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第10話 話し合っちゃった

説明回のようななにか

「アリスちゃーん、朝よ、起きて~」


「んぁ」


 ティナが呼ぶ声に反応してまだ重い瞼を開けると目の前にはとてもとても大きい二つの丘が聳えていた。そう言えば昨日はご機嫌取りでこっちのベッドで一緒に寝たんだったな。こういうことに全く反応しなくなったのは男としてどうかと思いつつ状況を把握し始める。


「お前ら仲良すぎだろ、いつまで抱き合ってるんだよ」

「起きてからずっとこの体勢で動けないのよ⋯意外と力が強くてほどけないし」


 どうやら、仰向けに寝ているティナに被さって胸を枕にするように顔を押し付けながらホールドしていたみたいだ。寝相が悪いってレベルではないが少し肌寒かったので致し方ない。子供は風邪を引きやすいしね。


「おぁよ、ございましゅ」


「おはよ~。今日はお出かけするから早めに支度しましょうね」


「うぁい⋯」


「まだ寝ぼけてんのか?水を貰って来てるからこれで顔を拭いて目を覚ましとけよ」


 顔と寝汗を拭いてから、クリスに髪を梳かしてもらって一張羅の白いワンピースを着用する。この世界では生活魔法を使うだけで洗濯はしないんだろうか?朝は洗剤のいい匂いがする肌触りが良い服に袖を通すのが密かな楽しみだったんだがな。


 いや、楽しみだったらしい。今はもう思い出せない記憶の残滓に哀愁を感じつつ宿屋の食堂で朝飯を食べ終わって、二人に手を引かれて王都の端っこにある教会に着いた。他の建物に比べて大きめで屋根の上に鐘が備え付けられた鐘楼がいかにもな教会っぽくていいな。


 しかし俺が連れて行かれたのは本堂ではなく、少し離れた場所にある少し物々しい警備が敷かれている所謂詰め所みたいな場所だった。


「じゃあ先にここで犯罪歴を調べてもらいましょうか。ここ数日あなたを見ていて悪いことなんかできっこないって分かってるけど、一応念の為にね?」


「あたしなんにもしてないよ?」


「それでも必要なんだ。信用されてる関係者以外は中に入る前にここで判定を受けることが義務付けられてる」


 あぁ~そうやって部外者を厳しくチェックしてんのか、頭いいな。空港の金属探知機とパスポートの提出みたいなものかな?中にはカウンターに受付みたいな人とその横に衛兵が居る。


「ようこそサンドリアル教会へ。本日のご用向きは?」


「この子のステータスチェックに来たんだ。保護者は私ね」


「私は保護者の友人でここの関係者ね、身分は司祭。出向してたから一応チェックだけしておくわ」


「それではこの水晶に手をかざしてください」


 俺達三人の前に、箱に入ったたっぷりの緩衝材とネットで割れないように固定されて厳重に保管されている丸くて青い玉が差し出された。


 クリスとティナが先に手を出して、それに反応した水晶が青く光り安全を示しているようだ。さて、俺も⋯青いから大丈夫だよな?駅の改札みたいに、前の人の真似してても間違ってるか不安になる時ってあるよね。


「確認しました、こちらが入館証になります。お帰りの際は本館の出入り口に居る係に渡してください」

「あいよ」


 クリスが受け取って俺達に紐がついたロザリオのような物を配る。首にかければいいらしいが俺には長いので手首に巻くことにした。子供サイズは作らないのだろうか?


「こっちよ、ついてきてね」


「はぁー⋯本館には初めて入ったけど中々趣があるなぁ。外は石壁だったけど中は木なんだ?」


「ここは緊急時の避難場所にもなってるからね、より頑丈に作られてるのよ。いざという時はそのへんを引っ剥がせば武器や暖にはなるしね」


「ティナはものしりだね!ここの人なの?」


「そうよ~?少しの間だけど、この教会で修行を積んで飛び級で司祭になったの」


「へぇぇぇ偉いんだぁ」


 俺の中でティナの評価が少し上がった。司祭って課長くらいの役職だっけ?まだ十六歳なのにやるな。魔法の腕も中々だし、一生付いて回れば飢えて死ぬことはないだろう。幼女は媚びる相手の審査に余念がないのだ。


