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第20話 帰郷しちゃった

「あいつは喰った中で一番高い魔力の持ち主に擬態するみたいだニャ」


「つまりクリスのお父さんが殺されてからそのままなんだね⋯」


「何回か討伐隊が来たけどどれも返り討ちに遭ってるニャ」


「そのうち強くなりすぎて騎士団長クラスじゃないと倒せなくなったのよね」


「そうだ。私の父さんは強かった。だが奴が来るまで村は平和過ぎた。腕が鈍ったのか、何なのかわからないが遅れを取った結果がこれか⋯」


「今では第三種災害生物に指定されてるらしいニャ。まだギリギリ個人で倒せるレベルニャー」


「第三種かー、その気になられたら街が数個落とされるわね」


 強すぎない?この世界の人って大なり小なり全員魔法使えるんだろ?倒したそばから魔力を食らって強化されるからかな。だとしたら圧倒的な戦力差による瞬間火力での殲滅しかないんじゃないか?


「そ、それじゃあもしもお姉ちゃんが負けちゃったら⋯」


「私とアリスが喰われて最悪の結果になるだろうな。第二種まで上がるかも知れない。国が兵を挙げて討伐出来るかどうかって強さになる」


「それも下手したら餌を与えるだけになるわ。その場合の最善手は山ごと焼き払うか⋯今まで通り無視を決め込むかのどちらかね」


「チャンスは一度きりってことニャ。だからウチも行くニャ」


「良いのか?まだ商売の途中だったんだろ?」


「村と山に平和が戻ればやらなくて良くなるニャー。それに今の村で動ける狩人はもうウチだけニャ。他の連中は手っ取り早く稼ぐためにイクーモノへ行っちゃったニャ」


「そうね、成功にしろ失敗にしろ証人は必要だしね。私達がやること見届けてもらうわよ」


「合点承知ニャ!」


「それじゃあ少し遅くなったけど行きましょうか」


 道連れが一人増えた。貴重な猫耳枠なので丁寧に扱ってあげよう。とりあえず今夜は本場の焼肉のタレでもっておもてなしだな。ククク⋯これで脳を破壊して、より広めてくれるわ。


「うまいニャー」


 あれ?思ったより反応が淡白だな。もっとこうタレがないと生きておられんごっ!とか言うと思ったのに。


「初めてじゃないの?」


「そりゃあ自分でも作るために味見はしたニャ。そういえばお前ら、工場とか材料とか気になること言ってたニャ?」


「聞いて驚け。焼肉のタレはな、このアリスが作ったんだ!」


「それもすごく簡単そうにね。工場も建てるとかでそろそろ大量生産が始まるのよ」


「えっへん」


「ニャんだって!?すごいニャ!御大尽様ニャ!忠誠を誓うニャ!」


 その夜はやたら持ち上げてくるセイニャンに少し気圧されながら野営地で一晩過ごした。タレ産業が安定してきたらガレラ村に第二工場建てるのもアリだな。山の旨味がない冬場でも収入が得られる場所は必要だろうしな。翌日も道中に出てくるゴブリンなどをしばき倒しながら特に問題もなく目的地のガレラ村に到着した。


「懐かしいな。まだ3年しか経ってないってのに」


「でも3年よ。子供が大人になるには十分な時間だったわ」


 男子、三日会わざれば刮目してみよって言葉があったっけ?俺達全員女だけど。まぁ全寮制の中学とか高校に通ってた親戚がデカくなりすぎて別人に思えるって感じかね。


「そこで止まれ!お前達は⋯生きていたのか?」


「ハッハッハ、本当に死んだことにされてら」


「だから言ったニャ」


「セイニャンも帰ってきたのか。何かあったのか」


「詳しいことは村長の家で話すよ」


「私達の親も呼んでこないとね」


 俺達は門番のおじさんに案内されて村長宅にやってきた。仕事は良いのか聞いてみたけど、今の時期は出る人は居れど村に来る人が殆居ないらしい。土地の名産が人手不足で増やせずせっかくの山の恩恵も無しならそうなるか⋯。


「おお、クリスにティナじゃないか。息災だったようだね。セイニャンもご苦労さん。その子は?」


「こいつは私の義理の妹でアリス⋯私についてくれた妖精だ」


「よろしくお願いします」


「妹だって?それに妖精って⋯ホントなのかい?」


 まぁ初手疑うのはそろそろ慣れてきたな。村長さんは少し若いように見えるけど40くらいの元気なおばさんだ。頭が硬い老人タイプじゃなくて逆に良かったかも知れないな。


「ホントニャ~、何回か戦ってる所を見たけど二人ともやたら強いニャ」


「お前にもついに妖精さんがついてくれたんだねぇ。どういう経緯かわからないけど、ありがとうアリスちゃん」


「あ、いえ!あたしもこっちに来た時にお姉ちゃんに助けられたので」


 クリスの母親のダリアさんが目を細くして見てくる。孫を見る目に感じるけど、関係的には俺の義理の親だよなこの人。夫を亡くして子供も出ていったからか少しやつれてんな⋯心配である。


