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第21話 ハメちゃった

 クリスの家に厄介になった。というか妹なんだしほぼ実家かもしれない。お母さんが途切れること無く食べ物を持ってくるし、ご飯だけでも相当な量があった。俺達が持ち込んだ分もあるが、無理をしていなければいいが⋯いや、ソウルイーターを倒せばこんなのは無理じゃなくなる。


 満腹になるだけで贅沢だなんて、そんなのはクソ喰らえだ。あまつさえ隣には食の宝庫が広がっているのだ、奴は明日倒す。


「全員揃ったな?それじゃこれから作戦を開始するぞー」


 次の日の朝、村長が水魔法と土魔法が使える老人を二人連れてきてくれた。今回の作戦には少しでも必要なのだ。奴は森の中で魔力を発すると一直線に走ってきて人や魔物を襲うそうだ。それを逆手に取って誘い出す手筈になっている。


「それじゃあまずは私とアリスが森の中に入って強めの魔力を出してから撤退する。魔法で接近は分かるから、その後は手筈通りに頼む」


「分かったニャー、無理はするニャよ~」


 俺を背負ったクリスが魔力強化を使えば程なくして現れるだろう。そこでは相手をせずに一定の距離を保って村の近くにある広場に誘導する。


「よし、行くか」


「うん」


 俺達は山の中に踏み入った。生き物の気配があんまりしないな⋯この時期の自然は獣の匂いや痕跡が多いものなんだがかなり荒らされてるようだ。既に村の近くまで来ているのかも知れない。


「おいでなすったぞ。かなり早いな⋯地形を無視しているのか?ほとんど一直線じゃないか」


「もしかして木の上を移動してるのかなぁ」


「かもな。それじゃ下がるか。ってありゃ木の上どころじゃないぞ!?()()()()()()!!」


 文字通り奴は空を飛行していた。UFOのように急な加速と減速をしながらこちらを探しているようだ。完全に補足される前にポイントまで下がらなければ、上空から襲われてはひとたまりもないな。


「着いた!オーイ!こっちに来やがれ!私達が相手だ!」


 その瞬間俺はクリスに憑依する。それが合図のように空中に居たソウルイーターが刀を振り下ろしながら突っ込んできた。それを受け流すように切り払い地面に叩きつけてやって、今度はこっちから斬りかかり刀と刀がぶつかり合う。


「くっ、名乗りもなしか⋯まぁ話しかけられると戸惑いそうだけどね!」


(気をつけてお姉ちゃん、剣を合わせてるだけでも魔力が吸われるみたいだよ)


「なるほど。今まで負け続けてたのはそういうことか」


 しかしソウルイーターをここに縫い止めなければ作戦の第2段階までは行けないだろう。そこで俺は一瞬離脱して、援護射撃を行う。事前に用意しておいた紐で結んだ二つの石、所謂ボーラで鍔迫り合いに入ったクリスとソウルイーターの交差した足を狙って二人を拘束した。


『今だよ!ソウルイーターは飛べるから蓋もお願い!』


「よっしゃ!任せとけ!」


「ウチらの出番ニャー!」


「「沈下(アースドロップ)土縄(アースバインド)!」」


 音魔法で拡声した俺の合図で、土魔法の使い手が俺達もろともソウルイーターの周りの地面を数m陥没させた。更に魔力を流して強化した土で網を作り空中に逃げられないよう天井を作る。これで俺達以外に手は出せまい。ここまで来ればあと一手だ。


「もう一回憑依行くよお姉ちゃん!」


「おう来い!」


 まだ続いていた鍔迫りの隙をついてクリスに憑依して、事前に確認しておいた魔法を使える状態を作り出す。この魔法はレベルが高いので、俺が憑依した状態じゃないと使えないのが昨日の内に判明した。しかもこの剣を使わないといけないのでかなり縛りがある、まさに奥の手と言える代物だな。


「よし、魔法付与(エンチャントマジック)!」


 ミスリルの刀に俺の魔力を注ぎ込むと、刀身が高速振動して鉄だろうがバターのように切り裂く超兵器になる。超音波カッターのような感じだろうか?昨日の今日ですぐに作戦に組み込むのはさす姉である。


