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第23話 作っちゃった(2回目)

 さーて今回作り出すものは保存食と漬物。この世界、そこまで遠出する必要がないし冬場も雪が積もったりして表に出れないとかの天候不順も珍しいらしく、基本的に発酵食品とか乾燥させた物とかが無いらしい。あってもベーコンくらい。


 まぁ食材が出てくるダンジョンがあって国同士の距離も近いならそうなるか。困ったら買い出しに行くなりすればいいしね。でもあのウマさとお手軽さは広めていきたい所だ。あとは米があれば永住もしたい所である。


「今日はどうすればいいんだ?また私達が手伝うことがあると良いんだが」


「残念ながら今から作るものは人手があれば十分かなぁ、力仕事はするからそっちをお願い」


「分かったわ。で、材料はダンジョン産の魚の干物と乾いた昆布?」


「うん、これをまずは粉になるまで石臼か何かで挽きたいんだけど」


「それなら風魔法が使える爺さんを呼んだほうが良いんじゃないか?」


 ほう、風にそんな使い方が?ミキサーみたいなみたいなものがあればよかったんだけど。


「おーいレオさん、これを粉にしてほしいんだってさ」


「おーおーこんなめんこい子の頼みなら断れんのう、任せるんじゃ」


 レオと呼ばれた60歳くらいのお爺さんが何やらブツブツ魔法を唱えると、空気で出来た膜の中で材料が激しくかき混ぜられあっという間に粉末状になってしまった。俺が森に落ちた時の結界と若干似てたな、あれも風魔法の一種だったんだろうか?


「ホレできたぞい。で、これはなんなんじゃ?」


「ありがとー!これはね、スープの素だよ!」


「ほほう?どうやって作るんじゃ?」


「簡単だよ。これにお湯を注いでー、お味噌を溶きながら入れれば完成!」


 完全にお湯に溶けるレベルの粉になってて驚いた。この人がいれば色々作れそうだな⋯こんな中世の技術レベルだと石臼とか風車で製粉するしか無いと思ってたから魔法ってスゲー。


「ズズー⋯こりゃ温まるのう!具材が無いのがちと残念じゃが、これだけでも冬場はありがたい!」


「ホントおいしいわねぇ!飲んでるとお腹が空いてくるし、気分も落ち着くわね」


「味噌ってのはパンとか肉に塗って焼いたりするもんだと思ってたよ」


 その組み合わせも悪くはないんだけど俺的には思うところがある。やはり味噌は汁物だよな。


「ふっふっふ、これで準備はととのったよ。ここからが本番だからね」


「なっ⋯まだこの先があるだと⋯」


「一体何を作るというの⋯?」


 そう、粉末出汁作りはスタートラインに過ぎない。確かに出汁があれば大抵の物は美味しくいただける。だがこいつを使って保存食の下味をつければ一段上の味わいが生まれるのだ⋯。


「それじゃー白菜にたっぷり目のお塩を塗り込んで放置します。お水が出てくるくらい。で、放置したものがこちらになります」


「また手際がいい」


「そんじゃ塗り込んだお塩を水で洗い流しまーすティナよろしく。あとおじいちゃんはトウガラシをまた粉にして!粗めのも!」


「えぇ?いいけど」


「おじいちゃん⋯ええのぉ」


 ティナに流水でしんなりした白菜の塩気を抜いてもらう。このままだと塩辛いからね、一晩とか使っていいなら塩を少なめで洗わなくてもいいんだけど。


「お次は二種類のトウガラシにー、ニンニクと、しょうがと、りんごの擦り下ろしと、今作ったダシ粉と、お味噌を入れて⋯それじゃこれがよく混ざり合うまですり鉢でお願いお姉ちゃん」


「なんだか魔女が薬を作ってるみたいになってるなぁ」


 ネチネチと赤いペースト状の物が出来上がっていく。本当はイカの塩辛とかあれば俺好みの味になるんだが、この世界に食用のイカはいるのだろうか?カニがダンジョンから出るらしいからそっちで期待したいものである。


