第22話 話し合っちゃった(2回目)
「こんばんは、良い夜ね」
「ここは⋯地球か。何の用なんだ?」
ソウルイーターを撃破した夜、ベッドに入ったと思ったらいつの間にかあの日訪れた古いアパートのような場所に立っていた。そして以前と同じように、ちゃぶ台にノールジュが座ってお茶を啜りながらこちらを見て微笑んでいる。
「ちょっとそっちで気になることがあってね。あなた達魔獣を倒したでしょ?」
「魔獣?ソウルイーターのことか」
「そう、それ!あなたは私が生み出した存在だから接触した時に分かったの」
枝を付けられたってやつかな、何かした時に俺というアラームが鳴るという感じか?まぁお手伝いの一環だと思うと仕事をした気がするので後でなにか要求してみるか。
「別にいいけどあんまり無理は言わないでね?ま、それは置いといて。この世界には魔獣なんて居ないはずだったのよ。どこから紛れ込んだか知らないけど助かったわ」
「あー⋯まずハッキリさせたいんだが魔獣ってなんだ?魔物とは違うのか?」
「違うわね。魔獣とは大昔に私達、神が隔離した存在。魔物とはその劣化コピーに過ぎないのよ」
「なるほど?魔物の上位存在みたいなものだから異様に強かったわけか」
「そ!本来は私が対処する案件だけど今はここから動けないからねー」
そんなにヤバい相手だったのか。女神謹製の体じゃなかったらやられてただろうな。
「今回ばかりはこっちも助かったよ。せっかく出来た義理の家族の役に立てたしな」
「あの子ね。かなり相性がいいみたいだから大事にしなさいよ」
「言われなくても分かってるさ、こっちの世界で出来た大切な繋がりだ。あっちから嫌だと言われるまで一緒に居てやるさ」
「それはないと思うけどね⋯あ、そうだ。魔獣から出た魔石があったでしょ?アレ、世界にあっちゃ行けないモノだから回収しとくわね~」
「ああ、頼む。あのまま放置してるとソウルイーターが復活するかもしれないって皆怯えてたんだ」
「既に本体が死んでるし魔石も砕かれてるから大丈夫だと思うけどね。まぁそれでも悪用しようと思えば色々出来ちゃうし、その対処も今のところはあなたが直接対峙しないと手の出しようが無いから」
「皆への説明は俺がしておくよ。それで報酬の方なんだが」
「常識の範疇でね」
俺は前から思っていたこの村の現状に思いを馳せる。脅威が去っても生き物がほぼ居なくなったあの山のままでは村はいずれ死ぬだろう。ならばそれを防ぐ方法は⋯
「ガレラ村の周りの生物をあの森に集めてくれないか?魔素やら魔物の担当だったんだからそれくらい出来るだろう」
「そんなんでいいの?出来るっちゃ出来るけど少し時間がかかるわよ」
「それでいいんだ。頼む」
「それじゃこの魔石から回収した力を還元する形でやっておくわね。じゃ、用も終わったし今日はこんな所にしときましょうか」
「そうだな。もうイレギュラーが無いことを祈るよ」
「無いとは言い切れないけどね⋯それじゃまたね~」
またもや白い光りに包まれて俺の意識は遠くなって行く⋯。この感覚、トンネルから出た時に目が慣れる瞬間に似ているような?そんなどうでもいいことを考えながら眠りに落ちた。
そして翌日。朝の支度を終えた俺とクリスが家でのんびりしていると村長とティナがやってきた。
「おはようさん、昨日はご苦労だったね」
「おはよーございます!」
「おはよ。やることをやっただけさ、ずっと決めてたことだしね」
「おはようアリスちゃん、今日も元気ね。昨日は頑張ってたけど体に変な所はない?」
「体は大丈夫だけど、お話したいことがあるの。」
「なんだい?」
俺は斯々然々、ノールジュに言われたことを説明した。奴はここに居るはずのない存在という事、魔石の処理云々だ。
「女神様が対処しないといけない事態だったとはね⋯魔石とやらについては後で確認しよう」
「そうね~、それにしてもそんな敵を倒しちゃうなんてとんでもないわ」
「アハハ⋯クリスががんばったからだよ」
「私は半分だけさ。もう半分はアリスと皆のおかげだよ」
「そうだね。これまで踏ん張ってきた甲斐があったってものさ。それより今日は祭りだよ!主役が遅れちゃ盛り上がらないからアンタ達はさっさと行きな!」
「ええ?昨日の今日でか。まぁ私達が持ってきた食料で当分はなんとかなると思うが大丈夫なのかい?」
「心配するな、これから毎日のように森に入れるんだ。肉はちょい無理かもしれないが、冬を越すには十分過ぎる程だよ」
「なら行くかアリス!ティナ!」
「うん!」
「積もる話もあるしね~」
それから三日三晩祭りは続き⋯ようやく一息つける時間がやってきた。
「それで本当に国へ報告していいんだね?このまま黙ってるって手もあるよ?」
「それじゃこの先も行商人がここにやってこないだろ、大々的に脅威が無くなったって知らせてもらったほうが良いって」
「でも、私達や後ろ盾があるティナはともかくクリスとアリスの存在が公になればどうなるか⋯」
「私にとっては名が売れるってのは願ってもないことだけどね」
「問題はアリスちゃんね」
「ああ、そうだ。意思疎通が出来る妖精なんて国に知れたらどうなるか分かったもんじゃないよ」
「まぁ大丈夫じゃないかしら。アリスちゃんは女神様の直轄みたいな存在だから、どうにかしようなんて不敬な輩はそうそう居ないはずだし」
「問題は分別を弁えてないアホ貴族だね⋯奴らは戦力になるなら何でも連れて行くから」
「前にも聞いたけどそんなに人を集めてどうするの?」
「訓練してから死の森に送り込んで伐採してるのさ。ほっとくと森が拡大しちまって、人類の生存圏が無くなっちまうからね。それを防ぐための木こりと護衛として戦える人材は重宝されてんのさ」
平和に思えたけどそういう脅威もあるか。俺単体では戦闘力はないので拐われたりするとマジでヤバいな。
「やだ、あたしは二人と一緒に居たいよ」
「何が来ても守ってやるさ。いざとなったら憑依して離れれば何も出来ないだろうしね」
「私らも出来る限り力になるからね」
「あ、力になると言えばここでなにか食べ物を造ろうと思ってたんだったー」
「また何か作るのアリスちゃん?」
俺はここで山の幸や畑に植えられていた野菜類を見て一つの料理を思い浮かべていた。




