第27話 家族になっちゃった
あー疲れた。あの後ティナも確認したいことがあるってんで今日はこっちの家に泊まるので一緒に帰ってきたんだ。だがそれが悪かった。玄関に入ってすぐ俺とティナの二人だけ姉に正座を強要されて理由も分からずそれに従った。⋯石畳の上で。
柔らかい畳の上とか土の上なら前世で経験があるが、これが中々に辛い。分からない人は、フローリングの上でやってみるといい。膝と踝が死ぬ。この体になってから、正座自体やってなかったからどちらにしろ死んだのだが。
「二人の手前あそこで説教をするワケにはいかなかったからな。なにか言うことは?」
「すいませんでした⋯」
「ごめんなさぁぃ⋯」
俺達二人は腰をゆすりながら話を聞いているが、俺は米を食べさせただけだしちょっと反論してみる。
「ティナはともかくとして、あたしは別に⋯むしろよかったんじゃないの?」
「お前は勝手に火を使ったからだよ!まったく、止められたのを忘れたとは言わせないぞ。ティナの分が終わるまで一緒に座ってろ」
「ハイ⋯」
ぐうの音も出ない。『子供から目を離すと何をしでかすかわからない』それを自分でやってしまうとはな。まぁ久々の白米でちょーっと頭がおかしくなっていたのは認める。幼女になってから若干性格も幼くなってる気がするし、やはり呪いか?今度女神に会ったら聞いてみよう。
「でだ。本題はティナ、お前だ。私にアリスがついてくれた時の変化を知っていただろう、いきなり実戦は危ないと言って訓練を勧めたのもお前だ。どうしてあんなことをしたんだ?」
俺が妖精として覚醒したあの時、そう言って背中を押してくれたのを俺も覚えている。普段慎重なティナにしては確かに妙だな。
「⋯かったの」
「ん?」
「羨ましかったのよ!いつも私が守ってあげていたあなたが強くなって!周りの人も手放しで褒めちぎって!可愛い妹も出来て!故郷に帰ってきても、家に帰っても私にはもう両親も誰も居ないのに⋯」
その叫びで俺達は言葉を無くした。そんな事を思っていたなんてな。人は見かけによらないとは言うが、いつもは明るく掴みどころが無いティナが思い詰めていたのは気づかなかった。
「アリスちゃんが妹になってからのあなたは眩しかったわ⋯。毎日楽しそうで、今までの負債を返すみたいにクエストをこなして。でも、ふと気付いたら『私が傍に居なくても、もういいんじゃないか』って思っちゃった。可笑しいわよね、私」
「ティナ⋯」
「ここに帰ってきてからは、もっとそれを感じるようになったわ。ソウルイーターと戦った時だって私が居なくても大丈夫だったかもしれない。さっき魔力が上がった時だってそう。誰でも強くなれるなら、私の居場所なんか、もう無いんじゃないかって思って」
「それで魔力を込めすぎたのか」
「そうよ⋯。自分の価値を示せば、こんな気持ちは無くなるかも知れないって思ってた。でも、ダメね。借り物の力を披露しても虚しいだけだったわ」
「そんなことはないさ。お前はよくやってるよ。私達だけじゃ教会の面倒事に巻き込まれてただろうしな。金勘定もあんまり出来ないし、魔法の上手い使い方もまだよくわかんないしさ」
「そんなの少し勉強してればすぐ覚えるわよ」
「それでも、さ。あと、こんな事は言いたくないんだけど、それだったら私はどうなんだよ?何年も迷惑かけておんぶに抱っこで、ほとんど寄生だったじゃないか」
「それは私がやりたくてやってたことだから別に気にしないでいいわ。教義にも『汝、愛を欲さんとすれば隣人を愛すべし』ってあるしね」
それはまぁ確かに。普通はそんな関係が長年続くといくら中のいい友人でも流石に怒られる。
「はーい湿っぽい話はそれまでにして!お家に帰ってきたんだし、さっきお願いしてた女神の誓約をしましょう?」
「お母さん⋯話が飛びすぎだよ」
この流れでそこに持っていくとかメンタル強いな我が母。
「いいですよ。じゃあ、それが終わったら私は帰りますね。こんな状態だとちょっとしんどいですし」
「ダメよ。あなたはこれからうちの娘になるんだから」
「え?」
どういうこと?っていうか何で?ちょっと意味がわからない。
「母さん何考えてんだ」
「さっきからお話を聞いてましたけどね!あなた達のやり取りはもう幼馴染とか友達の次元じゃなくて、家族みたいな距離感なのよ。許すとかが前提の話じゃなくて、ただ不満をぶつけて受け止めてほしいっていう、そんな温かい気持ちなのよ」
「え、でも私⋯」
「それにあなたの両親からも頼まれてるのよ。何かあった時は娘を頼むってね。小さい頃によくご飯食べに来てたでしょう?私は手がかからない子供が一人増えたって思ってたくらいよ」
