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第17話 稼いじゃった

 焼肉のタレ事業が大成功を収めたそうなので、今日は利益の分配をしてもらうために休みに合わせて責任者に来てもらった。


「そしたらこれがそっちの取り分な」


 ディンが財布に使われている麻の巾着をジャリッと良い音をさせて机に叩きつけた。ティナが金額を確認すると金貨1枚と銀貨50枚入っているらしい。それどんなもんなの?


「こんなにいいの?私達がギルドで受けてる仕事の数十倍はあるんだけど」


「ええねんええねん!来月からは人手を増やして、村とか前哨基地にも卸す話があるんやから、まだ数倍は増えるでぇ?」


「おいおい本当かよ⋯万年金欠だった私達がこんな大金貰っちゃって悪い気がするな」


「俺もアリスのお嬢ちゃんが儲け話を振ってくれんかったら指咥えて見とるだけやった。せやから気にせんでええわ。礼はお嬢ちゃんに言っとき」


「そうね。私達はなーんにもしてないものね。でもアリスちゃん、本当にいいの?」


 前もって二人にはお金の管理をお願いしておいた。見た目は子供、頭脳は大人の俺が大金を持った所で悪い輩が寄ってきて、ちからずくでどうにかされる未来しか見えないからな。ギルドに預け入れとかも出来るらしいけど俺は登録してないし。


「いいの、いつもご飯のお金とか出してもらってるし」


「そうか⋯じゃあ私達が責任を持って預かるよ。使う時はちゃんと言うからな」


 お年玉を親に預金、もとい献上する子供のような気持ちだけどこの二人なら大丈夫だろう。俺に使ったポーション代とか色々あるし、これで少しでも恩返しが出来ているといいな。


「うん!ところでお金の価値があんまりわからないんだけど」


「そういえばお買い物はいつも私達が済ませてたわね、教えてあげるわ」


 黒パンが一斤(1個?)銅貨2~3枚、いつも食べてる串焼き肉が銅貨5枚程らしい。ちなみにポーションが銀貨30枚でダンジョンの産出量で変動するし、別の国からの輸出品なのでここでは割高だそうだ。


 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。前世基準だと銅貨一枚で100円ってとこか?と言うことは銀貨が1万円、金貨が⋯100万!?そんなに売れたのか!?これから毎月150万の不労所得とかどんな額で売ってんだ!!!


「そんなに儲かっちゃったの!?すごい高く売ってるとかじゃないよね!」


「んなことあらへん、タレは一瓶銅貨15枚くらいや。良心的価格でやらせてもらってます」


「じゃあ⋯5000個も売れちゃったんだぁ」


 王都の住人は3万人くらいで、家族とか下宿先で一緒にご飯を食べる機会が多いらしいから⋯あれ?軽く4~5倍は消費者層が居ると考えるとほぼ半分以上が食ってね?


 子熊亭の店主は夢が叶ってウハウハだろうな。なんせ焼き肉のタレで国を乗っ取るつもりだったんだし、奴の目論見もほぼ完遂できたと言っていいだろう。


「むしろ需要がデカすぎて供給が追いついてないわ。そのうち郊外の空き地に工場作るからなー」


「こうじょう」


「今はオッサンのツテで作っとるけど限界なんや。っと、もうこんな時間か。ほな俺はお暇するわ、またよろしゅうなー」


 そう言ってディンはホクホク顔で帰った。これから商会とか立ち上げたりするんだろうなぁ。そうなると、代表取締役が腰を低くして挨拶しに来る開発担当の幼女ってどんなだよ?身の危険を感じるので姉二人には頑張って護衛してもらいたい所である。


「本当にありがとうな、アリス。私には出来すぎた妹だよ」


「私からもありがとう。これで生活の心配が無くなるし、教会の無茶振りも無視出来るわ」


「えぇ~いいんだよぉ、お姉ちゃん達も欲しい物があったら使ってね?」


「この子は本当にもう⋯そうだ、今日はちょっと高いお店でご飯を食べて、お風呂に入ってそのまま泊まりましょう。たまの贅沢で羽根を伸ばして、また明日からお仕事がんばらないとね!」


