優しさの仮面
百武アキラ
•年齢:20代後半
•体格:細身だが引き締まった筋肉、身長180cm前後
•髪:黒に近い暗い茶髪、やや無造作に伸びている
•目:切れ長の目で、感情をあまり表に出さない無機質な視線
•服装:元軍人風の黒いコート(肩から腕にかけての右腕部だけ布地が分厚く補強されている)
•特徴:右腕に能力を埋め込まれており、能力者を感知時にはうっすら光る
•雰囲気:寡黙で冷静。街中では目立たないように振る舞っているが、近づくと威圧感がある
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■ 鏡 遙
•年齢:18〜20歳前後
•体格:華奢で小柄(身長155cm前後)ながらも芯の強さを感じさせる立ち姿
•髪:黒髪のロングで、手入れはされているがところどころ乱れている
•目:大きくて意思の強い瞳。睨むと刺さるような鋭さがある
•服装:診療所で使っていた白衣の上から薄いカーディガンを羽織っている。靴は軍靴のような丈夫なものに履き替えている
•特徴:能力移植技術を継ぐ一族の末裔。首の後ろに医療刻印のような刺青あり
•雰囲気:基本的にツンツンしており口は悪いが、驚いたりすると素直な反応が出てしまうタイプ(ツンデレ気質)
「で? 次の能力者って、どこにいるわけ?」
遙が歩きながら訊いてくる。足取りは重くないが、顔には相変わらず釈然としない表情が浮かんでいた。
「南にある市場の街だ。ここから歩きで二日くらいだな」
主人公は、右腕の感覚に意識を集中させながら答える。
「右腕が反応してる。近くに能力者がいると、こうやって……わかるようになってる」
「へぇ……そんなチート能力、元からあったの?」
「俺に埋め込まれた能力の副産物みたいなもんだ」
「……ふーん。でも“どんな能力を持ってるか”までは分からないんだ?」
「それは会ってみなきゃわからん」
「……なるほど。めんどくさ」
遙は呆れたように息をついて、でもなぜかその顔は、ほんの少しだけ柔らかかった。
二日後。
市場の街にたどり着いたふたりを待っていたのは、まさに「無法地帯」といった風景だった。
瓦礫の間に即席のテント、露店、闇取引の拠点、何かのアジト……。視線が交差し、誰もがよそ者を値踏みしてくる。
「この街で“仕切ってる”能力者がいる、って話だったな」
「右腕は……?」
「反応はある。ただ、ノイズが多い。位置が定まらん。感知が乱されてる感じがある」
「つまり、こっちの動きもバレてる可能性があるってこと?」
「ああ。だから、別れて動く。足並み揃えてたら、先読みされる」
「……単独か…。……でも、まあ、分かった」
遙は雑踏の中で人をかき分けながら進む。やがて、誰かとぶつかった。
「あ、ごめ──」
「大丈夫?」
声をかけてきたのは、くたびれた服を着た男だった。そこそこ整った顔立ちだが、目が泳いでいる。
「……この辺、危ないからさ、案内しようか?」
「いや、結構」
遙がきっぱり断ると、男は彼女の腕を軽く掴もうとした。
「──やめてくれないかな?」
そのとき、別の男の声が割って入った。
振り向くと、遙より少し年上に見える、涼しげな顔立ちの青年が立っていた。髪をなでつけ、スーツのような服装だが埃一つない。
さっきの男は一瞬ビクつき、そして何も言わずに去っていった。
「怖いね、最近この市場にはああいう連中が多いんだ。……怪我、してない?」
「……平気。あんたは?」
「僕? 喫茶店をやってるんだ。この近くで。ちょっと落ち着ける場所に案内しようか?」
「……怪しい人じゃないよね?」
「ただの親切な案内人。信じるかどうかは、君次第だけど」
男の声はどこまでも穏やかだった。違和感はない。ただ、それが逆に、何かを隠しているようにも見える。
遙は迷いながらも、うなずいてしまった。
その頃、主人公は裏通りで何人かのチンピラに囲まれていた。
「おいおい、誰の許可でこんなとこウロウロしてんだ?」
「……道案内か? なら先に寝てもらうぞ」
──バールの一撃が背中に入る。百武は無言のまま地面に沈んだ。
目を覚ましたとき、百武は倉庫の柱に縛りつけられていた。
「こいつが、例の探し屋か」
「おい、どうする?」
「情報吐かせてから売り払うか──」
右腕がビリビリと痺れるように反応した。
(……この場に、能力の“残響”がある)
怒りより先に、冷静な判断が走る。
縄を引きちぎる音が響いた。直後、鉄骨に頭をぶつけて倒れる下っ端たち。
百武はそのうちの一人の首元を掴み上げた。
「ボスの居所を言え」
「し、知らねぇ……!」
「じゃあ、知ってることだけでいい」
「……誰も顔は見たことねぇ。でも、古株の一人が言ってた。“見た目はやけに爽やかで、善人ヅラしてるけど、あれは仮面だ”って……」
「それだけじゃ情報として弱い」
「……! あとは……あいつは、“読んでくる”ってさ。会話してる最中に、こっちの次の一言を先に口にするんだと。何考えてるか全部、あいつの中に入ってるみてぇに。あれは……人間じゃねぇって言ってた…」
──喫茶店。
レトロなランプと、埃の匂いが漂う空間。
遙はテーブル席に座り、向かいには“案内人”の男。優しげな笑顔を崩さないまま、穏やかに話しかけてくる。
「ところで、君たちは何人で来てるの?」
「拠点はこの街の中? 武器は?」
遙は違和感を覚え始めていた。
(なんでそんなこと聞いてくるの……?)
「……あんた、何が目的?」
「え?」
「やけに根掘り葉掘り聞いてくる。情報、集めてんの?」
男はわずかに目を細めた。笑ったように見えるが、それはもう「親切な人」のそれではなかった。
気づけば、店内の客たちは全員無言でこちらを見ている。
そして──ドアには鍵がかかっていた。
(……ヤバい)
そのころ、百武は右腕の反応を追って、街の東側にある喫茶店にたどり着く。
「ここか……」
扉を開けると、中はもぬけの殻。
残されたのは、半分飲みかけの紅茶と、椅子の上に落ちた遙の髪飾り。
百武はそれを拾い上げると、右腕に再び意識を向ける。
──ピリ……ピリリ……
(まだ近い)
「……先手を取られたか。なら、次はこっちが潰す番だ」