「できた?それじゃこれを白菜に塗り込んでいきまーす。そんで数時間放置だから⋯出来るのは夕飯くらいだね」


「こんなもんでいいのか?火も使わないし前より簡単じゃないか」


「それにしても辛そうな匂いじゃのぉ、りんごの爽やかさもほんのり香るええ匂いじゃ」


「これは漬けてから冷やして保存すれば一ヶ月くらいは大丈夫な発酵食品だよ。キムチっていうの」


「へぇ~ハッコウショクヒン?ってのが分からないけどおいしそうね」


「チーズとかお味噌がそうなんだよ。自然の力で作るお料理だよ」


「ほうほうそんな名前が⋯他にはなんか無いのかの?」


「色々あるよー。ザワークラウトとか、たくあんとか、とりあえず野菜を塩とかお味噌につければおいしいよ」


「そりゃあ試し甲斐がありそうじゃ!保存するにはどうすればええんじゃ?」


「今回は今日食べるために作ったけど、本当は清浄(クリーン)を使って綺麗にしたほうがいいかも。入れ物の瓶とか木桶もおんなじようにね!」


 地球では腐敗を防ぐために煮沸消毒が基本だったが、こっちだと魔法で処理出来そうだからそれでいいだろう。何なら傷の治療をする前に清浄(クリーン)をかけたりして治験とかもしてみたいな、雑菌の繁殖具合とかで化膿するから医療が前進するかもしれん。


「それじゃ私達は時間まで山で鍛錬でもするか」


「あ、ついでに薪と山菜でも採ってきて~」


「グエー山歩きはこの体じゃしんどいよう⋯」


 俺達は安全になった山を練り歩いて野蒜や銀杏など色んな山の幸を採集して回った。獣がまだ居ないからか取りたい放題で持て余しそうなくらいだ。10年もこの状態を見るだけだったなんて信じられないな。そして日が落ちそうになったのでクリスの実家に帰ってきた。


「今日はアリスちゃんがお手伝いしてくれるのね?この子は料理なんて出来ないから感動だわ!」


「いいじゃないか母さん⋯私の代わりに美味い飯を作れる妹が居りゃ安心だろ?」


「それもそうね!お腹を痛めてないのが心残りだけど、そんなのは些細な事だったわ。今日も一緒にお風呂に行きましょうね」


「う、うん⋯」


 ガレラ村に来てから驚いたのは村にお風呂があることだった。昔、クリスの父親が元気だった時に軍隊に居たことがあって、そこで火の魔晶石を格安で譲ってもらったらしい。管理は村でやってて、小さめの公衆浴場が無料で使えるから本当に助かる。


 ちなみにクリスの母親は若い頃に結婚してクリスを産んだらしく、まだ30歳らしい。軽く計算すると14歳で出産したってことか⋯この世界の成人年齢は15歳なのでギリギリアウトだな?父親も20歳で亡くなってしまったし、かなり生き急いでんな。


 だがそんな人生とは裏腹に、実際は少しのんびりした性格で家族思いな良い人だ。もしも、前世の母もこんな人だったら死んで申し訳無いと思うな⋯。あと、「かわいい娘が欲しかったのよ~」なんて言っててクリスは軽くへこんでいた。ワロス。


「レオおじいちゃんも一緒に作ってくれたしご飯に招待したいんだけどいいですか?」


「いいわよ、あの不思議な白菜ね?赤くて刺激がありそうな匂いがするけど」


「私が呼んでくるよ、ティナも一緒にな。二人は盛り付けを頼む」


 クリスが外に呼びに行ってくれた。二人の家はここから少し離れた場所にあるので往復10分ってとこか⋯それまでにメインのタレ漬け込み肉と野菜たっぷり味噌汁を配膳しておくか。


「⋯アリスちゃん、あの子を選んでくれて本当にありがとう」


「え?いえ、あたしが選んだとかそんなんじゃ。家族になってくれたし、普段から良くしてもらってます」


「それでもよ。クリスはずっと父親のことで思い詰めてたわ。敵討ちがしたいって言ってたけど、あなたくらいの強さじゃないと逆にやられてたかもしれない。それなら妖精なんて居なくても構わない、そう思ってたのよ」


「お姉ちゃんなら、どれだけ時間がかかっても倒してたと思います。ずっと頑張ってたし、あんな作戦を考えてたくらい周りも見えてますから」


「だけどその作戦がずっと早く実行出来たのはあなたのおかげなのよ。あの子まで死んでしまったら、私も後を追おうと思ってた。村長が都会に出ろって言ってくれたけどね、私も皆と一緒に戦うつもりだったのよ」


