【百鬼の忍】昭和東京人別帖③《第三章キャラ解説》
【第三章】東京アンダーモラトリアム の主要登場人物紹介です。
こちらは、本編のキャラクターのバックボーンや裏話を知りたい方向けのものとなっています。
本編のネタバレもありますので、閲覧は本編読了後にどうぞ。
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★明松 朱弘(追記)
二十二歳男性。家電販売会社「㈱東都電販」に勤める営業職。
戦後は小学校中学校に通いつつ、首都近郊の実家で、守谷宮子と鍛錬。
精通と同時に「役目」と称し、親族の性的虐待を受けるようになる。
これに関しては浄忍衆の数が減ったことでの「増産」の意図が大きい。
反面で、名家の優秀な血統を取り込むため、朱弘を交換に使った面も。
純粋に朱弘の能力が高いのと、顔立ちも整っていたのが彼の不幸。
指名が相次いで、怨魔討伐より期待されるようになってしまった。
既に、朱弘の血を引く浄忍家系の子供は、複数人存在するとみられる。
ただしいずれも朱弘と面識はなく、子も父が誰か知らず、興味もない。
元より浄忍の家庭帰属意識は「家」そのものであり、親子の情も薄い。
近年その価値観に変化もあるが、旧弊はまだ色濃い。
中学以降は就職で外に出ていくが、盆と年末年始は夜伽役で呼び出し。
首都防衛に必要なことは理解しているため、しばらくはそれに応じる。
(どの道、断れば拉致されるであろうことは目に見えていたため)
二十歳ごろで、精子保存技術が確立し、ようやく夜伽のお役御免。
身体の成長で女性需要も落ち目だったのも幸いし、ようやく実家と疎遠に。
長らく女性(特に浄忍)不信で、宮子への恋心もほぼ色褪せている。
ただ、被害を受けたわけでも無いので、仲間としての敬意と感謝が勝る。
市井で女性とも接し、時間をかけて改善するが、トラウマは残っていた。
剋因遁法「灼」
:自身の身体と武具を加熱する能力。熱遁の本来の完成形。
:肉を焼き切り、金属を溶かす、当たれば重傷の能力。
:火遁より応用性は低くも、忍具活用と組み合わせ成長中。
:既に、明松一族の中でも指折りの実力者になっている。
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★百月 綾夏(追記)
二十一歳女性。純喫茶ピオニィに勤める女性。
産まれた時点で十二歳程度の姿をしており、百月当主が養育。
まだ出征していない百月食客たちに囲まれて、すくすく育つ。
その後、首都大空襲により百月家は焼け落ちて天涯孤独に。
身寄りも住む場所もないまま終戦に至り、RAAの求人に応募する。
これに関しては、性知識に乏しく業務内容を理解していなかったため。
既に身体は成人女性のそれであったため、審査が通り、体を売ることに。
訳も分からず状況に流され、収入やキャリアを性産業に依存してしまう。
RAA解体後、街娼になっていた所を、鉾田に保護される。
鉾田を弁護すると、二人の邂逅は「買い」の目的によるものではない。
戦災で衣食住に困窮した女性や若者を、従業員にスカウトして回っていた。
当然、肉体関係はないが綾夏に「客」と見られた事は鉾田の傷になっている。
以後もトラウマは抜けないままだが、表向きは明るく振舞えるように。
鉾田のことは信頼しているが、自己嫌悪と希死念慮は抜けないままだった。
本心から笑うようになったのは、朱弘と口裂け女を討伐した夜から。
ちなみに、酒に弱いのは個人の体質で、精鬼の生態によるものではない。
逆に鉾田は酒豪で、酔いこそすれど体調に影響は出づらい。
朱弘と出会う前、正月ピオニィで酒を振舞われたときは泣き上戸だった。
今回、クソ迷惑酔っ払いガールになったのは、朱弘への甘えである。
剋因沌法「標」
:「魂の劣化と再生」で、強制的に巫力を「刻む」ことが出来る。
:怨魔に「劣化」を使用すると、術を無効化すると同時に、
:身体を構成する巫力の流れが乱れ、一時的に身動きが不能になる。
:直接の殺傷能力はないが、膂力は人間よりはるかに強いため、
:鍛錬に励んでいない現在も、丁種の討伐は問題なく行える。
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◆大空 広子
十七歳女性。純喫茶ピオニィの短期アルバイトに勤める少女。
お嬢様高校の私立門森女子高等学校の二年生。
万美と葉子という友達がいて、三人のブレーキ役。
父は国家公務員、成績も優秀で人当たりもよく、誰からも好かれる。
世間知らずな面もあるが、すぐに認識を改める柔軟性も持つ。
アルバイトは短大受験に際して、親に苦労を掛けないため。
