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第11話 契約しちゃった

 戻ってきたか?長々と話し込んでいたみたいだけど本当にこっちでは一瞬の出来事だったみたいだ。目の前の女神像の台座からべーっと木板が吐き出されて係の人が手にとって渡してきた。


「お疲れ様でした。こちらかステータスボードになりますって、妖精!?」


 あ、バレた。そりゃそうだよな。控えるって言ってたもんな。でも人の個人情報を勝手に見ないでほしい。そんなんじゃ見ない方が良かった物を知ってしまって長生きできないぞ?


「あー⋯他言無用でお願いします。私達もよく分かってないので。で、結果はどうなんだ?お前はどこの誰だー?」


 クリスが係の人からステータスボードを奪い取って目を流しながら俺と交互に見始めた。なんか面白い顔してんなぁ、頬がピクピク引き攣ってるし妹にしていい顔じゃないだろ?


「アリスちゃんこれは⋯邪神?いえ、魔法が⋯でも⋯⋯」


 その横でティナが覗き込みながらブツブツ言っているが何が書かれているんだろうか。俺だって自分のスペックくらい知りてぇよ!見せてくれ!スネ蹴り飛ばすぞ!


「あたしも!見せてよ!」


 クリスの前で、ぴょんぴょん跳ねながら手を伸ばすと屈み込んで三人で見えるようにしてくれる。えーっとなになに?


 ---------------------------------------------------------------

 名前 アリス(0歳 女)

 種族 音妖精 バンシー(契約者なし)

 出身 神界 9丁目 8番地 ゴッデス荘 2号室

 家族 ノールジュ(親) クリス(姉)

 ■■■■(親) ■■■(親) ■■■■■(妹)

 筋力 G  魔力 S  知力 C

 忍耐 S  器用 G  幸運 S


 音魔法Lv5 泣き声Lv5 浮遊Lv5 魔力操作Lv5

 魔素適性Lv5 録音再生Lv5 物魔耐性Lv5(憑依時)

 のど飴Lv5 言語変換Lv5 愛されボディLv5 流入者Lv5

 ---------------------------------------------------------------


 なにこれ、わけが分からん出身はあの謎の居間のあった場所か?日本じゃないのは、この体が女神によって作り出されたからかな、親もノールジュになってるし。


 家族に伏せ字みたいなのが三人分あるのは前世の分だろうな。能力値はこの世界の平均を知らないから見ても意味がないか。スキルっぽいのもLv5が並んでるけどそっちも同じ。


「お前妖精だったのか、そうか」


「え?うん。そうみたいだね」


 クリスがこれまで見た中で最高の笑顔でこちらをみている!


「私についてくれよ!妹は姉の言うことは聞くものだろ!?昨日の報酬を貰ったら好きな物買ってやるからさぁ!この時をずっと待ってたんだ!」


「あうあうあうあうあう」


「落ち着きなさいよクリス、そのままじゃアリスちゃんの首がムチウチになっちゃうわよ~」


 肩を掴んで前後にブンブン揺さぶられているせいで若干吐き気が⋯実際にやられると辛いなこれ。っていうかクリスにつく?どうやるんだ、ボードには契約者なしって書いてるけどこれのことか?


「あぁぁあするするなんでもするからやめてぇぇぇぇ」


「ホントだな!?言ったな!?よっしゃ!私の時代来た!!」


「そろそろ離してあげないと本格的に危ないわよー。あとあなた、ちょっとこっちに来て」


 ようやく止まった、身内の手により二回目の人生が終了するところだったぜ。ティナは何してるんだ?あ、係の人と一緒に隅っこでなんか話し合って⋯親指で首をギーってやってる。脅してんなアレ。司祭って言ってたし、それなりに権力持ってるんだろうな。やはりティナには逆らってはいけない。


「話は終わったわ。さて、アリスちゃんについてもらうにしてもここじゃ人の目があるわね。一旦宿屋に戻るわよ」


 俺達は怯えて震えている係の人にロザリオを返してから教会を後にした。俺は上機嫌なクリスに肩車されて買ってもらった謎肉の串焼きを頬張っているが、美味いなぁこれ!何の肉か知らんけど塩味だけで無限に食える。


 やっぱ最終的には素材の味を引き出す塩だな。道行く人達も、そうだそうだと言わんばかりにこっちを見ながら微笑んでくれていた。そうこうしてる内に宿屋の自室に着いた。


「じゃあ早速やろうぜ!で、どうすればいい?」


「そうね、じゃあ二人とも。キスしなさい」


「「キス」」


 俺とクリスの目が合う。妖精の契約ってキスなの?幼女になったからって恥ずかしすぎんか?今や姉妹だし、何より俺の前世は男だぞ?考えると今の状況が滅茶苦茶な気がするけど一旦置いとけ。


「そんなもんでいいの?それでアリスがついてくれるならいくらでもするさ!」


 クリスが魅了がかかった時みたいに鼻息を荒くしながら迫ってきた。いやいやいやテンション高ぇなオイ!まぁ俺も復讐を手伝うとか色々思ってたことがあるし別に良いんだが、その前に話すことがあるから待ってくれ!