「魔力が吸われる⋯当然か、剣に結構な魔力を使ってるからな。だが、吸われる以上に注ぎ込んでやるとどうなるかな!?」


 刀同士の鍔迫りだがギャリギャリという嫌な音がしなくなって、クリスの持っている刀がソウルイーターの獲物に食い込んでいるのが見えた。あと少しだ。


「オラァァァァァ!とっととくたばれえええ!!」


 力任せに肉薄して遂にソウルイーターの刀を持っている腕ごと切り飛ばした。バランスを崩した奴に反撃を許さずそのまま残っている腕と両足も切断して、一瞬で達磨状態にしてそのまま俺達は後ろに下がる。これで最終段階、チェックメイトだ。


「今だ!やれ!」


「「沈下(アースドロップ)土縄(アースバインド)!」」


「「水弾(ウォーターボール)氷結(アイシクル)!」」


 転倒したソウルイーターの足元を崩して同じ用に土の網で蓋をする。さらにそこへティナ達水魔法使いが水で穴を満たし、全力で温度を下げて奴ごと水を凍らせた。


「やったか!?」


(まだだよ!あの状態でも氷に混じった魔力を吸って再生しようとしてる!)


「クソがぁぁぁ!死ねぇぇぇぇぇ!!」


 咆哮と同時に刀を氷に突き刺して地面に引っ張り出して、纏っている氷を意にも介さずに文字通り細切れにした。どこかに核のような物があったのか、体力が尽きたのかはわからないが、体の8割がかき氷のようになる頃にはソウルイーターの反応は完全に停止していた。それを確認して俺は憑依を解除する。


「ハァ⋯ハァ⋯どうだ!?」


「今のところ反応はないみたいだけど⋯」


「どうだい!?倒せたのかい!?」


 こいつなにかおかしいな。ここまで強い魔物なら濃い魔素が吹き出して来るはずなんだが⋯死んでないのか?それにしては動きがなさすぎる。魔力の動きも一切ないし、そもそもここまでやられて生きていられる生物なんて存在しないだろう。ん?これは魔晶石か?見た目が違うが⋯。


「これは⋯こいつ、もしかしたら魔物でも獣でもないかもしれない」


「なんだって!?アリスちゃんそりゃどういうことなんだい!」


「とりあえず倒せてはいるみたい。安心していいよ!」


「そう、か⋯私達はやったんだな⋯」


「ここには見張りを数人残して置くからアンタ達は上に上がって休みな、話を聞かせてもらうからね」


 俺達は仲間に引き上げてもらい、土魔法で作ってあった椅子に腰掛けて報告をする。


「アリスちゃんお疲れ様!大活躍だったわねぇ!」


「やる奴だって思ってたニャー」


「クリスも見事な作戦だったよ。あれほど綺麗にハメられるなんていつから考えてたんだい?」


「最初からさ。父さんが殺られてから体を鍛えながらずっと、この日のためにね」


「で、奴が死んだ確証はあるんだろうね?」


「うん、これを見て」


 俺はかき氷からこぼれ落ちた赤いなにかの欠片を見せる。


「これは⋯?」


「あいつが動かなくなった時に出てきたの。たぶん心臓みたいなものだよ」


「魔晶石じゃないわね、何なのかしら。獣なら死体が残っているのは分かるけど、あんな動物は居ない。でも魔物みたいに魔素が出てくるわけでもない⋯」


「分からないけど、もう終わったんだろ?あー疲れた。あの野郎、父さんの見た目でバリバリ殺気を出しながら魔力吸ってくるんだもんなぁ」


 クリスの疲労は思ったより深いみたいだ。まぁプレッシャーもあっただろうし、かなりの魔力量があるとはいえずっと鍔迫り合いで吸われ続けてたもんな。俺も憑依してたからその消耗は手に取るように分かる。


「今日はもう休みましょう。この石については厳重に鍵をかけて保管ってことで」


「そうだね。二人ともお疲れ様。よくやってくれたね」


「あたしは勝てるって信じてたよ!」


「あったりまえだろ?」


 今日は疲れた。クリス経由で俺の魔力も結構吸われたからな、マジで短期決戦じゃないと辛い戦いだった。これまでは恐らく奇襲を受けて倒されるか、剣を打ち合ってる内に吸収されてしまっていたのだろう。


 しかも、魔法を撃ってもその魔力すら吸収されてしまうので、物理で攻めるしかないという逆スライムのような敵だった。この世界の住人からしたら天敵のような相手だったな⋯まぁ終わった事は明日の俺に丸投げして、お母さんに報告だけしてたらふく食って寝るとしようか。

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