 そんな危ないことを考えていたのか⋯俺が妖精としてクリスに出会えてよかったな。少なくともここら一帯の脅威は去ったし、これからは昔と同じように獣が戻ってきて穏やかに過ごせるだろう。


「だから全部解決してくれたクリスやティナとあなたには感謝してるわ」


「そんな⋯記憶がないあたしの家族になってくれたお姉ちゃんのためなんで、気にしないでいいですよ」


「そう言えば親もわからないのよね⋯じゃあアリスちゃん、私がお母さんになってあげるわ。というかクリスの妹なんだし、もはやうちの娘よね?」


 いや、親は居るが?神だから言えないだけなんだが?


「え、で、でも⋯」


「遠慮しなくていいのよ、アリスちゃん。今まで寂しかったでしょう?こんなに小さいのに偉かったわね⋯」


 背中に手を回されそっと抱き締められる。子供の頃に親に抱かれたような記憶は無いが、とてつもない安心感で心が癒やされていく⋯。


「うっ、ひぐっ⋯」


「よしよし、これからはお母さんが居るからね」


 久々に泣いちまった。でも魅了が発動してないみたいだな?今だに発動条件が分からんが、下心が一切ない母性が故なのか、はたまた耐性があるのか。帰ってきた三人に現場を抑えられたが、事情を説明して飯を食った後に女神の誓約をしてもらえることになった。まぁ姉妹には既になってるし親子は今更か、コンゴトモヨロシク。


「それじゃいただきまーす!」


「いただきますっと⋯早速キムチっていうのを食ってみるか」


「いただきます。私は具が入ったミソシルから」


 ちなみにクリスとティナも一緒にいただきますを言ってくれるようになった。食材や作ってくれた人に対する感謝の言葉だと言うと殊勝なことだと真似をしてくれた。


「少し時間を置いたらまた水分が飛んで小さくなったな、どれ、一口。おぉ、塩気と辛味と甘み、その三つが合わさっていくらでも食べれそうだなこれ」


「そこまでかい、じゃあワシもいただくか。⋯こりゃあ美味いなあ!これだけでパンが進むぞい!」


「ミソシルも具材が入ったことで味が染み出して美味しいわよ~」


「お肉も持ってきてくれたタレがよく馴染んでて噛めば噛むほど美味しいわ!」


 せやろせやろ、やっぱ焼肉のタレ味にはキムチの付け合せだよな。欲を言えば味噌汁じゃなくて中華スープみたいな鶏ガラベースがいいし、米がベストでマストなんだがな!あぁ炭火で野菜と肉を一緒に焼いて米でかっこみてぇ。やっぱ俺は焼き肉の妖精かなんかじゃないのか?


「おいひーねぇ~」


「これなら作り方も簡単じゃから、村で作ってセイニャン辺りに売りに出てもらえばええのぉ。材料も帰りに仕入れてきてもらえばなんとかなるじゃろ」


「ニラとか、大根とか、胡瓜とかもキムチにいれるとおいしいんだよ!」


「ほほう、そりゃうまそうじゃ。どれも水分が多くて味が染みやすい野菜じゃからの~」


「おコメがないのが本当に残念⋯」


 口に出して言ってしまった。今まで食材を探すついでに見て回っても一切無くて、田舎の村でも栽培をしている気配すらないからほぼ諦めの境地なんだがな。


「米?あるぞ?」


「は?」


「お米はあんまりおいしくないから飼料にされてるのよね」


「は?」


「そうそう!ダンジョンで出るけど一回のドロップで1kgも出るからかさばるのよ~」


「は?」


「その場に置いていくことも多いそうじゃ。ワシも若い頃は飽食迷宮で稼いでおったが、いがらっぽくて煮ても焼いても食えんかったのう⋯」


「は?」


 思わず前世の動画で見た猫みたいになってしまった。米あんの?それも結構な量出るっぽいじゃねえか。人気がないのは米の下処理とかをしてないからか?この世界の料理は雑だからな~。まぁ俺に米さえ与えればそんな不当な評価は二度と許さん。米、味噌、醤油、魚。この四つが揃った日本人に勝てるやつが居るか?いや、居ない。こりゃ米集めのついでにダンジョンに行かないとだな!

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