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第19話 けなしちゃった

「もうこんなところまでタレが出回ってるね⋯」


「あれは別の業者のじゃないか?ウチで作ったやつなら瓶の蓋に刻印があるし」


「確かに色味も悪いしあんまり食欲は唆られないわねー」


 俺達はデノンベルジュを出発する前に減った物資を補充しながら散策をしている。その途中で露天商が食材と一緒に並べている瓶が目に入ってしまったのだ。インスパイアされる側としては少々気恥ずかしくもある。


「匂いもそこまで良くないし材料が悪いんだろうな」


「この分なら来月に工場が出来れば一強になりそうでホッとしたわ」


「あのー⋯そのへんにしておいて⋯」


 実際に作った方からして商品の批評をしたいのは分かる。分かるけどそれを実際に売ってる人の前でするのはやめないか!店主の猫耳お姉さんが怒り心頭でプルプルしながら睨んでらっしゃるぞ?


「それに脂が浮いてギトギトしてそうだぞ。保存性を重視してカサ増しついでにオイル漬けにしてやがる」


 あー!いけませんお客様!あーお客様!猫耳店主がMB5(マジでブチギレる5秒前)になっております!


「お⋯」


「あん?」


「お前らどういうつもりニャー!」


「どうって」


「こんな道端で人の売り物をボロクソ言いやがって!もう勘弁ならんニャ!」


「えぇ~?私達”ホンモノ”知ってるからしょうがないわよ」


「うるさいうるさいうるさいニャー!これはウチの村のために丹精込めて作ったんニャ!」


「そりゃ悪かったけどよぉ、材料くらいちゃんとした物使おうぜ?せっかくのタレが泣いちまってるよ」


「黙れニャ!ウチの村は今ビンボーでそこまで余裕がないニャ!」


「ニャーニャーうるさい奴だなぁ、お前どこの誰だよ?」


 お前どこ中よ?みたいなノリで出身を聞くな姉よ。それが許されるのはチンピラのみでイケメンには似合わないぞ。


「フンッ、ウチはセイニャン。ガレラ村で作ったタレを売りに来てるニャ!お前はなんニャ!?」


 ん?ガレラ村⋯だと⋯?俺達の目的地と同じじゃないか。じゃあもしかしてこの人は同郷ってことなのか?


「え!?お前がセイニャンだと!?あの小さくていつも泣いてた猫が!?」


「いつの話をしてるニャ!ウチだってもう大人ニャ!」


「獣人は時期が来ると一気に成長が進むんだったわね⋯」


「っていうかお前ら誰ニャ!カチコミ入れるから名乗れニャ!」


 いよいよチンピラの喧嘩じみたことを言い始めたな。こっちも名乗ってクールダウンさせたいが、知り合いみたいだし多分なんとかなるよな?ならなかったら収納に入ってる本家焼肉のタレをお納めいただくしかあるまい。


「私達もガレラの出身だ。私はクリスでこいつはティナ。覚えてないか?」


「えっ?⋯⋯あぁぁぁぁぁぁーーー!!」


 滅茶苦茶うるさい。高めのよく通る声で絶叫されると音響兵器じみた破壊力があるな。俺も音の妖精として負けてられんぜ。いや、絶叫勝負とかやりたいないからやっぱやめとくか。


「思い出したようね、久しぶりセイニャン」


「お前らまだ生きてたニャ!?妖精なしと一緒なんて野垂れ死んでるって村中言ってたニャ!」


「村中、ね。いいじゃないか、今の私達を見て驚く顔が目に浮かぶよ」


「どういうことニャ?しんどくなって村に帰ってくるんじゃニャいのか?」


「クリスにもついに妖精がついてくれたのよ。それもとびきり最高の妖精さんがね」


 ティナが俺を見てニヤニヤしてる。まぁどうせ帰ったら紹介ついでに俺が妖精だってバラすだろうしいいか。


「ほんとニャ!?お前あの時からずっと暗かったから良かったニャ~」


「暗いんじゃなくて集中してたんだよ」


「そう言えばその子はなんニャ、どっから攫ってきたニャ」


「この子は妹よ!ちょっと前に知り合って可愛すぎるから家族にしたの!」


「お前は外でも妹を増やして⋯そのうち刺されるニャ」


「ちげーよ、こいつは私の妹だ。ほら、自己紹介しな」


 家族の知り合いってなんとなく話しづらい感じあるよな?なんか自分が知らない家族の一面が垣間見えて及び腰になるというか、若干の疎外感があるような。⋯こんな事を覚えてるってことは前世にも同じようなことがあったんだろうか?まぁ置いといてお辞儀しながら挨拶しとくか。


