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第14話 臭っちゃった

肉の話が続きます。

 えー、拝啓、前世の家族の皆々様。いかがお過ごしでしょうか?私は今胡散臭い糸目の関西弁ニキを交えて宿屋のオッサンと商談中です。後ろには目付きが悪い今世の姉とやたら圧を感じるその友人が控えております。どうしてこうなったのか⋯⋯。


「おっちゃんは売り方が一発狙いやねん!こういうのは庶民の楽しみとして地道に広めてやな!」


「お前は攻め方を知らんのだ!真似される前にドカンと儲けるのが基本だろうが!」


 ことの発端は今朝の話。焼肉のタレを食わせた宿屋のオッサンが味に目覚めたらしくて土下座してきたんだが、俺達は後ろ盾も無いしこの辺りのしきたりとか売買ルートも分からないので知り合いの商人としてディンを呼んできたのだ。もちろん試食もさせてタレの素晴らしさは余す所なく伝えた。大絶賛。


 しかし俺の期待を良い方向で裏切り二人は謎の交渉でヒートアップしてしまった⋯稼がせてくれるのはいいんだけどね。


「せやから俺とこ任せれば安いルートで仕入れて長い事捌けるーゆーとるやろが!」


「駄目だ駄目だ!このタレは匂いが全てなのだ!俺のツテで他の食堂、いや屋台にまで売り込んで王都中を席巻するのだ!!」


「あかんわ!ここら一帯が焼肉祭りなんかしよったら服にまで匂いがついて歩かれへんなるやろが!」


「それのどこが悪いのだ!?他国から来た旅人にも知ってもらえればそれだけ売れるだろう!」


「お貴族様の服にまで匂いがついてもーたらあんたどないするんや!?こういうんはもっとゆっくり⋯!」


 これである。二人とも売れるのは間違いないと思ってくれているのはいいんだけど「一瞬で一番vs長く一番」になってしまった。これはタレにニンニクを入れた俺のせいかなぁ?でもあのパンチが無いと焼肉じゃないしな⋯。


「まぁまぁ二人ともちょっと落ち着いてよぉ」


「お嬢ちゃんは黙っとき、これは商売人としてのプライドや。売り方にはこだわらなアカン」


「そうだぞ、この国を焼肉の国にしていずれは私が王に」


 焼肉の国ってなんだ。そんな国があったら名誉国民になりたいものである。是非とも米を輸入してもらいたいもんだね。あとサンチュとか海産物も。


「お前ら二人ともちょっと黙れ、妹が怖がってるじゃねえか」


「頭から水ぶっかけるわよ~?」


 静かになった。やはり姉は頼りになる。まぁ静かになった原因は姉がとんでもない量の魔力を放出させたのと、その隣で静かに魔法陣を出した友人の二つだがな。しかしどうしようか⋯一気に売り込んでも問題がある、しかし真似される前になるべく広めて浸透させることも必要か。


「この国って特許ってあるの?」


「ああ、あるぞ。商業ギルドが管理してるんだけどそれがどうかしたのか?」


「そこに登録して、真似をする人はお金を払ってもらえばいいと思ったんだけど」


「あーお嬢ちゃん、料理のレシピで特許を取るのはちょい難しいねん。簡単なのは手法一つで再現出来るからなぁ」


「そうなの?んー、じゃあレシピじゃなくて名前の方は?商標権だっけ?焼肉のタレって名前でディンさんに売りながら広めてもらってさ、おじさんは実際に考案者として名物料理みたいにお店で出すの!」


「ほう、その手が⋯確かに舌が確かな者ならタレを舐めれば材料が分かるだろう。しかし本家本元として一番にウチが客に提供して、ブランドとして定着。気付けば王都中がこの焼肉のタレに病みつきと、そういうことですな!?」


「そう!ソースとかドレッシングとか、名前を変えて売る人はいるだろうけど、まずはイメージをつけちゃえばいいんだよ!そうすれば皆、タレ以外はニセモノだって思って買わなくなると思うよ!」


「そして焼肉のタレの名前で他人が売ることも出来なくする、と⋯いいんじゃな~い?」


「問題があるんじゃないか?確かにアリスが作ったタレは美味い。しかしこれに似たような物を作って主張する連中もいるはずだ。それはどうする?」


「それも簡単だよ!皆が食べるんだから、好みも別でしょ?だから色んな種類を作って分からせればいいんだよ!」


「ほほう、それは頼もしいですな!あの味だけではないということですか!?」


 俺の中には甘口、中辛、辛口、塩ダレ、味噌ダレ、胡麻ダレ、おろしダレと様々な焼肉のタレのレシピがある。何やってたんだ前世の俺、焼肉爆食いモンスターだったのか?しかもタレを自作するタイプのガチ勢。


「んー、簡単に作れるのだと五つくらいかなぁ?さっきのが中辛味で、量を変えたりするの!」


「そんなにあるんかお嬢ちゃん!?よっしゃ、試作がてら厨房行くでえ!」


「おうとも!今日は店仕舞いして研究会だ!」


 お前ら本当は仲いいだろ。再び厨房を借りて俺は腕を振るう⋯まぁめんどくさいので指示だけ出して実際に振るったのは姉二人組だが。


「この塩ダレのさっぱり感はええなぁ、レモンとネギの味が肉の旨味を引き立てとるわ」


「味噌ダレも中々⋯醤油ベースと違って味が深い。とろみも強くて肉によく絡む」


 他の味も好評のようだな。しかし俺が真に推したいのはこれだ。


「んっふっふ⋯まだまだだね、二人とも!焼肉といえばこれでしょ!!」


「えらいくっさいなぁ!」


「ニンニクなのかい?他のは火を通してるようだがこれは生をそのまま入れてるようだな」


 俺が出したのは後入れの擦り下ろしニンニクをたっぷり混ぜた最初のタレ。この溶けたニンニクを肉で挟むようにして食べれば⋯。


「んむんむ、おいしーい!」


「こ、こりゃあガツンとくるわぁ!」


「しかしこの満足感!まさに肉を食べるための味だ!」


 そうそうこれだこれ!やはり男と生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見るニンニクだらけの大運動会って必要だよなぁ!?ってあれ?どうして姉達はそんなに離れてるの?


「お姉ちゃんたちは食べないのー?」


「いや、私達はちょっと⋯」


「そんなにニンニクの臭いをさせて町中を歩きたくないからね~」


「「「あっ」」」


 後日、なんやかんやいい感じに販売を開始して焼肉のタレは王都に広まり、俺達は売上の2割のマージンを受け取れることになった。


 あとクリスがしばらくおんぶをやめて手を繋ぐだけになった。あるぇー?

実績「大蒜姫」を解除しました。

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