第28話 集まっちゃった
もう上昇した状態での魔力操作が出来ているのか、俺達が止める間もなくティナはかなりの速度で走って行ってしまった⋯。本当に何をするつもりなのか、帰ってきてから聞かねばなるまい。
「と言うわけで連れてきたわ」
「なんだいこんな朝っぱらから⋯おや?こちらのお嬢さんはお客さんかい?」
そういや復活したロジータさんのことを教えてなかったかも知れない。まぁこんな事案をどう伝えようか、そもそも伝えまいか迷ってたってのもあるが⋯。
「この人はね、ロジータおばあちゃん。ちょっと昨日色々あって回復魔法かけたら若返っちゃったの~」
「えぇ⋯どういうことそれ⋯⋯」
俺もよくわかんない。ご飯食べただけだし。尚、当の本人は手をひらひらさせて軽い挨拶だけして今だに薪を割っている。どんだけ拾ってきたんですかね?
「でね、このままじゃレオさんが可哀想だから夫婦揃って若くしようと思ったんだけど、やっぱり他の人が黙ってないじゃない?ただでさえ、ここには若い働き手がセイニャンくらいしかいないんだし」
「それはまぁそうだが⋯私ももう50近いし、他の若い連中はここ10年で全員他の村や街に行っちまったし⋯」
「だから今、ガレラ村にいる人達を同じ様に若返らせて頑張ってもらおうかと思ったのよ~。どうせ後々領主様が来たら色々問い詰められるし、その時『動ける老人達は皆揃ってソウルイーターとの戦いで討ち死にした。今居る若者は脅威が去ったから移住を募ってきた』って筋書きで通せるかと思ってね?」
うーむ⋯大丈夫だろうか?まぁここの領主がガレラ村を放置気味だったから、多少曖昧な感じでもなんとかなるとは思うが。
「そりゃいい考えだな、私は賛成だ!故郷が滅ぶより随分マシだしな!」
姉もそうだそうだと言っております。ホントに理解してんのか?こっちに帰ってきても訓練の相手に困らない程度に思ってないか?
「そんな事して本当に平気なの?もしも偉い人に知られちゃったら、あたしだけじゃなくてティナお姉ちゃんまで狙われるんだよ?」
「それも考えてるわ。アリスちゃんとクリスがソウルイーターを倒したっていうのが村には伝わってるけど、改めてそこも修正する必要があるから、後で全員村長の家に集めた時に話してもらうわ。私達の事は絶対に秘密にしてくださいってね。ついでにそこで生命復元も使うってことで」
うーん⋯まぁこっちに損はないが⋯⋯そもそも若返りたくない人はどうするんだ?
「嫌がられたらどうする?まだ子供が生きてて若くなるのに抵抗がある人や、連れ合いを亡くして長生きしたくない人も居るんだぞ」
「そういう人には魔力を抑えた本来の効果の生命復元をかけるわ。体の不調や病気ならほとんどが治せるはず。寿命が伸びなくてもそれなら断る人は居ないわよね?」
「それなら⋯まぁ話だけはしてみるが、いつやるんだい?今も持病とかで苦しんでる人は多いから、なるべく早い方が良いだけどさ」
「そうね~、それじゃお昼が過ぎたら来るように御触れを出して集めてもらえます?」
そして俺達は一旦家に帰ってお昼まで時間を潰した。ついでに魔力米の検証もしたが、魔法で出した水を使って俺が手ずから炊いた米のみに上昇効果があるらしい。これが世間にバレると一生米を炊くだけの機械(妖精)になりそうで本当に嫌だな⋯手が荒れ放題の未来待ったナシだ。
ちなみに検証方法は、俺が炊いた魔力水入り米(昨日と同じ物)、母が炊いた魔力水入り米、俺が炊いた普通の水の米、母が炊いた普通の水の米で並べて出して妖精の反応を伺ったというものだ。予想通り昨日と同じ米にだけ妖精が群がって、お腹いっぱい食べた妖精達はどこか満足気な様子だった。俺も食った。