「あたしはアリスです。お姉ちゃん達に拾ってもらいました」


「しっかりしたいい子ニャ。お前らがこれくらいだった時は川辺を素っ裸で走り回ってたニャ~」


「それはお前もだろうが!」


「私は年下の子の面倒を見てあげてたからね?違うからね?」


「とりあえずどこかに入ろうよ、ここだと邪魔になっちゃうよ」


「そうだな、おいセイニャン。飯でも食いながら話さないか?奢ってやるからさ」


「いいニャ?ゴチになるニャ~」


 少し予定をズラして午後に出発することにして、セイニャンさんから最近のガレラ村の近況とか色々聞き出すために軽食を摂れる酒場に移動した。そこで妖精とは俺であること、クリスは結構強いので父親の仇を倒せるかも知れないということを話した。


「ほんとにこの子が妖精ニャ?そうは見えないニャ~⋯」


「マジも大マジだって、アリスがついてくれたおかげで今や敵無しなんだぜ」


「お姉ちゃん強いんだよ。他の冒険者とかゴブリンとかバッタバッタなぎ倒すんだから!」


「生活魔法も人並み以上だし、便利な音魔法も使えるようになったしね~」


「信じられんニャ⋯しょーこ見せるニャ」


 証拠かぁ、ステータスボードを見せると邪神関連とか色々バレるしなー。邪魔にならないようボードとにらめっこしながら考えてたアレをやるか?


「そう言われるとな⋯よく考えればアリスって殆ど人間と変わらないな」


「普通に泣いたり笑ったりご飯食べて寝るし、おトイレも行くしね~」


「そもそもそんな妖精聞いたこと無いニャ。他の人の妖精は見えないもんだしニャ」


「むぅー、そこまで言うなら見せてあげるよ。それっ!」


 強く念じながらクリスに向かって飛び込むように抱きついたその瞬間、俺の体はスッと消えて半透明になり後方に出現した。


「な、なんニャこれ!?」


「どうなってるのアリスちゃん!」


「あーそういうことか。器用なもんだ」


 どうやらクリスは自分のことなので理解したらしい。俺が使ったのは憑依というスキルだ。普通の妖精のように人には触れられない存在になり、喋ることもできなくなる。


 その代わりクリスだけには思うだけで会話ができるが、しんどいんだよなコレ。息を止めている状態が近いな、俺がただの妖精じゃないからかも知れない。


(妖精みたいになれたらなって思ってたら使えるようになった憑依だよ)


「⋯これは憑依らしい。私と一緒になるために頑張ったそうだ」


(!?)


「そこまでクリスのことを思ってたのね、純愛だわ」


「本当だったニャー」


 解除!


「プハッ、これで信じてもらえた?」


「信じるニャ、悪かったニャー」


「あーつかれた。これやってる時は何も出来ないけど、妖精さんみたいに何されても大丈夫なんだよ」


「へぇぇ興味深いわね」


「10分くらいしかできないけどね。決戦の時に一緒に居られるようにしたかったんだ」


「決戦?」


「ああ、私達はあの山のヌシを倒す。そのために戻ってきたんだ」


「そうだったのニャ⋯ウチの弟も喰われたニャ」


「⋯どっちの方だ?」


「一昨年にニャエルが、去年はニャジカが⋯」


「クソッ、貴重な男手で二人もやられたか。許せねえ」


 思ったより村の状況は逼迫してるらしい。だからこうしてセイニャンさんも出稼ぎに行商紛いのことをしていたのか。これは早く原因を取り除かねばならないな。


「やられたのは原因があるニャ。目撃者によると今もお前の父親の姿で山を彷徨いてるらしいニャ」


「なんだと!?」


 人の姿を取り、人を襲う。そこには油断と恐れから隙が生じる。しかしどういうことだ?クリスの父親が殺されてから10年も経っているのに同じ姿とは⋯

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