鳴嶋老人の罵倒から助けてくれた朱弘に恋心を抱く。
「非の打ち所の無いいい子」であるが、そうは言ってもまだ子供。
頼れる先輩の綾夏に甘えたり、朱弘に褒めて貰おうと背伸びする。
二人も、懐いてくれる広子のことはかわいく思っている。しかし、
反面、自身の惨めさを刺激される、コンプレックスの対象でもある。
そうはいっても、大切な妹分という認識で接している相手でもある。
ちなみに、実は巫術の適性がとても高い。血因ではなく当代のもの。
だが、現時点で門森高校は巫術師養成カリキュラムを持っていない。
そのため、今後は普通の市井的な進路を選択することだろう。
余談だが、過去作の短編、「くのいちJK!」は世界観を共有し、
舞台の「門森高校 特務クラス」は彼女の出身校の令和の景色である。
また、川郷神社のある川郷町の繁華街は、大型怨魔の出現した地域。
ちょっとした歴史の繋がりを感じていただきたい。
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◆狐成&狗井&狸木(こっくりさん)
小鬼の怨鬼。ビジュアルは動物っぽいが、別に動物霊というわけではない。
ターボババァなどの駄菓子屋を通じて、「こっくりさん」の噂を流していた。
普段は三人羽織で街を歩くが、住所は不定で、生活資金は強盗による。
結界・戦闘・音波の遁法で役割分担を行い、浄忍に隠れて人を狩る。
残虐性と狡猾性が高く、市井の巫力の強い女性を犯して食っていた。
過去に捕らえた巫術師を洗脳・拷問して 簡易コクリコ靈信の仕組みを知る。
明治期に流行したこっくりさんのフォーマットを採用し、子供に噂を流布。
実行者から巫力のある者を選別し、おびき寄せては喰っていた。
一般的な浄忍と殴り合いをしたのでは、絶対に勝てない非力な三体。
一方で、ハメ技で自由を奪えば、番狂わせが起こる。甲種の危険性の好例。
朱弘は、直近の経験値のせいで、完全にメタ対策されていたのが運の尽き。
広子がピオニィで話していなかったら、まだ犠牲者は増えたと思われる。
余談だが、現実のこっくりさんは潜在意識が筋肉を勝手に動かすものらしい。
本作も、巫力を持たない者がこっくりさんをやると、そのようになる。
これが一因で、正確性が保証できない点も、コクリコ靈信が流行らない理由。
間者が意図的に邪魔したら、容易に偽情報も渡せてしまうのも良くない。
剋因沌法「隠」
:遮蔽結界を張る能力。さらに一般人なら結界内に閉じ込めも可能。
:自分に張ることで不可視化もできる。隠密性特化の能力。
:朱弘を侮らず、狗井にこれをかけて奇襲させればワンチャンあった。
:まあ、結界の解除の必要もあるし、一般に男の忍者は弱いもの。
:結界を解き浄忍に露見するリスクを考えれば妥当な判断でもあった。
剋因沌法「閃」
:協力関係のターボババァに教えてもらった。
:縄張りの情報共有によるギブ&テイクだが、個人的に見込まれていた。
:だが、狗井は言うほどスピードに関心は無し。あくまで手段に利用。
:「ターボ犬」の都市伝説は、誕生ならず。
:ちなみに、この沌法を設定した理由は「ターボババァ瞬殺はなぁ…」と、
:速度系の能力を筆者が惜しんだため。再登場の結果、また瞬殺された。
:そりゃ、スピード自慢の相手なんだから、決着のスピードも速いよな。
剋因沌法「鼓」
:太鼓のリズムで使用対象を洗脳する術。忘却措置にも使える。
:葉子と万美を逃がしたのは、コクリコ靈信を介在したこの能力。
:三人の一人でも逃がしたら、浄忍露見リスクがあるので慎重だった。
:音系洗脳系は、一撃必殺ゆえに、バトルでの扱いも難しい能力だと思う。
:催眠アプリみたいなジャンルの作品だと、すごく活躍できたことだろう。
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◆川越さん
四十代女性。ピオニィの常連で噂話が好き。洞察力も高い。
えぐい露悪的な話より、若者の甘酸っぱい色恋系の話の方が好み。
令和だと、若者のイチャイチャに「尊い!」と目頭を押さえるタイプ。
広子の恋心に真っ先に気付いたのも、この女性。
なまじ洞察力があるので、鳴嶋老人の孤独も察して同情心もあった。
だが、コーヒーブレイクの邪魔なので、遭遇すると内心半ギレでもあった。
既婚者ではあるがマッチョな男性が好きで、鉾田を目の保養にしている。
とはいえ、女好きな一面も知っているので、恋愛は「無い」と思っている。
カフェー時代の硬派な鉾田を知ってたら、ガチ恋勢になっていたことだろう。
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