「さんせー!パッとごーゆーしちゃおう!」


「私も賛成だ。豪遊とまでは行かないけど高い酒を飲んでみたかったんだ」


 そうして俺達は一人で銀貨が数枚飛ぶような店で食事をし、風呂で疲れを癒やして眠りについた。



 ~~~~~



「⋯眠ったか?」


「ええ、可愛い寝息が聞こえるわ」


「今日は楽しそうだったもんな、いつも行かない店で色んな料理を食べてた」


「結局残しちゃって私達が半分くらい食べたけどね⋯」


「稼いだのはコイツだしな、まだ夢ん中で何か食ってるのかモゴモゴしてるよ」


「可愛いわね。⋯それでどうしたの?」


「一旦帰ろうと思うんだ」


「ガレラ村に?お母さんに会いに行くの?」


「母さんにアリスを紹介したいし、用もある」


「用って⋯⋯、あれを取りに行くのね」


「うん。父さんの形見、昔は使えなかったけど今なら」


「ミスリルの剣か。所有者の魔力を吸い取って、属性を発現させる魔法の武器。確かに今なら使えるわね」


「それにそろそろ奴が動き出す時期だ。いい加減ケリをつけたいんだよ」


「そうね⋯確かにあいつのせいでガレラ村はこの時期から山に入るのが厳しくなる。あなたのお父さんがやられたのも10年前の今頃だったわ」


「金の問題も無くなったし、神様が行けって言ってると思うんだ」


「邪神かもね。アリスちゃんの親だし」


「それでも構わない。だから明日はアリスに話してから早速出発しようと思う」


「分かったわ。私も久々に里帰りしたいしね。タレ持っていってあげましょ!」


「フフッ、そうだな。村の連中驚くだろうな、今やギルドで指折りの実力で稼ぎもある」


「ええ、本当に⋯この子の事は命がけで守らなきゃね」


「私はお姉ちゃんだぞ?妹を先に逝かせるなんてありえないさ」



 ~~~~~



「朝だ!お風呂だ!ティナお水出してー!」


「ハイハイ、ちょっと待っててね」


「私も入るか。せっかく泊まったんだし思う存分使わないとな」


「先にフロントでタオル貰って来てね~」


 起きてからまた皆で部屋にある家族風呂に入った。朝風呂を決めて湯上がり爽快でのんびりするこの時間、堪らんな。酒が飲みたいが、手に取ろうとすると即座にチョップが振り下ろされるので懲りた。妖精だから問題無いとは思うんだがなぁ。


「アリス、頼みがあるんだ」


「珍しいね。あたしが出来ることなんてあんまりないよ?」


「いつも通り着いてきてほしいのは変わらないんだけどさ、私達は一旦自分達の村に帰ることにした」


「えっ⋯里帰りってこと?それが頼み?」


「そうだ。そこで父さんの敵を討つ。どうか協力してくれ」


 クリスがとても真剣な顔で頼み事なんて言うからそんなことか。別にいんじゃね?


「いいよ!お土産いっぱい持って、強くなったクリスを見てもらお!」


「い、いいのか?これはギルドも関係ない、完全に私の我儘だ」


「何言ってるの?家族なんだから、一緒に行くのは当たり前じゃない!」


「そうか、そうだな。ありがとう、アリス」


「ほんっとに良い子ねぇぇぇお姉ちゃんって呼んで~~~」


「あぶあぶあぶあばばば」


 姉に抱きつかれて、その友人にワシャワシャされた。一人だけ子熊亭に引きこもるのもつまらないし、どうせ一緒に居ないと危ないしな。それにいい加減王都から外に出てみたい。もうゴブリンの巣は飽き飽きだ。

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