「そ、それはお父さんもお母さんもあいつに殺されたから⋯」
そう言えばティナの両親の話とか聞かないし、ここでも見たことがない。ここ数日少し元気がなかったのはそのせいだったか。
「いいから、全員分お願いね。誰か一人でも欠けちゃダメよ?」
「⋯⋯⋯わかりました。でも、誓約はお互いの信頼ですから出来なくても私は知りませんよ」
結論から言うと、出来た。一番怪しかったのはお母さんとティナだけど、幼い頃から関わりがあったからなのか、さっきの説教が効いたのか知らないけど問題はなかった。母は強し。
「あ”あ”っ、うああああ⋯ああああん!」
「よしよし、今まで頑張ってきたわね⋯」
ティナは心の堰を切ったようにその場で泣き崩れた。今までのスキンシップは寂しさの裏返しだったのかも知れないな。なんか過去に妹とか弟がいっぱいこの村に居たって話も聞くし、家族愛に飢えていたのかね。それも今、お母さんに頭を抱かれて満たされていっているだろう。
「お前は泣くなよ、魅了が発動しても今のティナじゃ止められるか分からないからな」
「ムードが台無しだよお姉ちゃん」
「っていうか私みたいなちゃらんぽらんなのが長女で良いのか?同い年だし、ティナのがしっかりしてるだろうしさ」
「反面教師ってことでいいんじゃないかな⋯残念な人が兄とか姉だと他は自立が早いって聞くよ」
「それどういう意味だお前」
「あだっあだだっやめてっまだ足が痺れてるんだからぁぁ」
今の今まで正座をしていたので、弱点を突くように足をツンツンされてしまった。その後、ティナが泣き止むまで待って、皆でお風呂に入って一緒のベッドで眠りについた。次の日になっても米を食ったメンツの魔力は下がったりはしておらず、どうやら消費しても最大値が下がらないので永続効果があるのであろうことが判明した。
そこからレオさんの家に行って様子を見たが、やはりロジータさんも若返ったままで、元気になりすぎて庭で薪割りをしまくっていた。
「あら?おはよう!昨日は大して挨拶もできずに悪いことしたわね」
「いやいやあの空気で会話に割り込むなんて出来ませんよ。それよりこの薪の量はなんなんですか⋯」
ロジータさんの後ろを見ると、とても一人でやっていたとは思えない量の、既に割られて4分割された木切れが積み上がっている。どんだけ元気になってんだよ⋯病み上がりってレベルじゃねえぞ。
「何日も寝てたせいで全然寝付けなくってね?夜明けを待って拾ってきたのを切ってたところなの。今は何もかもが足りない状況だって聞いたし、これくらいなら朝飯前よ」
それは関係ないんじゃないですかね?たぶん生命復元の効果がデカいんだろうな⋯口調もなんか若々しいし、やはり精神年齢は体に引っ張られるって奴だろうか。俺も注意しないと完全に幼女になっちまいそうで怖いな。そんな事を思っているとティナが前に出て話し始めた。
「ロジータさん、ごめんなさい。まさかこんなことになっちゃうなんて」
「気にしないで良いよ!今は少しでも人手が欲しい時期だしさ、あの人も喜んでくれてるし!」
「ですが⋯このままだとレオさんの方が先に寿命でお迎えがきて、しばらく一人で過ごすことになるでしょうし」
うん、それは俺も思ってた。魔法の効果が切れたらその内元に戻るのかと思ってたら、ティナ曰く『効果は普通の回復魔法と同じで健康な肉体への再生』なので時間経過でどうにかなるものではないらしい。つまり、成長期が終わった全盛期に戻ったってことだ。有力者に知られたら監禁される奴じゃね?
「そんなの若い子が気にしなくて良いの、人はいずれ死ぬ。ただ順番が変わるだけなのよ。あ、そうだ!どうしてもって言うならあの人も若返らせてくれない?それなら一緒に居れるしさ!」
えぇーそれは流石にヤバいんじゃないっすかね?一人でもどうしようか悩んでるのに二人に増えるのは流石に⋯。
「そうか、一人なら問題でも⋯分かった!いっそのこと村の全員やっちゃいましょう!ちょっと村長を呼んでくるわね!」
ティナが一人得心がいったような顔をしているがお前今度は何をする気だ!?
「ちょっティナお姉ちゃん何考えてるの!?ちゃんと説明してよ!ママも止めて!」
ちなみに呪いは相変わらず発動していたのでティナにもお姉ちゃん呼びしてしまい、お母さんはママになってしまった。バレた瞬間は二人ともすっごい笑顔で抱っこしてきて、そのまま布団まで離してくれなかった。
さて、どうなることやら⋯。
村でのやること(思いつき)が多くて話が進みません。
でも書きたいように書きます。許してください何でもしますから!