「この子のステータスチェックがしたいんだけど頼めるかい?」


「畏まりました、それではあちらへどうぞ。保護者はどなたですか?」


「私だ。義姉妹の関係で誓約も済ませてあるし、この子は初めてだから」


「初回ですか。失礼ですが確認のために出身と年齢と名前を伺っても?」


「アリスです!出身と年齢は⋯わかりません」


「あぁ、アリスは少し前に私が拾ったんだ。親を無くしたみたいで記憶も曖昧になってるんだよ。外に出てる時に見つけてね、近くの村で聞いても誰も知らなかったからここに連れて来たんだ」


 嘘は言っていない。ただ全てを話してないだけだ。一流は本当のことを教えて深読みさせるものだよ。まぁ、誰もこんなちんちくりんが人を騙そうとしてるなんて思ってないだろうけどな。全てはこの時のために。


「それは大変でしたね。後程ボードに書き出された情報を控えますのでお見せくださいね。では、女神像の前に跪いてこちらのアーティファクトを握ってください」


 俺だけが数歩前に出て、差し出された白い箱のような物を両手で包み込むように顔の前で祈る形で握る。この姿勢は聖女サマが神に祈りを捧げるような、静謐な感じがするな。さあ女神様よ、来てやったぞ?





『あ~思ったより早かったね。良い巡り合いでもあった?』


 なんだここ。完全に日本の居間じゃねえか。真ん中にちゃぶ台があって、その前後に座布団が二枚敷いてて対面に幼女姿の俺が成長したような一人の女性が座っていた。


 奥のテレビで見覚えのある芸人がひな壇でトークしてるし、ストーブの上に置かれた薬缶がしゅんしゅん音を立てて湯気を立ち上らせてる。頭の中に警備隊所属のウルトラな7人目の隊員が宇宙人としていた話し合いの現場が頭をよぎるな。


『あ、良いよねその話。私もすっごい好き。結局人間が悪いっていうかさ、ちょっと前に続編で同じテーマがこすられた時なんか感動したよね!』


 心が読まれた。まぁ神に対して隠し事なんて通じないか。こっちも分からないことだらけで聞きたい話が沢山あるから手間が省けるな。


『じゃあ改めて自己紹介を。私は女神ノールジュ、あなたが今いる世界ガルディアを仕切ってる女神セレスティアの双子の妹よ」


「双子?あんたがあの世界の最高神じゃなかったのか?」


 普通に喋れる。体の輪郭はぼんやりしてるけどこの体格は女の子じゃないな!男確定で憑き物が落ちた感じだ。


『ええ、表向き信仰されてるのは姉さんの方なのよ。私がやっていたのはあくまで裏方、魔物や魔素の流れを調整するのが私の仕事よ』


 魔物や魔素?アレ、こいつ邪神なんじゃね?話聞いて大丈夫か?


「そうか、それでここは?俺はどうなったんだ?」


『ここは地球での私の家。ノスタルジーに浸れる物件を探すのに苦労したんだから!あ、後で話すけどちょっと理由があって帰れなくなったのよね。今のあなたは魂だけ引っ張ってきてる感じね』


「地球!?ここは地球なのか!?じゃ、じゃあ俺が帰ることは出来るのか!?」


『まぁまぁ一辺に考えてもしょうがないでしょ?今から色々教えてあげるからまずはお茶でも飲んで落ち着いてよ。まだ煎れるのに慣れてないんだけどさ、安物だし口に入れば大丈夫っしょ?』


 俺は差し出された湯呑みで番茶を啜る。考えることが一杯だが、まずはこれに尽きる。


「俺は、誰なんだ?」


『それは教えられない。あなたは生前とっても酷い目に遭っていたの。それこそ、殺されなければすぐに自殺をしてしまうほどにね』


「じ、自殺⋯いや、殺されただと?」


『あなたはカルト宗教による儀式で生贄として捧げられた。その結果として顕現したのが私、別の世界の女神ってワケなのよ』


「じゃあお前のせいなんじゃないか!俺は死にたくなんてなかったはずだ!ただ、幸せになりたかっただけなのに⋯⋯」


『そうね、ごめんなさい。でも理由があるのよ?まずはそれを聞いて考えてほしいわ』


「⋯⋯分かった。俺が死んだのは間違いないとして、ここにこうしているのはお前のおかげだもんな」


『ありがとう。まずね、あなたの魂はガルディアと強い親和性があったの。それに目をつけられたのね、心臓を取り出されて私への供物とされてしまった』


 中々エグい最期だな。拷問の末焼き殺されたりしてないだけマシか?