「ちょ、ちょっとその前にお話があるの」


「話?なんでも言ってくれ!欲しい物が決まったか?」


「違うけど⋯行きたい場所なら決まった。あたしをダンジョンに連れて行って。それが契約の条件。この世界にはダンジョンが4つあるんでしょ?神様にそこへ行ってって言われたの」


 ステータスボードに書いてたし女神のことはもう話してもいいだろう。妖精なんてファンシーな存在になっちまってたし、大概のことは信じてくれるよな?


「神様って女神ノールジュ?それも聞きたかったんだけど、ノールジュは邪神よ。通常、妖精は女神セレスティアが生み出したと言われている。ノールジュが親って書いてたけどあなたは何者なの?」


 痛い所を突かれた!俺の身の上なんて話せることは殆無いし正直に打ち明けるべきか。


「あたしは⋯あたしは別の世界からきたの。女神さまがお手伝いしてほしいって、それでここに落ちてきた。記憶がないのはほんとうよ?女神さまが、覚えてても辛いからって忘れさせてくれたの」


「そうだったの。あなたは本物の流入者だったのね。異世界の神界から来た妖精で、ノールジュが親になったと⋯まぁ分からないことだらけだけどいいわ。本当の事を話してくれてうれしい」


「今まで黙っててごめんね」


「気にしないで、いい女は秘密が多いって言うしね。私からは異存はないわ、クリスは?」


「もう話は終わったのか?何でもいいから早くやろうぜ!話が長いんだよお前は!」


 言うやいなやクリスが俺の頭を両手でガッチリ掴んで情緒もへったくれもない口づけをしてきた!誰かに捧げる気も無かったがクリスならいいか、さらば俺のファーストキス。


「んぅぅぅ~~」


 俺達二人の体が溶け合っていくような感覚がする。これが契約か?それとも、女性から見たキスってこんなに気持ちいいのか?俺の中の何かがクリスに流れ込んで、クリスからも同じ何かが俺の中に入ってきて循環しているのが分かる。これが魔力、なのか?お互いが混じり合って永遠とも思える時間が経った。


「終わったわ、おめでとう」


「「プハッ」」


 や、やっと終わった⋯唇が取れたんじゃないか?体格差もあって一方的にされるがままだったからちょっと怖かったぞ。


「うおおお、これが、これが妖精の力!これが魔力かああーー!」


「アリスちゃんは随分力の強い妖精だったみたいね~、普通はもっと早く終わるのよ?」


 クリスが超野菜人みたいなポーズで体に魔力をみなぎらせている。契約したおかげか、俺も魔力とやらを目視出来るようになったみたいだな?これは楽しいな、急に少年誌の世界に迷い込んだみたいだぜ!


「ティナについてる妖精はあたしみたいな感じなの?」


「いえ、違うわ。今は左肩に居るんだけど見える?」


 んーーー左肩左肩。なんだろう、羽が生えた女の子みたいなのが薄っすら見えるような。若干青いし、これがティナについてる妖精か。


「見えた!この子が本物の妖精さんなの?よろしくね!」


 肩に乗った小さくて可愛い青色の少女に人差し指を差し出すと、向こうも握り返してくれた。


「お、驚いた⋯基本的に妖精ってこちらから干渉が出来ないものなんだけど⋯あなたも妖精だから触れたのかも知れないわねぇ、これは検証の必要性が」


 そうなのか。頭を撫でてあげると気持ちよさそうにしてるし、小動物みたいで可愛い。物は食べれたりするのかな、今度餌付けしてみたい。


「よし、今からギルドに行って模擬戦しようぜ!妖精がいないからってデカい顔してきた奴らを纏めてボッコボコにしてやる!」


「そうねぇ、いきなり実戦っていうのも危ないしちょうどいいかもね。私はちょっと教会に用事があるから二人で行ってきて」


 ああ、クリスが戦闘民族になってしまった。ティナは「お昼までに帰ってくるのよ~」なんて言ってるし、俺は妖精なので連れて行かれるだろう。この世界での戦闘がどんなものなのか気になるし、クリスがどれくらい戦えるのかも知りたい。そんな事を考えながら俺はまたも肩車されながら昨日のギルドへ連行されて行った。

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