんね、呼びやすいしなんだかしっくりくるわ。あ、自己紹介がまだだったわね。私はティナ。少しの間よろしくね」


「ポチは駄目なのか(ボソリ)」


 俺はアリス。なんだか他人事みたいな感じがするけど慣れるしかあるまい。とにかくこの人達に付いて行って教会で何かをする。でもこのままだと孤児院か奴隷落ちコースかなぁ⋯どちらも嫌すぎるからいつでも逃げられるようにだけはしておこう。

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