普通の水と違って、魔法で出した水には多分に魔力が含まれているので、妖精の俺が水を美味しく感じていた原因もそれ、だそうだ。そこに手を突っ込むことで俺が持っている膨大な魔力が水に溶け込み、他の妖精の大幅な強化が可能なのではないか?ということで一応の結論は出た。普通の水は不純物があって魔力が混ざりにくいとかもあるんかね?まぁ魔力水はそのまま飲んでも問題ないレベルだし恐らくそうだろう。
昼ご飯を食べた俺とクリスとティナの三人は数日ぶりに村長の家に来た。
「おや、来たようだね。皆、話した通りだ!希望者は前へ出な!細かい注文は後で聞くから!」
村長の号令で施術を受ける人達が動いた。まぁ全員だなこれ。無償で若返れるか健康な体を取り戻せるなら断る人なんか居ないか⋯問題はティナの魔力が持つかだが。
「本当に皆いいのかい?こう言っちゃ何だが、半ば今までの人生を捨てることになるんだよ?」
「構わんさ、村長。俺達は今まで死ぬのを待つだけだったんだ。少しでも力になってやりたいんだ」
「私らもよ。もう子供達も成長して、他の所に根付いているから帰ってくることも無いと思うわ」
「元々クリスちゃんとアリスちゃんのことは、墓の中に持っていくつもりだったんじゃ、今更若い頃からやり直したとして、それは変わらんよ」
前に出たお爺さんとお婆さんの代表みたいな二人がそう言ってくれる。そして、ティナの生命復元が始まった。集まったのは四十人、若返ったのはほぼ全員。ただし、例外が一人だけ。
「村長、残念だけどあなただけはそのままで居てもらうことになるわ⋯。代替わりしたなんて報告できないし、身元も明かせなくなるしね⋯⋯」
「私は軽くかけてもらうだけでいいさ。元々書類仕事なんかで少し腰と肩を傷めてるだけだったしさ」
「もしもこの先、後継者が出来たらもう一回だけこの力を使うことにするからそれまで我慢して」
「それも要らない。これでも前任者だった父が死んでから十年以上頑張ったんだ、若返った中から出来るやつでも見つけて、のんびり老後を楽しみたいよ」
壊滅的な被害を受け始めてからここまで頑張ってきたなら、確かにこれ以上頑張りたくないって思いも出てくるか。燃え尽き症候群って奴かな?ちなみに、若返り具合も操作出来るようで不自然に若者だけにならないように、夫婦で生き残っていた人は二十代、独り者だった場合は十代、と言った風に振り分けて全員にかけ終わった。
「あぁ⋯この感覚、背中が伸びる力強い身体⋯懐かしい⋯⋯」
「私、目が普通に見える!もう、遠くも、近くも、はっきりしないくらいだったのに!」
「今までボヤケていた意識がはっきりしている!昔のことも全て思い出せる!」
「お前こんな顔してたっけなぁ、相変わらず綺麗だなぁ」
「あなたこそさっきと変わらず男前ね。でも、あの頃を思い出すわ」
この村の人口が戻る日も近いかも知れない。移住なんかに頼らずな。ちなみにレオさんだけはロジータさんに合わせて、夫婦なのに限界の十代にまで若返らせたが、なんというか⋯スッゲェイケメンだった。金髪碧眼の王子様系なのにジジイ口調とか、他の人の性癖が若干壊れそうで恐ろしい物を見たぜ。愛する妻が居るから間違いは絶対起こらないのが安心ポイントだな!
あと元々生き残っていた数少ない若い三十~四十代の親世代も軽く生命復元をかけて体調を治す程度にしておいた。流石にこの先、子孫に会う可能性がある人をやっちゃうとヤバいからね。マイマザーが十代になっちゃうとかちょっと⋯いやかなり抵抗あるしな。ちなみにウチのお母さんとセイニャン家の両親しかいなかった。
この村でのやること、やらないといけないこともそろそろ無くなってきたか?やりすぎた感じはあるけど、そろそろダンジョンの一つでも攻略しないと女神から苦情がきそうだしなぁ⋯。明日は姉二人に相談してみよう。




