第26話 癒しちゃった
セリフ多め。場面に人が増えるとしょうがないよね⋯
「今から使うのはLv4の回復魔法よ。どれほど修練を積んでも、人類が使えるのはそこまでとされている、そんな魔法。今の教会でも使えるのは教皇様とその御付きのお二人しか居ないわ」
そんなどえらいモノが米食っただけで使えるとかこの友人ヤバすぎない?
「Lv4か⋯ワシも若い頃に死の森の戦場へ行った時に一度だけ火属性のを見たことがあるが、あれは恐ろしかった⋯。なんせ骨すら残らない火力が味方をも巻き込む範囲で放たれたのじゃからな」
「よく生きてたなレオさん」
「ああ、運が良かった。なんせワシの部隊はそこから数km離れておったからな。それでも立ち上る巨大な火柱が見えた。あの分では後詰めにも直撃はせずとも熱波だけで甚大な被害を齎したじゃろうて⋯」
うーわエグっ!そんなの使ったらその辺の街くらいなら一撃で壊滅すんじゃね?人一人が核レベルの威力出せるとか異世界怖すぎだし、そんなのと同じLvの魔法を使おうとしてるティナも怖いな。やっぱ逆らわんとこ。
「聞いた話では術者も魔力が切れて、自分を守る障壁すら出せずに燃え尽きたらしいがな。恐らく無理に使ったのじゃろう」
「ティナ、そんな危険なのと同じLvの魔法使って大丈夫なのぉ⋯?」
「だーいじょうぶだいじょうぶ!前にお二人と会った時より魔力だけなら多いみたいだからね!それに戦うための魔法じゃないからね、失敗した所で陣に魔力を全部持っていかれて発動しないだけよ」
「まぁ、ぶっ倒れても米食わせればいいか」
確かに。妖精すらガッつく魔力米なら人が食っても多少なり効果あるだろうな。いや、倒れたら米食べれないだろ!噛むことすら出来ないんだから飲み込めないだろ⋯脳筋姉め。おかゆを作る準備でもしておくか。
「じゃあ、お米を使った消化に良いお料理を知ってるから後で作ろうよ」
「お願いするわ。じゃあ行きましょうか」
話し合いも終わり、全員で再びロジータさんが寝ている部屋に来た。さっきとは違い、呼吸が不規則になっているように見える。ティナが額に手を当てると熱が出てきているようだと教えてくれた。
「これは時間がないわね、今すぐ詠唱に入るわ。皆少し離れていて」
ティナがそう言うとすぐに足元に青い魔法陣が浮かび上がり、光の粒子みたいな物が漂い始めた。俺達は部屋の入口まで下がり、顛末を見守ることにする。
「主よ、我の願いを聞き届け、此の者の罪を許し、癒し給え。生命復元!!」
魔法の発動自体は成功したようだ。辺りに舞っていた光がロジータさんに吸い込まれていき、どんどん顔色が良くなっていくのが分かる。皮と骨だけだった手も肉が付いてきて皺が薄くなっていく⋯皺が薄く?ちょっと待て、回復の範疇越えてないかこれ?なんか髪の色もどんどん変わっていって白髪が減ってきてるぞ?
「おいティナ!ちょっと様子がおかしくないか!?治すだけなんだろ!?」
「あぁーー⋯⋯ちょっとやりすぎちゃったみたい」
「「「「はぁぁーー!?」」」」
全員驚愕。回復魔法でやりすぎちゃったってどういう事!?やった本人はテヘペロ☆みたいな格好してるけど許されんぞこれ!だって、だって今のロジータ婆さん!どう見ても十代だもの!!
しかもそんなヤベェ魔法かけた本人も『平気ですが、なにか?』みたいな感じで飄々としてるしなんか考えるだけで頭が痛くなってきた⋯。
「おぉ、おぉ⋯婆さん!まさか、天に召される前にこの目で若い頃の婆さんをまた見れるとは⋯」
「おいおいおいおいどうすんだこれ!他の奴にどう説明すんだよ!?完全に厄ネタじゃねーか!!」
「あらまぁ、私も皺が増えてきて困ったらお願いしようかしらね」
カオス。収集がつかない。誰か助けてぷりーずなんで米食いに来ただけでこうなるんだ俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない。場の人間が揃って混乱していると、声が聞こえた。
「ううぅ、うるさい!こんな朝っぱらからギャーギャー人の部屋で騒ぐんじゃない!!」
「婆さん!起きたか!!」
「あんた、どうしたんだいこのお客さん達は⋯って、体が軽い⋯声もしゃがれてない」
ロジータさんは体に違和感を覚えてくるくると肩を回したり腰を動かしたりしている。わかります、わかりますその感覚。急に仕様変更されると困りますよね。
「あーーー⋯うん。あの世?あんたらまとめてあいつに食われちまったのかい?」
そう言えばソウルイーターを倒した時は既に昏睡状態だったか?その辺の説明は任せて俺はおかゆを作りに向かうか。どうせこの後の展開は分かる。何日も食べてないし、そこへ普通のご飯を出すわけにもいかないしな。出来る妹というのは屋台骨を支えるものだよ。こっそりと部屋から出て台所へ向かう。
体を起こせるほど元気になったみたいだし、少し濃い目の味付けでもいいだろう。まずは鍋にさっきの米を皿の半分くらい入れて、そこへ水を加えて、醤油とダシ粉を入れて、火にかけてとろみが付くまでかき混ぜる。いい具合になってきたら火から上げて卵を割り入れて再び混ぜる。黄身と白身が予熱で固まったら卵雑炊の出来上がりでぇーい!
出来上がった雑炊をトレーに乗せて部屋に戻ると、粗方の説明は終わったのかロジータさんとレオさんが抱き合って笑っていた。夫婦愛って良いな⋯絵面的には爺孫にしか見えんのだがな。
「お腹に優しいご飯作ってきたよ。熱いから気をつけて食べてね」
「この子が妖精なの⋯?普通の子にしかみえないけど」
「ワシも最初はそう思っておったが、本当なんじゃ。それに今この村が生きておって、二人で話が出来るのもこの子のおかげじゃ」
「そう言えばもうあいつも居ないのよね、疑ってごめんなさい。ありがとうアリスちゃん」
「あー、いえ、あたしはほとんど何もやってないですよ。頑張ったのはお姉ちゃんと、やらかしたのはティナですから!」
「うふ、そうね。ガレラ村の若い子はちょっとやりすぎね。さ、もう夜も更けてきたし、二人で積もる話もあるでしょうから私達はお家に帰りましょう?」
「あぁ、そうだな母さん。じゃあなレオさん、また明日来るよ!」
「私も経過観察に来るからね」
そう言って俺達はレオさん宅を出た⋯出ようとした。
「そう言えばアリス、お前あの料理はどうやって作ったんだ?」
「あれはね、まずお米とお水を一緒にお鍋で煮て~」
「⋯火を使ったのか?」
しまった。
「あ」
「『あ』じゃねええええええ!危ないからやめろっつってんだろがああああ!」
ゴッツーーーン
「いっだああぁぁぁぁぁ!?」
目の前に火花が散るような重い衝撃が脳天に振り下ろされてしまった。どうしてこんなことになった⋯。
おかゆや雑炊を作る時、ご飯を水洗いしてヌメリを取ってから煮る方法もありますが、皆さんはどっち派でしょうか?自分はめんどいのでそのまま鍋に入れてます。




