カール・ヴィンソンの飛行甲板
広大な飛行甲板は、早朝の光を鈍く反射していた。海鳥の鋭い鳴き声が、遠くから聞こえる艦載機のエンジンの始動音に混じる。その中央で、原子力空母カール・ヴィンソンの心臓部とも言えるカタパルトの傍らでは、赤いユニフォームに身を包んだ兵器操作員たちが、黙々と作業を進めていた。彼らの手元にあるのは、2000ポンド爆弾。通称「JDAM」、レーザー誘導ユニットを装着した最新鋭の兵器だ。
運搬カートに一発ずつ固定された爆弾は、潮風にさらされて、その炸薬部分の塗装がわずかに剥げかかっている。しかし、対蹠的に、強化樹脂製の誘導ユニット部分はオリーブ色も鮮やかに、それが最新型の兵器であることを誇示しているかのようだった。尾部には空気力学に基づいた大型の安定フィンが、弾頭部分には目標からのレーザーを正確に捉える反射追尾ユニットが装着されている。兵器操作員の一人が、特殊な工具を使い、最後の電子系統の接続を確認していた。その目は真剣そのもので、わずかな誤差も許されない作業の重圧が、彼らの顔に影を落としている。最終動作確認が終了すると、彼は指先で信管部分に装着されたセーフティーピンに触れた。赤いリボンが結ばれたそのピンは、今まさにこの爆弾が「生きている」ことを示すかのようだ。これは最終段階で引き抜かれる。その時、爆弾は真の兵器へと姿を変えるのだ。
甲板の端では、別のチームがF/A-18ホーネットの最終チェックを行っていた。フライトラインでは、離陸前の機体の健康状態を最終確認するため、操縦舵面やエアブレーキなどが大きく動かされ、展開されている。まるで翼を広げる猛禽類のように、ホーネットは自らの力を誇示するように震えた。コックピット前からは、海軍機には必須の空中給油用プローブが滑らかに開閉する。これがないと、広大な太平洋の空で、長時間の任務は不可能だ。すべてが完璧であることを確認した機付長が、パイロットに最後のサインを送る。
パイロットの準備
厚木基地。VFA-192「ゴールデン・ドラゴンズ」のホームベースにあるPRショップは、朝から活気に満ちていた。壁にはこれまでの戦歴を示す写真や、歴代の機体の模型が飾られている。パイロットのケヴィンは、ロッカーから自分のフライト装備品を取り出した。航空整備品室で定期チェックを受けた個人のフライトスーツは、いつものように彼の体にぴったりとフィットする。モスグリーンのフライトスーツは、長年の訓練と任務によって、彼自身の皮膚の一部のように馴染んでいた。その上からハーネスを装着し、飛行ヘルメットを手に取ると、ケヴィンの体は無意識のうちに飛行モードへと切り替わる。心臓の鼓動がわずかに速くなり、意識は研ぎ澄まされていく。
VFA-192のレディールームは、ドラゴンズのシンボルカラーである青と黄色で統一されていた。リクライニング式の座席のヘッドレストは鮮やかな黄色のカバー、ブリーフィングの演台には目の覚めるようなブルーのビロードのカバーがかけられている。この部屋の空気は、任務への高揚感と、それから来る張り詰めた緊張感が混じり合っていた。部屋の壁には、部隊の歴史を物語る写真が飾られている。かつてA-4スカイホークを駆って、北ベトナムの空を駆け巡ったゴールデン・ドラゴンズは、果敢に敵の対空ミサイルに戦いを挑み続け、補給ルートを寸断した名門飛行隊だ。彼らの勇気と犠牲の上に、今日の彼らの存在がある。
同じくキティーホークに乗艦するVFA-195「ダムバスターズ」は、また別の歴史を刻んできた。彼らは雷撃飛行隊として第二次世界大戦中に数々の海戦に参加し、航空魚雷で多くの艦船を海の藻屑と化してきた。その後、朝鮮戦争では貯水ダムを航空魚雷で破壊してみせたという逸話を持つ。彼らの任務は常に、敵の心臓部に直接打撃を与えることだった。