「それでアンタ達、一体なんの用で今更この村へ帰ってきたんだい?悪いがそろそろ限界でね、帰る場所をアテにしたなら元いた所に戻るがいいさ」


「違うんだ村長、聞いてくれ。私達はあの災害【ソウルイーター】を殺しに来た」


「ハッ!たった三人でかい?魔法が使えるからって随分大きく出たもんだ」


「四人ニャ」


「何人だろうと変わらないよ。10年前のアンタの親父さんが死んだ日、他に犠牲者が何人出たか忘れたわけじゃないだろう」


「ああ、あの日のことは忘れられないさ⋯それでも私が、この村が前に進むには必要なことなんだ」


「無理だよ。それが出来るならとっくにやってるさ。あの災害は一番強かった奴の姿と戦法を真似て殺戮を繰り返し、そのまま養分にして喰っちまう。半端な戦力は逆に被害が増えるからやめときな」


 やはりそういうことか。10年の間親父さんより強い人が居なかったからそれで固定されているということだな。むしろそれが分かったから山に入らないようにしていたのか⋯それでも入らざるを得ないから犠牲は出るんだよな。誰かが遅かれ早かれやらねばならないだろう。


「だからってこのまま黙っているわけにはいかない。さっき限界って言ったよな?街にやたらと顔を知ってる村人が多い時から気になってたけど、村長。あんたこの村を捨てるつもりだな?」


「⋯だったらどうだって言うんだい」


「やっぱりか。他の場所へ人を散らして受け入れ準備を整えていたんだな。セイニャンは中継役ってとこだろう、商人にしては売っているものが御座なり過ぎる。どうしてそんなことを?」


「国は取り合ってくれない、冒険者も他に稼げる所があるから来てくれない。挙句の果てには、あの災害を監視するためにお前らはそこに留まっておけ、とさ。私らが食うに困っても知らぬフリで税だけとりやがる。村民を干上がらせてここで最後を迎えるなんてのは出来ないからね」


「今更移動なんて出来ない老人はどうする?若者が全員出ていった時点で終わりだぞ」


「それでもいいのさ。了解は取ってある。ここに骨を埋めるつもりだから最後は私と一緒に奴と戦って死ぬってね」


「そうか⋯なら村長、ダメ元で私達に任せてくれないか。悪いが今の私達はここに居る誰よりも強い。記憶の中の父さんよりも」


「駄目よ!クリス、あなたが死んでしまったらあの人が悲しんでしまうわ!」


「母さん⋯信じてくれ。それに私も死ぬために行くわけじゃないって。秘策ならある」


「それでもあなたに何かあったら私はもう耐えられない⋯」


「だいじょーぶですお母さん!私がついてますから!」


 どうやらクリスは気付いていたようだが、憑依している間はかなりスペックが上がるのだ。短時間ではあるが俺の魔力がそっくり使えるようになるようで実質常人の倍以上の戦力はあると思う。まぁ憑依して無くても相当強いからもっとあるかもしれないな。


「アリスちゃん、妖精ということはあなたも戦いに行くのよね。怖くないの?」


「お姉ちゃんがいますから。危なくなっても守ってくれます」


「実際一度身を挺して守って死にかけたしね~」


「あの時は焦りました。ポーションがなければ危なかったですね!今回も何本か持ってきてるのでご安心を!」


「そう⋯あなたにも守る人が出来たのね。それならもう引き止めないわ」


「ありがとう。それで母さん、父さんの形見の剣を持っていきたいんだ」


「あのミスリルの剣ね?売ってないから大丈夫よ」


 ミスリルってあのミスリル?魔法鉱石として異世界で覇権を握る勢いの?めっちゃ強そうじゃん。クリスの父親はそんな強い剣を持って負けたのか、ソウルイーターとやらは厄介そうだな。


「悪いけど取ってきてくれない?それと村長も覚悟を決めてくれたかい?出来れば土魔法使いとして協力して欲しいんだけどさ」


「分かったよ⋯親に止められないモンが私に止められるわけないさ。で、何して欲しいんだい?」


「寝ても覚めても奴を殺すことを考えてきたんだ、いくつか考えてあるからじっくり教えるさ」


「ウチも土魔法使えるニャー!混ぜるニャー!」


 お母さんが持ってきてくれた剣、それは細身で片刃で反りがあり、波紋が美しい⋯


 どう見ても打刀だった。

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