『そこに居た連中は皆殺しにしたんだけどね。でもその後に力の大半をあっちに置いてきちゃったのに気付いて帰れなくなったの!』


「あんたも大変だったんだな。俺を殺した連中を始末してくれたのは礼を言うよ」


『いーのいーの。で、話の続きなんだけどね?地球の神と相談してガルディアと親和性が高い、私に捧げられた魂を使ってあっちに帰るための手を打ったのよ!いやー大変だったわ。こっちの神、頭硬すぎ』


「そんなこと言って良いのか?今も見られてるかも知れないんだろ」


『そんなワケ無いでしょ、ここは人が多くてやることなんて無限にある⋯アッサーセンシタ!ハイッハイッ、以後気ヲツケマス!ザッス!見られてたわ。地球の神様最高ね』


 こいつアホなのか、まぁふざけた呪いをかけてきた張本人だし間違いない。


『呪いじゃないわよ、言ったよね?自殺してしまうほどの苦痛を感じていたって。だからあなたに記憶が思い出せないようセーフティをかけたの。そのまま送ってしまうとすぐに身投げとかして終わりそうだったしね』


「じゃあ、あの体は?子供になって苦労してるんだが?」


『とっても可愛いでしょ?私達の小さい頃をイメージして作ったんだけど、抱きしめたいくらいよね!』


「いや、それは⋯まぁそうだが、泣いた時にも度々変なことが起こるんだが」


『それは種族としての能力よ。こっちで知ったけど妖精にも色々種類があるのねぇ!記憶を持った人間をそのまま妖精に変えるのは問題があったから人型で可愛いバンシーを選んじゃった!』


「お前やっぱアホだろ、選んじゃった!じゃねえよ。せめて普通の人間にしてくれ」


『普通の人間じゃ無理なの。魂が持っている出力に体が耐えきれない。地球は魔力がないから問題はなかったけど、ガルディアなら妖精という存在がいる。だから合わせて女の子になったってワケなのよ』


 どうやら俺の生前は魂チートだったらしい。そのせいで殺されたみたいなもんだけどね。ていうか俺妖精だったんだーへーふーん。確かに可愛さは妖精レベルだが。いや、もう一つ重大なバグレベルの問題がある。


「俺の喋り方は?今は大丈夫だが思った通りのことが口に出せなくて困ってる」


『それは送る時に付けた言語変換の効果ね。今まであっちとこっちの言葉が全部いい感じに通じておかしいと思わなかった?基本的な言語の他に時間とか、言い回しとか、その辺ね。実際に喋ってることは違うけどお互い補正しあってるの。便利でしょ?可愛い喋り方が出来るのもそのおかげ!』


「便利っちゃ便利だが⋯まぁいい。じゃあこれで最後だ。最初に言ってたお手伝いってのはなんだ?俺はガルディアで何をすれば良いんだ?」


『それは簡単よ。ガルディアには四つの国にそれぞれダンジョンがあるんだけど、そこの最深部へ行ってあなたが持っている力をコアへ注ぎこんでほしい。姉のセレスティアは今、私の残した役割を果たすために人格すら封じて休眠状態だけど、分身として作り出したあなたが神の作ったダンジョンから信号を送れば目覚めるはず。そしたらあっちから召喚してもらえて晴れて帰宅出来るの!』


「ちなみにだが断るとどうなる?」


『アハッ、この流れで断るなんて良い根性してるわね。そうねぇ、最後の力を振り絞って未来永劫虫にしか転生出来ない呪いでもかけようかしら?しかも()()()()()()()()ね』


 うわぁやっぱり邪神じゃねえかこいつ。無限に虫として輪廻するなんて嫌すぎる。


「わかった、やるよ。だが一つ頼みがある」


『なーにー?言っておくけど地球で生き返らせろってのは無理よ』


「⋯⋯すべてが終わったら、記憶を戻してくれ。もしもまた自殺したとしてもそれならいいだろ?」


『いいけど、それで構わないの?本来の力を取り戻した私なら大概出来るよ?』


「構わない。俺が俺であった証というか、生きてきた場所の事を思い出したいんだ」


『了解、それじゃ魂を戻すわね。あっちでは数秒位の時間しか経ってないから安心してね。あと、ここまで来れたから妖精としての力も解放しといたげるね』






 周りが白い光で包まれて意識が遠くなっていく。ダンジョンか、まぁ期限は決められていないしのんびりやっていこう。幼女がどうにか出来る問題でもないしな。いくら俺が妖精だからって無茶振りにもほどがあるぜ。

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