ブリーフィングが終わり、ケヴィンは僚機とともに飛行甲板へと向かう。彼の搭乗するホーネットは、すでに準備万端といった様子で、カタパルトに連結されていた。機付長がケヴィンの顔を見上げ、最後の確認を行う。「機体は完璧です、隊長。任務の成功を祈ります」。ケヴィンは力強く頷いた。コックピットに乗り込むと、慣れた手つきで各種計器を確認し、座席に体を落ち着ける。
離陸
「パイロットは親指を立てた」――そのサインは、コックピットからすでに風防を閉鎖し、エンジンの始動準備が完了したことを示していた。
エンジンは、その回転数を順調に上げ、甲板全体に轟音を響かせ始めた。機体各部にも異常なし。ケヴィンは操縦桿を握りしめ、前方の機上整備員に向け、ここまで面倒を見てくれた礼の意味も含め、狭いコクピットの中で深く敬礼をした。彼らの献身なくして、今日のフライトは成り立たない。
「タキシング開始!」
ホーネットはゆっくりと動き出し、カタパルトへと向かう。機体は、甲板の向かい風を受け、その巨体を震わせる。ケヴィンの目は、正面のフライトデッキの状態に集中していた。視界の端で、赤いユニフォームの兵器操作員が、彼が運ぶ爆弾の最後の確認をしているのが見えた。
ダーティーオフィサーズメス
陽が傾き始めたキティーホークのダーティーオフィサーズメスでは、今着艦したばかりのホーネットのパイロットたちが、飛行服姿のまま、仲間と一緒に団らんしながら食事をとっていた。メスとは、士官たちが食事をとる場所のことで、ここではカジュアルな雰囲気が許されている。青い丸テーブルには、各飛行隊のマークが描かれたコースターが置かれ、厳しい作戦飛行の後のくつろいだひとときを演出している。
食事は白い皿に盛られたチキンと、小皿に盛られたサラダ、それに黒パンだった。質素ながらも、飛行後の体には十分な栄養となる。ピカピカに磨かれたフォークとナイフが添えられたトレーが、補給科員の給仕によって次々と運ばれてくる。彼らの手際の良さは、何百人もの乗員に食事を提供し続ける日々の訓練の賜物だ。
壁ひとつ隔てて隣の部屋は、ワードルームと呼ばれる士官食堂だった。こちらも上げ膳据え膳の形式だが、よりフォーマルなスタイルとなっており、原則として作業服での入室は禁じられている。そこでは、その日一日非番の乗組員が軽食をとりながら、ゆったりと談笑している。どこの壁もネービーブルーで統一され、海軍らしい厳かな雰囲気を醸し出していた。
下士官兵のメスデッキ
艦内をさらに下ると、厨房の活気が聞こえてくる。焼き上がったばかりのパンが、オーブンからトレーごと取り出され、熱気を帯びたまま鉄製のかごの中へ次々と放り込まれていく。焼きたての香ばしい匂いが、艦内に広がる。空いたトレーには、隣の調理台でこね上げられ形にされていくパン生地が、次々と手際よく他の補給科員の手で並べられていく。彼らの手は、まるで機械のように正確で速い。
カウンター越しには、いくつもの調理済みのメニューが並べられ、並んだ下士官たちによって次々とセルフでトレーに取られていく。メスデッキと呼ばれるここは、学校給食の豪華版といった感じのカフェテリア方式で給仕されていた。ワードルームとは異なり、チェック柄のなんの変哲もない長テーブルに、やや詰まった感じで椅子が並べられている。隣と肩が触れ合うほど窮屈だった。狭い艦内スペースでは、下士官兵にまで十分な居住環境を提供するわけにはいかないということだろう。
テーブル中央には、タバスコやソース、ケチャップのたぐいの調味料が雑然と置かれている。乗員たちは、チープなプラスチック製のナイフとフォークを使い、イタリアンな味付けの食事をわしわしと口に運んでいった。彼らの顔には、任務の疲れと、それを乗り越えた後の安堵が入り混じっていた。ここには、階級や役割に関わらず、艦という閉ざされた空間で共に生きる仲間たちの、確かな連帯感があった。